語研講習「フォニックス活用ー英単語の綴りの教えかた」のアンケートなど | 英語教育あれこれ:「どれ?」「それ!」

英語教育あれこれ:「どれ?」「それ!」

phonicsや文字指導を中心に
英語教育について
書いています。
入門期のシラバス
(文法事項の導入順序)
にも興味があります。

2023年9月16日(土)に標題の講習をZoomで行いました。

名称は、年度によって少し変えることがありますが、例年1度は行っているもので、実質的な内容は

ほぼ同一のものです。今回はあえて土曜日の20:00-21:30という時間帯に開いてみました。

 

もちろん「土曜のこんな時間には無理に決まっている!」という方もいる一方で、

「土曜のこの時間帯なら落ち着いて参加できる!」という方もいるだろうと想定して、

後者の方々向けに設定した時間帯です。

 

(毎年同様の話をしていることをご存知でない方からは、この時間設定は「遅すぎる」

「家族が在宅している時間帯なので参加しづらい」というお声もいただきましたが、概ね、この時間

設定を理解してくださっていて、この曜日/時間帯の「需要」があることを理解できました。)

 

 

さて、「フォニックス」というと、

  綴りと発音の規則に当てはまる語を読ませたり、書かせたりする「だけ」

というのが一般的かと思います。

けれども、フォニックスの活用の幅、というか、指導方法はもっと多様にある、というのが私の考え

であり、私のこれまでの実践です。

 

「綴りと発音の間に密接な関係がある」ということを伝えるために、次の3つのことを提案してきて

います:

 

1つは、上に書いたもので、規則にあった語をたくさん(!)読ませることで、学習者にその規則を

帰納的に理解させること。

(既習の文字・綴りに、新出の文字・綴りを付け加えていくという「積み上げ式」のシラバス

使うのが理想です。)

(*小著『スラすら・読み書き・英単語』(NHK出版/絶版!)、あるいは、本ブログ(左コラムに

ある「テーマ」の中の)「英語入門期シラバス試案」(Day12-Day96)を通してご覧ください。)

 

2つめは、綴りを覚えさせようとして、写経のように繰り返し書かせるのはやめにして、覚えた

発音を自分で再現しながら、綴りの一部を埋める練習をさせること。

「3段階書き足し法」と呼んでいるものです。)

 

そして、3つめは、生徒に(新出)語を示す際に、一度に語(の綴りすべて)を見せるのをやめて、

語の綴りの一部から書いて、順に文字・綴りを書き足すことで、生徒に自力で("Repeat after me." 

なしで)読ませること。

(その際、生徒が間違った発音をしないよう、また、フォニックスの規則を強化するよう、

生徒が声を出す前に、最低限必要な「助言」を添えることが大切です。)

(*本ブログ(左コラムにある「テーマ」の中の)「単語を読ませる書き足し法」をご覧ください。)

 

以上の内容を、400枚超(異常?!)のスライドを使いながら、1時間半という短時間で、超特急の

説明をしたのが、標題の講習でした。

 

 

その講習のアンケートを、以下、ご紹介しつつ、コメントも少し添えてみようと思います。

 

▪️大変参考になりました。またお話を聞きたいですので、次回があれば、また参加したいです。(大学院生)

 

▪️せっかくご用意くださった教材が後半ほとんど見られなくて、残念でした(…)(講師)

〈コメント〉レジュメの冒頭に「講義(スライド)の順とは一致しません。この講座の時間枠で扱えない内容も掲載してあります」と書いたように、後半は時間的に到底扱えないことを承知で、この講習を受けた方に発展的な素材として用意したものです。自学していただければ、と思います。

 

▪️非常に濃い内容でしたが、もう少し長い時間でお話を伺いたかったです。スペリング指導の考え方が変わりました。取り入れられるものから早速取り入れていきたいです。(中学校)

 

▪️先生の講義を初めて受講しました。高校でフォニックスの帯活動は必要だと思い、高校1年の授業を受け持つ際は帯活動で取り入れようと思いました。(高校)

〈コメント〉高校での必要性を感じてくださっていることを大変嬉しく思います。ぜひ取り入れてください。私も中学(1年生用、75枚)と高校生(2〜3年生向け、35枚)のフォニックス指導のハンドアウトを使っています。中学1年生用は、上掲の絶版本の拡大版(=語数増強版)です。

