相方の髪が鬱陶しい。
鬱陶しさがピークに達したある日、思い余って私は言った。
「髪が何かものすごいことになってるぞ、君。
そうだ、ほら、なんなら私が切ってあげよう。」
「いい。」
「遠慮などいらないよ。」
「してない。」
とりつく島もないとはこのことである。
人が親切でいってやってるというのに!
ここでぐっと言葉を飲み込み頭の中で唱える。
(物は言いよう、物は言いよう、物は言いよう、落ち着け私。)
「わ・・私、髪の短い君のほうが好きだなぁ。
短いほうが断然かっこいいぞ!」
「僕は今の自分が好き。」
知るか!
というわけで、客観的な鬱陶しさと、
自分自信の精神衛生状態を最優先し、
相方のOKの返事を得ぬままどんどこ髪を切る準備を整える。
全て準備万端とばかりに シャキシャキ と
ハサミをかき鳴らす。
だが、全く無反応。
「準備できてるんですがー。」
その私の声に危険を察知したのだろう。
ようやく重い腰を上げてしぶしぶ椅子に座る相方。
「決して短くしすぎないように。」
「はいはい。」
こんなに髪を切らせてくれない人相手に、
またすぐに鬱陶しくなるような中途半端な長さにする訳がなかろう。
ざくざく切りました。
結果・・・
まさかのふてくされ(←当然か)。
「な!!前髪みじかすぎるよ!!
目に入るじゃん。
もーどうしてくれるのさ。」
「そう? おでことまゆ毛の真ん中だよ。 短くないさ。
それに、長いほうが目に入ると思うよ。
今の長さだったら目に入らないよ。」
「ちらちらするじゃん、前髪耳にかからないから。」
「そもそも、前髪耳にかかる長さってのがまちがってるだろ。
耳にかかるくらい長いから、落ちた時に目に入るし、
君、実際ものすごく鬱陶しそうだったぞ。」
「もういい!プーン!」
久しぶりにこんなにプリプリの相方を見た。
そもそもこの人は変なところにこだわりがある。
髪がぼさぼさの鬱陶しいことになってても、
ひげが無精ひげになってても気にしないくせに、
絶対にベージュのセーターとグレーのズボンを合わせない。
前に赤いセーター持ってきてって頼まれたのに
見つからないからベージュのセーターを持って行った時
ものすごくプリプリしてたのをみて初めて知った相方なりのこだわり。
声を大にして言いたい。
「いいじゃん、別に。」
私はベージュとグレーを合わせてても
顔まわりがこぎれいならば全く問題なく許せる。
逆に、いくらいけてる(←死語)色の組み合わせの服を着ていても、
髪やら髭やらが鬱陶しいことになってたら、もうがっくしである。
まぁ、とはいえ前髪の長さにも、私には計り知れない
相方なりのこだわりがあったのだろう。
まぁ、人のこだわりってものは
他人からすると、結構どうでもいいものだったりするのだろう。
(あ、他人って言っちゃった。)


