子供の頃、東京タワーで初めて蝋人形を見た。クワっと見開いた目、剝き出された白い歯、血の気の無い白過ぎる顔。固まったまま動かない蝋人形は、恐るべき存在だった。
固まったまま動かない物体に対し、人は恐れを抱く。何故なんだろうか?人は動いて当り前と言う物体に対し恐れを抱かない。だが、本来動かない筈の物が動いた時に恐怖する。例えば、その辺にあるペンや消しゴムが風も無いのに動いたとしたら恐怖を感じる。何かの勘違いだろうと思いたくなる。或いは足の膝が机の下にぶつかって、その反動で動いてしまったのだろうと納得したがる。有り得ない事が起きた時、人は何かの間違いだろうと妥協点を見出したがるのである。
88年制作のアメリカ映画「ワックスワーク」と言う作品は、その蝋人形を扱ったホラー映画だった。
街の郊外に、いつの間にか出来ていた蝋人形館。興味津々な人達が入っていくと、入ったきり出て来ない。何処へ行ってしまったのか?目敏い男女五人の不良学生達は、好奇心に駆られて中に入っていった。
中は小綺麗なお化け屋敷の様だった。物音もしない、とても静かで、掃除も行き届いていて、それなりの清潔感がある。どんな蝋人形が展示されているのか。それはオカルトの世界だった。ドラキュラ伯爵、フランケンシュタインの怪物、狼男、ミイラ男、ゾンビ。大人気のモンスター達だけではない。サド侯爵、切り裂きジャックなどの伝説の怪人や殺人鬼までもが展示されている。
それぞれの展示物は囲いの中にあったが、奇妙だったのは人に襲い掛かる場面が演出されていた事だった。学生達は珍しがって食い入る様に蝋人形を見つめ続ける。蝋人形たちは、まるで生きてるかの様に学生達を見ている。
いつの間にか、学生達の後ろに初老の紳士風の男と、執事の様な小男が立っていた。蠟人形館の館長と案内人の二人だった。
蝋人形館は悪魔崇拝の産物だった。展示された蝋人形には呪いと魔法が掛けられ、魅入られた人間達が、その空間へと引きずり込まれ、生け贄の如く犠牲になっていく。
ゾンビの世界へ入ればゾンビの徘徊する墓場へとタイムスリップし、最終的に喰われて死ぬ。狼男の世界では狼男に襲われ、襲われた人間が狼男へと変身する。ドラキュラの世界ではドラキュラ城に閉じこめられ、吸血鬼たちに追い回され、最終的にドラキュラに魅入られ血を吸われ、犠牲者は吸血鬼と化す。
そうやって18人の犠牲者が揃った時、展示された蝋人形の怪物達は意志を持ち復活する。館長は蘇った悪を使って人間社会の制服を企んでいた。
何処かで見た個性的な出演者たちについて
まず物語の主役にザック・ギャリガン。
一番判り易いメジャー作品は84年作のグレムリン。グレムリンを飼う主人公の青年。経歴を見ると、グレムリンから4年後の88年にワックスワークに出演。その4年後に「ワックスワーク2 失われた時空」と言う作品が制作され、そこでも同じ役で出演したらしい。らしいと書いたのは、2作目の存在自体、知らなかった訳で、そんなのあったんだと後年になって知った。
蝋人形館の館長役にデビッド・ワーナー。輝かしい経歴を持つ俳優なんだけど、何故か一番印象に残ってる作品と言えば76年作の「オーメン」。不吉な写真を撮って惨劇に巻き込まれ、最後はガラス板で首を素っ飛ばされたジェニングス役の人。本編とは違う意味で見所を作ってくれた人と言うイメージ。
蝋人形のモンスター役に目を向けると、まず狼男役のジョン・リス・デイビス。見るからにドワーフ体系と言うか、三国志の張飛が似合いそうな雰囲気を持った個性的な名脇役と言うイメージ。超メジャー映画と言えば、インディージョーンズやロード・・オブ・ザ・リング。何気に一番見た記憶のある俳優かもしれない。
個人的に注目したのはドラキュラ伯爵役のマイルズ・オキーフと言う俳優。この御方で懐かしいのは、81年作の「類猿人ターザン」のターザン役のイケメン俳優。ジェーン役のボー・デレクとのエロい絡みは、当時、少年だった私の性欲を刺激した。言葉を持たないイケメン&マッチョな童貞ターザンの、初めて目にする人間の若い白人女性への演技が素晴らしかった。
改めて思うに、蝋人形を扱ったホラーで、ドラキュラと言う存在はキラリと光るモノがある。花形と言うか、そこに居て欲しいと言うか、待ってましたと言うか。紛れ込んだ不良の美女が、吸血鬼との戦いに奮戦するが、最後に現れたドラキュラには敵わず吸血されてしまうシーンは、この映画の見所の一つとも言える。
プレミアが付いてしまったワックスワークのDVDについて
通販サイトAmazonで検索して貰うと判るのだが、この作品、現在は再販もされておらず、DVD形式で2万円を超えるレア物になっている。この作品のDVDは2003年2月5日が初版で、私は発売前から出る事を知っていたので、直ぐに買った。初めて観たのが地元のレンタルビデオ店のVHS版で、中学生の頃だったと思う。
初めての地上波放送はテレビ東京の木曜洋画劇場だった記憶がある。私の記憶では、この局以外での放送はしてないのではないか?と思うのだが、どうだろう。当時の木曜洋画バージョンをビデオ録画して保存してる人が居たら、かなりのレアだと思う。ブルーレイの時代になっても再版されてないので、DVD版は当然、貴重だろう。ブルーレイになれば、吹き替え版も収録される可能性があるので、無駄な期待だけはしてみたい。
ドラキュラ伯爵の花嫁達



