さて、まずは昨日の株式相場ですが、欧州株は続伸しましたが(英FTSE100 +99, 独DAX +105)、米国株の方はと言えば、ダウは+72まで上昇後、結局は前日比▲2とわずかながら下落して終わっております。S&Pの方は+1ですので、米国株は横這いであったと言うのが適切であるかと思います。
G8を受けて、ユーロ圏が緊縮一本やりから成長促進のための対策をとる方向に舵を切るとの期待感を背景に、本日のEU非公式首脳会議開催を前に買戻しが続いたこと、中国も成長政策へ転換するとの期待感から商品市場がアジア時間から上昇したことにより、欧州時間までは株式市場は堅調に推移したのですが、欧州市場が終わった後、ギリシアのパパデモス前首相が「ギリシアのユーロ離脱は検討されている。離脱コストは500Bil-1 trl ユーロ。」との発言がマーケットで報じられ、米国株は下落しました。欧州株はこのパパデモス発言を織り込んでおりません。
為替は、ドル/円は、格付け会社Fitchが日本の長期債格付けをAA-からA+に格下げしたのを受け、\79前半から\79後半へとドルは対円で上昇しました。これに、その後発表された米国の4月中古住宅販売が前日比で+3.4%と市場予想を上回ったことも好感され、\80.14まで一時上昇しました。マクロファンドなどは上昇過程で相変わらず売っておりました。特に\80ではofferは大きかったようが、昨日は一応これをこなした格好でした。しかし、その後はパパデモス発言を受け、本日は¥79.50台へと下落しております。
ユーロ/ドルも、初めは株式上昇を受け堅調に推移しましたが、1.2800-10の上値が非常に重く、本日のEU非公式会議ではユーロ共同債までは踏み込めず、特に重要な決定はなされないだろうとの思惑が台頭したことで頭打ちからじりじり値を下げ、パパデモス発言がとどめをさした形で1.2644まで下落してしまいました。
商品相場は、中国が成長重視に政策転換するとの思惑からアジア時間から、逃避資金の集まっていた金(Gold)は下落したものの、非鉄金属やエネルギーは上昇を見せていたのですが、こちらもパパデモス発言で頭をぶったたかれた形となっております。実需に目を向ければ、今や中国は全世界の消費の40%を一国で消費するまでになっており、中国の景気回復は商品の消費量の増加に即つながりますので、これら商品市場や商品関連の株式銘柄は中国の動向に左右されてしまいます。
昨日の各相場の動きは上述のような動きでしたが、要は何も変わってないということですね。
6月17日にギリシアで再選挙が行われますが、それまではギリシアに関するニュース、政府・金融当局者発言で右往左往する展開は続くわけです。
では、結局どうなるのか、繰り返しになって恐縮ですが、個人的には妥協点が見出されるのだと思っております。
そもそも、ギリシアのユーロ離脱はギリシアにとってあまり得ではないからです。
ギリシアのプライマリーバランス(借金の元利払いを除いた政府支出と、公債発行を除いたそれ以外の政府収入の収支のことです)は依然赤字なわけです。「借金を踏み倒しまーす!」と言っても、その後、現状の政策を維持するにもお金が足りないわけです。しかも、EUとの約束を守り緊縮財政を堅持する方針を出せばユーロやIMFからお金が借りられるのですが、借金を踏み倒したらもう誰もお金は貸してくれません。無い袖は振れないのですから、お金が無ければ政策は実行できず、結局緊縮財政をEUとの約束以上に行わなければならないわけです。
通貨もユーロからドラクマに変わります。ドラクマは暴落するでしょう。輸出には通貨安はいいと言いますが、ギリシアには肝心の輸出産業があまりありません。日本とは違います。観光産業だけですから通貨安の恩恵は限られます。一方で通貨安、お金を借りられないとなると、インフレが急激に進むでしょう。観光産業においても、この急激なインフレの進展は通貨安の恩恵を相殺しかねません。また、特にエネルギー価格ですが、日本でもガソリンや電気料金の値上げは国民の不満の一つですが、ギリシアもエネルギーは輸入に頼っており、その輸入価格はドラクマ安を受け、急速に跳ね上がります。どう考えても、ギリシアのユーロ離脱はギリシアには損なのです。
では、何故、現在ギリシアからユーロ離脱の声が上がるのか。それは、EUから譲歩を引き出せると思って駆け引きに出ているだけなのだと思っております。先日の選挙で第二党になった急進左派連合のツィプラス党首は、EUとの約束を反故にして緊縮政策の放棄を掲げて国民の人気取りを行っていますが、昨日ドイツで会見しておりましたが、ユーロからの離脱は考えてないと発言しておりました。何とも虫のいい話ですが、ギリシア国民の8割以上がユーロ残留を望んでいるのですから、理屈から言えば、最終的にはユーロ離脱につながることはできないわけです。
一方、EU側、特に支援による負担の大きいドイツですが、こちらも先週末のG8で成長促進策も重要というコンセンサスが出たわけですから、多少の妥協は国際協調の必要性とか何とか言い訳のできる素地はできたわけです。従って、幾分EUが譲歩する形で、緊縮政策の枠組みは守らせるという妥協が成立する可能性は高いのではないでしょうか。
ただ、最近の世界的な政治、特に政治家の質の劣化ははなはだしく、ほぼ大丈夫だろうとは思っていても、もしかしたらの可能性は無いわけではないので、あえてリスク資産を増やすことも無いだろう、というのが投資家のスタンスなわけです。従って、積極的なマーケットでの買い手が不在なこの間をついてやろうとマクロファンドが売りをしかけてるというのが実態ではないでしょうか。
このようなマーケットでは、まだギリシア再選挙まで1ヶ月近くありますから、しばしおとなしくマーケットがオーバーシュートしていい買い場がくるのを待つのが得策と思っております。