生徒さんの綴りを覚える労力が格段に減り、また、綴りを正確に覚えようとして、発音も向上することと思います。

 ともするとフォニックスは「小学生か中学校1年生のためのもの」と誤解されている向きが多いのですが、語数が増え、規則と例外がわかるようになってきた高校生に、今一度、整理してあげるということはとても大切だと思っています。

 

▪️具体例が豊富で大変わかりやすいご講義でした。(大学)

〈コメント〉この方は名古屋大学の大名先生のツイッター(現X)でこの講習をお知りになったとのこと。大名先生、ありがとうございました。

 

▪️変にオーディエンスに声をかけることもなく、きっちりプレゼンしてくださったのが、嬉しいです。資料も嬉しいです。(高校)

〈コメント〉嬉しい反応をありがとうございます。Zoomであり、時間の制約も厳しかったこともあり、一方的に喋りまくったのですが、間延びせず、却って良かったのでしょうか。

 

▪️大変勉強になりました。資料も配布してくださり、今後の授業に役立てたいと思います。(中学・小学校)

 

▪️生徒さんの間違えやすいポイント間違える理由、さらに助言の仕方を具体的に教えていただきました。やり方を工夫しながら、ぜひ実践したいと思います。ありがとうございました。(教員志望)

 

▪️先生の発音指導に関するご本はすべて購入し、勉強していますが、今回は、その指導の過程を丁寧に教えてくださいましたので、すぐに、現場で生徒の指導に使えると思います。いつも学習者の立場に立って、研究を進めていらっしゃる先生の姿勢そのものに多くを学んでいます。(元大学)

〈コメント〉過分な感想に恐縮です。「学習者の立場に立って」という文言、ありがたく思います。

 

▪️大充実の内容でした! 今回のレジュメで扱えなかった部分も、ぜひ拝聴したいです。

・『これからの英語の文字指導』をたいへん感動しながら拝読して以来、先生は仰ぎ見る存在でした。

・ディスレクシアにフォニックスは不可欠です。しかし、読める生徒にとっても実は同じくらい不可欠と知れたのは大きな収穫でした。

帯活動でフォニックスを続けること、スペルミスをフォニックスを意識して修正してあげること(励ましも忘れず)。いまの日本の英語教育にはフォニックス指導が本当に必要なのだという思いを新たにしました。また、ディスレクシア用のフォニックスというものは特になく、定着までに反復はかなり必要なものの、一般用(?)のフォニックスと同じだとわかりました。

「書き足し法」はさっそく取り入れてみます。これは、onset-rimeのrimeを先に読ませてから、onsetを加えていくということですね(?!)。ディスレクシアの生徒はフォニックスを教えても、onsetからrimeにうまくつないで読めないケースが多いです。rimeに書き足していくというのは新たな発想でした。ありがとうございます!

「アクセントではなく弱音化」も目からうろこでした。その他、先生の助言の仕方があたたかくて的確で、生徒は安心して間違えられるだろうと感じました。

・「10回書いて覚えないならもう10回書け」は、100回書いても覚えられないディスレクシアの生徒にとって、心を病むほど辛い対応です。「単語を漢字読みさせてはならない」がもっと広まってほしいです。(ディスレクシアの学習者の指導者)

〈コメント〉膨大な感想に圧倒されました。そして、その内容に、自分がやっている[きた]ことは間違いでなかったんだと確認でき、感動しました。こちらからお礼申し上げたいほどです。

こんなことを書くと、識者から叩かれるかもしれませんが、私はネイティブ向けのonset-rime式のフォニックスは、日本語ネイティブには合わないのではないか、と密かに思っています。もちろん、「子音+母音」は「密接不可分の1音節」という日本語の「通念」を壊して、「子音」と「母音」の合成なのだ、ということを理解させることが悪いというのではないのですが、最終目的である「単語の発音」を作り出すための方法としては、お話ししたような、単語内の発音できる最小単位から読ませていくのが良いのではと考えています。

「ここにアクセントを置いて強く読みなさい」は英語の発音の実態とも異なるし、通じる発音にならないので、書いてくださったように私は「こっちを弱く(短めに/脱力して)読みなさい」と指導するようにしています。昨日も"remember to do/ remember doing"の意味の違いを教えていたのですが、rememberの最初が強すぎて気になったので、「最初と最後を弱くして、da-DAH-daで言ってみよう」(←daで5本の指を揃えて摘まんだ形、DAHで5本の指を開いたパーの形を作って見せながら)と指導したところ、1回で良い発音になりました。なお、Repeat after me.は言っていません、念の為(笑)。

 

以上、長くなりましたが、講習の感想と私からのコメントでした。