③ マリモ糸状体の生長条件 |   マリモ博士の研究日記

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      - Research Notes of Dr. MARIMO -
  釧路国際ウェットランドセンターを拠点に、特別天然記念物「阿寒湖のマリモ」と周辺湖沼の調査研究に取り組んでいます

(1) 培養実験
 マリモ単藻培養株の糸状体先端部を用いた培養実験(舘脇 1990, 1991)で得られている至適な栽培条件の概要は以下のとおりである。また、同じく単藻培養株では、1/16に希釈した天然海水に栄養強化混液のPESを加えた培地(若菜 1994)、もしくは後述する人工合成培地(未発表)でも良好な生長が得られる。対照的に、蒸留水やミネラル濃度の低い水道水だと、PESを加えても糸状体が白化したり、場合によっては枯死する場合がある。

  • 温度: 18~22℃(10℃以下ではほとんど育たない。培養実験の最高温度は22℃であったので高温域での応答は不明だが、高温域の影響を調べた別の実験(照本 1965)では、30℃を超えると細胞の生存率が下がる結果が得られている)
  • pH: 6.8~7.2(pH 5以下、および9以上で 阻害)


マリモ糸状体の生長に及ぼすpHの影響(舘脇 1991).

  • 光強度: 3000 lux
  • 主要元素: 

  • 微量金属: BとFeを要求

 


培養によって得られた塊状の緩集団(舘脇 1991).左は2年間,右は1年間培養したもの.

静置培養しているため,糸状体が徒長あるいは横臥している.
 

  • マリモ単藻培養のための合成培地の組成

 

 

(2) 光合成実験

 酸素電極を使った糸状体の光合成測定(若菜 2003)では、20℃で酸素発生(光合成)速度が最大となり、30℃になると酸素発生速度・呼吸速度ともに大きく減少する結果が得られている。

  • 温度: 20℃(25℃以上で阻害)
  • 光強度: 20~100 μmol/m2/sec(20~25℃)