金田一映画 獄門島 「私を島から連れ出して!」 | 何でもアル牢屋

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市川版・金田一映画の三作目の獄門島(77)

瀬戸内海の小島が舞台とあって同じ舞台の悪霊島(81)とダブっている。昔は獄門島と悪霊島の区別がつかなかった事があった。悪霊島の原作にも獄門島の話題がチラッと出ており実質上、兄弟作と言ってもイイんではないだろうか。なんでか判らないが、なんとか島って言うタイトルには、禍々しさと不吉さを感じて、恐怖心を自然と煽られる。横溝正史はタイトル選びが抜群に巧い。

話の内容は要するに遺産相続であり横溝お馴染みのテーマ。舞台設定を変えた<犬神家の一族>とも言える。で、今から面倒臭い事を承知で大雑把に出来る限り判り易く説明するんだけど、鬼頭(きとう)と言う島の大地主が居て、それを島では本鬼頭(ほんきとう)と呼んでいる。本鬼頭とは別に分鬼頭(わけきとう)と言う分家があり、本家の世継ぎに与三松(よさまつ)、分鬼頭に従兄弟の鬼頭一(きとうひとし)がいた。

そんな時に本家の主、鬼頭嘉右衛門(きとう かえもん)が世を去り、その遺産は息子の与三松に譲られる筈だったのだが、与三松は狂い死にした妻の小夜(さよ)の死後、頭がイカれて跡を継げる状態ではなくなった。そこで代わりの後継者に立てられたのが与三松の息子の千万太(ちまた)と分家の従兄弟、鬼頭一だった。

所が二人とも戦争に駆り出される事になる。与三松は家督を継げる状態になく、そうなると残ったのは与三松と小夜の三人の娘、月代、雪枝、花子の誰かが継がなければなくなる。先代の嘉右衛門は三人娘を異常なほど嫌い、これらに継がせたくない為に一計を案じた。それは、もし戦地から千万太が復員してきたら彼にそのまま継がせる。もし、千万太が戦死し、一が帰ったら彼に継がせる。その際に邪魔になるのがベンチ入りしている補欠の三人の娘達で、筋から言うと千万太の後は、この三人が継ぐ事になる。嘉右衛門は、この三人を俳句に見立てて殺せと遺言を残し世を去る。この辺は「犬神家の一族」の<斧、琴、菊>の設定に似ている。

今作でも市川監督お得意の首飛ばしが見られる。釣鐘を支えている棒が強風で弾け飛び、釣鐘の下の雪枝の死体の首にドカンと落下し、首が宙を舞う。このシーンは原作にはなく、正真正銘、市川監督の遊び。この監督さんは、お化け屋敷的な演出が好きなんだろうな。

 

他の作品と違うのは、この映画では金田一耕助がモテてる様に感じる

女優・大原麗子が演じる本鬼頭の早苗と言う美女が、島から出たいとの本心を金田一に訴えて「私を島から連れ出して」と、事件とは関係の無い個人的な想いを告白する場面がある。しかも早苗さんは獄門島一の器量良し。早苗さんは学級委員長の様な存在であり、本鬼頭のマドンナ的存在。女社長さんが似合うかも。

坂口良子が演じる<おしち>の家は床屋を経営しており怠け者の親父(三木のり平)の代わりに日々頑張っている。おしちと言うキャラは原作にはなく映画版のオリジナル。市川版・金田一映画では常連の坂口良子だが、どの作品でも可愛い。流行のタヌキ顔と言うタイプで、古さを感じさせない現代的な可愛さを感じる。もっと長生きして可愛い美熟女ぶりを見せて貰いたかった。私生活で色々問題を起こす娘とは似ても似つかない。

全体的に、この映画は犬神家の一族や八つ墓村の様なドロドロ感は無く爽やかな印象。この爽やかさに優雅なテーマ曲が重なって金田一映画の初心者にも観やすい映画になってると思う。