スポーツの国際大会で、いわゆる<ファッション・ショー>の要素が強くなったのは、一体いつからなんだろうと考えてみる。
オリンピックの最中、ネットを開けば連日の様にスポーツ記事が取り上げる美女アスリート特集。過熱する美女アスリートを扱ったメディアに対し、IOC(国際オリンピック委員会)が警告を発している。中でも酷いのは日本で、日本のネット住民には見慣れてしまった「○○過ぎる」と言う表現が非常に不愉快であると釘を刺した。この「○○過ぎる」と言うキーワードが多分に卑猥さを含んでおり、褒めてると言うよりは馬鹿にされているニュアンスを含んでる事が原因だそうだ。
この忠告を受けた日本は、特定の美女アスリートを過剰に取り上げた公共のテレビ番組での「○○過ぎる」発言をパッタリと辞めた。全く辞める気が無いのはネット記事の方で、「そんな事、知らねえよ」とばかりに、スポーツ紙は毎日の様に<今日の美女>を取り上げている。
実際、取り上げられる美女アスリート達は、どう思ってるんだろう。奇麗、可愛いと褒められてはいるんだから悪い気はしてないとは思うが、何事も不快の基準値は人それぞれで判らない。
例えばドイツの陸上中距離の選手・アリカ・シュミットの場合はどうか。美人には間違いない。だけど実力の程はよく判らない。どれほどの人なのか?と多くの日本人は思う。調べてみると、ドイツ国内では中々の優秀な成績を残す選手らしい。チャラそうな外見とは裏腹に意外に謙虚らしく、ネットでの売込みはするけど、有りがちなテレビ出演みたいな事はしない人らしい。
何故、競技とは関係の無いファッション・ショーを国際大会の度にするのか?と聞かれると、収入の安定の為だと発言した。地元のドイツではアスリートが稼げる収入は少なく、副業をしないと生活が苦しい事を告白し、その為の手段の一つが動画配信なのだそうだ。なるほど、確かに誰かに迷惑を掛けてる訳でもないし、そこを考慮すればIOCだって、その事に対し、うるさく取り締まる必要性も無い。
美女アスリート特集を全体的に見てると、それほど嫌がってる選手は居ない様に個人的には感じる。むしろ乗り気で、実際にモデル活動をして収入を得てるともなれば、嫌がる理由も見当たらない。取り上げる方はネタが出来たと喜ぶし、取り上げられる方は幾らかの小遣い稼ぎが出来て嬉しい。この辺の忖度が上手くバランスを保っている所なのだろう。
今大会のパリ五輪で、個人的に一番のお気に入りだったのが競泳女子のカナダ代表・サマー・マッキントッシュ。17歳。セブンティーンの輝きと言うか、少女と成人の間の年齢が放つ独特な魅力がある。
母親が競泳の選手で、姉がアイススケートの選手と言うスポーツ一家の出身らしい。プロフィールを見て驚いたのは身長が173センチで、もっとあるんじゃないの?って感じに見える。日本のタレントの、あのちゃんが166センチらしいから、並ぶと、そんなに差が無い事が判る。身長のドッコイでいけば、新垣結衣とか長澤まさみと並べてみると比較しやすいかもしれない。
彼女を初めて見たのは今大会が初めてでは無かった。2年前か3年前だと思うが、テレビ朝日の報道ステーションで、スポーツ担当の元・競泳の寺川綾が単独インタビューしていたのを見たのが最初だったと思う。その当時で14歳か15歳。日本だと中学生の年齢だが、凄く大人っぽく見えた。今大会で17歳になった彼女は更に輝きを増していた。17歳って高校生だし、乃木坂46と同じ様な世代である事を思えば、凄いなと思う。
マッキントッシュの良さは容姿は勿論だが、雰囲気だろうと思う。控えめな美女と言うか、聖女的な雰囲気を醸し出してる子で、例えれば、フランス革命で有名なジャンヌ・ダルクが似合いそうと言えば分かるだろうか。中世の可憐な女騎士の様な雰囲気を持つ17歳の乙女。
同じ美女でもドイツのアリカ・シュミットは日本人好みではなく、どちらかと言うと欧米で人気を取るタイプ。完成されてる美貌だし、自分で判ってるタイプの美女は日本の男の好みでは無い様に思う。それよりはマッキントッシュの様な、比較的まだ<幼さと弱さ>を醸し出してるタイプの方が日本の男には受けがいい。
