トランプ氏は19日、かつて自らの政権で国連大使を務めたヘイリー氏について、2021年1月6日の連邦議会襲撃の際に「ニッキー・ヘイリーが治安の責任者だった」と支持者集会で述べた。これは、当時の下院議長だったナンシー・ペロシ氏とヘイリー氏を取り違えた発言ではないかとされている。

これを受けてヘイリー氏は21日、米CBSの政治討論番組「フェイス・ザ・ネイション」で、前大統領の「知的安定性はおそらく、衰退し続けるだろう」と反論した。

「なんだろうと、カオスがつきまとう」ともヘイリー氏は言い、「(トランプ氏が)引き起こすこともあるし、彼が引き起こすわけではないこともあるが(中略)本人はまるで磁石のように(混乱を)引き寄せる。そうなるとアメリカ全体がカオスに陥るので、国民はくたびれている」と話した。

ヘイリー元国連大使はさらに、かつて自分の上司だった前大統領について、非民主的な国の指導者に対して弱腰だと批判。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領、北朝鮮の金正恩総書記、中国の習近平国家主席といった顔ぶれに対して、厳しい姿勢をとっていないと述べた。

「私たちを殺そうとする独裁者と仲良くしたい人物など、ありえない」とヘイリー氏はCBSで述べた。「代わりに、そういう独裁者相手にはこちらが何を求めているか伝えなくてはならない。そこが違いだ」とも話した。

トランプ前大統領は混乱を巻き起こす直情型の候補だと繰り返すやり方を、ヘイリー氏は新しい反撃方法としている様子。これに先駆けトランプ氏は、ヘイリー氏に対する個人攻撃や中傷を繰り返していた。

たとえば19日にトランプ氏はソーシャルメディアで、ヘイリー氏を「ニンブラ」と書いた。これはヘイリー氏のフルネームの冒頭の名前「ニマラタ」を、誤った形で書いたものと思われ、ヘイリー氏について、アメリカ大統領にも副大統領にもなる資格がないと根拠なくあてこすったのだろうとされている。

ヘイリー氏は、1960年代にアメリカへ移住したインド出身の両親のもとで、1972年に米サウスカロライナ州で生まれた。そのヘイリー氏に対するこうした攻撃は、かつてトランプ氏がバラク・オバマ元大統領について、「アメリカ生まれではない」と根拠なく中傷し続けたことを想起させるものとなっている。

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国籍についてアメリカは出生地主義を採用している。合衆国憲法修正第14条の冒頭で、「合衆国内で生まれ、または合衆国に帰化し、かつ、合衆国の管轄に服する者は、合衆国の市民であり、かつ、その居住する州の市民である」と定めている。

前大統領からの攻撃についてヘイリー氏は19日、「(トランプ氏が)こうやってかんしゃくを起こすなら、それは彼が明らかに不安だという意味だ」と記者団に述べた。

ただし、前大統領に反撃するというヘイリー氏の戦術は、すでに遅すぎた可能性がある。

21日に発表された米紙ワシントン・ポストとモンマス大学による合同世論調査では、ニューハンプシャー州予備選で投票する予定の有権者の52%がトランプ氏、34%がヘイリー氏、8%がデサンティス氏を支持しているとされた。

サフォーク大学とボストングローブ紙などによる世論調査では、支持率はトランプ氏が55%、ヘイリー氏が26%、デサンティス氏が6%だった。

デサンティス氏が撤退した今、その支持者の大半がトランプ氏支持に回るようだという結果が世論調査で出ている。

21日に発表されたCNNとニューハンプシャー大学の世論調査では、同州でデサンティス氏を支持していた有権者の62%が、次に支持するのはトランプ氏だと答えた。デサンティス氏の代わりにヘイリー氏を選んだ人は30%にとどまった。

ニューハンプシャー州のデイヴ・スキャンラン州務長官は22日、約41万人が23日の予備選で投票する見通しだと明らかにした。これは同州の有権者約140万人の、3割弱にあたる。

同州では、有権者として登録を済ませていれば、共和党予備選に投票することができる。共和・民主のいずれかの党を支持する必要も、党員として登録している必要もない。

ニューハンプシャー州では、登録済み有権者の約4割が「無党派」として登録している。

(英語記事 New Hampshire primary: Attacks fly as Donald Trump grows lead / New Hampshire primary: Donald Trump and Nikki Haley to go head-to-head

 

 

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