『アメリカ先住民を知るための62章』 阿部珠理 編著 2016年
アメリカ先住民の歴史、社会問題、文化など多岐にわたる62ものトピックをまとめた本。
最初の項目は「連邦ーインディアン関係」で、アメリカ政府と先住民とで交わされた条約、BIA(内務省インディアン局)、同化政策などについて。
Ⅱ番目は健康問題、経済問題などの「現代社会問題」。莫大な収益を上げるカジノが現代では大きな存在になっていることがわかります。カジノを持っていない部族は貧困から抜け出せない一方、カジノの存在が伝統を破壊している悪影響も。
Ⅲは「文化と宗教」で、儀式やパウワウ、伝統工芸などについて。一般的な読者が興味を抱いているのはこの項目でしょう。個人的にも、18世紀の記録では巨大なトーテムポールの記録はなく1800年ごろから巨大化したというのは知らなかったので面白かったです。
Ⅳではイシをはじめ、スポーツ、政治、芸術などで有名になった「人物」の紹介。カルロス・ナカイやポカホンタスなどにも触れています。
特に現代の先住民がどのような状況に置かれているかがよくわかる本で、これを読めば広く浅くではありますが、おおよそネイティブアメリカンについて精通することができるという便利な一冊でした。
私は昔、北アリゾナ大学で「Indigenous Studies」(先住民学)という学科を学んでいたことがありましたが、まさにそこで教えていたような内容でした。しかし日本語で読めるだけあって、この本の方が大学で学んだことよりも得るものが多かったかもしれません(笑)
その授業に参加していたのは先住民の学生がほとんどで、彼らと交流したり居留区に行って現地の空気を感じたりしたことのほうが、授業で教わることよりもずっと豊かな経験だとは当時から思っていましたが。
アメリカインディアンというと馬に乗って草原を駆け回っているような、西部劇のイメージしかない方には是非読んでいただきたい本です。
一方で、「自分の中のインディアンのイメージを壊されたくない」という方には向いていないのでご注意ください。
この本は数多くの研究員のペンによるものを阿部珠理さんが編纂したもの。
以前、阿部珠理さんが単独で書かれたご著書を読んで、「やはり大学の教授が書いた本は事実関係がデータに基づいていて素晴らしいな」と感じたものですが、ググったら2019年に67歳の若さでご逝去されていました。
阿部先生が残してくださったものに感謝を捧げると共に、ご冥福をお祈りいたします。