話題が変わるが、1988年のソウル・オリンピックで、フローレンス・ジョイナーと言う黒人の陸上短距離の選手を見た衝撃は鮮明に残り、今でも忘れられない。
黒い肌に赤い口紅、赤い付け爪。パーマの掛かった黒い髪をなびかせ、颯爽と走りぬいた彼女の記録は、2024年の今になっても超えられていないのだそうだ。今になって思えば、国際大会におけるファッション・ショーの先駆けは、間違いなくジョイナーだと私は思う。
ジョイナーが与えた衝撃と影響力は、日本にも電撃の如く伝わった。88年、私は中学一年生だったが、足の速い女子はジョイナーに憧れ、部活の陸上部で女子の入部が盛んだった。私の所ではそうだったが、他の学校ではどうだったんだろうかと言う事までは知らない。どちらにしても、当時のジョイナーは陸上界の女帝だった。
赤が好みだったんだろうか。黒い肌に赤が際立つと言う芸術的な感性をジョイナーは持っていた気がする。今の時代、その化粧の施しは普通になり、何の違和感なく見ていられる様になった。
ジョイナーが出てくる以前、女性アスリートは汗臭そうだった。ジョイナーは汗が似合わないタイプの選手だった。競技にファッションを持ち込んで何が悪い。彼女がそう言った訳ではないが、ジョイナーの風貌からは、そんなオーラが漂っていた。
ソウル・オリンピックから10年後の98年。ジョイナーが突然死んだ。眠っている間の突然死だったらしい。情報によれば、彼女は血管の持病を患っていて度々発作に襲われた。常備薬として飲んでいた薬はアセトアミノフェンと抗ヒスタミン剤。アセトアミノフェンは解熱鎮痛剤で、日本ではコロナ化の時によく出回っていたカロナールと言う薬がそう。市販で手に入るノーシンも同じ薬である。
抗ヒスタミン剤は、花粉症とかハウスダストとか、辛いアレルギー症状を緩和する作用の薬で、耳鼻咽喉科がよく処方してくれる。でも、ジョイナーの死は、これらの薬とは関係無くて、現役時代に服用していた<筋肉増強剤>の影響だろうと伝わっている。
筋肉増強剤って魔法の薬で、やっている時は超人になれるアイテムなのだが、目的が無くなって辞めてしまうと体内で暴走し、心臓や血管に物凄いダメージが来る。書き方は悪いが事実として、80年代のアメリカは筋肉増強剤なくしてやってられないと言う環境だった。野球、プロレス、陸上競技、アメフト、筋力を要求されるスポーツには当たり前の日常茶飯事だった。
実際、アメリカのプロレスラーの筋肉美を見た事がある。パンパンの盛り上がった筋肉が、皮膚をバリっと破って飛び出してきそうな印象だった。怖い事だが、そう言う筋肉を持ったレスラー達は、ある日、突然死んでしまった。原因は心臓発作である。芸能界も例外ではなく、危険な状態に陥った俳優も居る。アーノルド・シュワルツェネッガーやシルベスター・スタローンなんかは代表格だろう。彼等も揃って心臓を悪くした。だが、彼等は運がいい。彼等の持つ莫大な財産と医療のスペシャリストによって、危険を脱して今現在に至るのである。
圧倒的な走力を誇ったジョイナーは、当然ながら疑われた。80年代の同じ時期に男子短距離でベン・ジョンソンと言う黒人選手が居た。彼の存在を簡潔に要約すると、アメリカが誇る短距離の英雄・カール・ルイスの次に出てきたスターだった。スタートラインで屈み込んだ彼の肩の筋肉の盛り上がりは異常過ぎるほど逞しかった。尋常ではない筋肉。彼も又、筋肉増強剤に取り付かれた選手だった。
アリカ・シュミットにしても、他のオシャレな選手達にしても、彼女達の風貌を見てて感じる事と言うのは、「ああ、そうか・・・彼女達はジョイナーの子孫なんだな・・・」って事なのである。
ジョイナー以降、個性的な女性アスリートが出て来る訳だが、その光景を見る度に、古き良き80年代とフローレンス・ジョイナーと言う人を想い出す今日この頃。






