やってきましたよ、読書の秋が。
電車に乗るとスマホを見ている人がほとんどですけど、他人事ながらなぜその時間を自分の身になることのために費やさないのか不思議でしょうがないです。
本を読むことが本当に身になっているのかと問われれば、読んだ端からすぐに忘れてしまう私にはなんとも言えませんが(笑)
いや、あなたの人生なので、あなたの好きなことをなさってください。私は本を読み続けますけど。
『アースシーの風』ゲド戦記6 アーシュラ・K.ル=グウィン著 2001年
ゲド戦記の最終巻。原題は「The Other Wind」。
何を隠そう、過去に読んだ時に最も記憶に残らなかったのはこの6巻です。
4巻でゲドの師であるオジオンが亡くなる前に「なにもかも変わってしまった」と言い残しましたが、その通りに生と死の境界が崩れ、竜が人間の世界で暴れるようになり、その謎を解くためにテナーやテハヌー、レバンネンなどのこれまでのキャラクターが勢揃いする物語。
この巻では誰が主人公というよりは群像劇のようにさまざまな人物の視点で語られます。ちなみに老人となったゲドはずっと自宅待機です(笑)
古きものは去り、新しい世代に未来を託すという感じのエンディング。
この全6巻の物語は「ゲド戦記」という日本独自のシリーズ名がつけられていますけど、ゲドが主人公だったのは序盤だけですし、「戦記」というほどずっと戦っているわけでもないのですよ。内容は興味深いのですが、ゲドの活躍を読みたかった私には何度読んでもこの最終巻が一番不満足でした。
というわけで感想は、「ゲド戦記」というそもそものタイトルが悪いです。
『岬』 中上健次著 1976年
『セブン・アローズ』の後書きで阿部珠里さんに翻訳を勧めたのが中上健次さんだったというのを知って、中上氏の小説を読んでみようと思い、芥川賞を受賞したこの作品を手に取りました。
紀州の片田舎で、複雑な血筋の親戚関係の中、人夫として働く男を主人公とした自伝的小説。
陰鬱で逃れようのない因業を描いた、昨年に芥川賞作品ばかりを読む前に抱いていた「ザ・日本文学」のイメージそのものでした。
なぜ中上氏がネイティブアメリカンの小説を読んでいたのだろう? と一瞬不思議に思いましたけど、連綿と続く土地と血筋の影響に抗えない人々、という意味では通じるものがあったのでしょうね。
「岬」を起点とする三部作が書かれたとのことですが、一冊目でもうお腹いっぱいです・・・。
『ともいきの思想』 阿部珠里著 2016年
サブタイトルは「自然と生きるアメリカ先住民の『聖なる言葉』」。
『大地の声 アメリカ先住民の知恵のことば』で紹介していたような「太鼓が来れば、祭りは始まる」とか「人はそれぞれの歌を持つ」などの言葉をタイトルにしたエッセイ集。
内容は阿部先生がラコタ居留区で体験したことばかりで、処女作『聖なる木の下へ』(『アメリカ先住民の精神世界』を改題)の続編のような趣きなので、そちらを読んで気に入った方にはおすすめ。
前作同様、インディアンを美化したりすることなくリアルな出来事が書かれており、嘘をついて金を無心にくるインディアンの話なども載っていますが、そういった面も受け入れつつ彼らの文化の根底にあるものを探ろうとする阿部先生の知的好奇心と愛情を感じます。
中上健次さんとのエピソードや、ご自分について書かれている部分は他の著作にはなかったので特に印象に残りました。
『葉隠入門』 三島由紀夫著 1967年
『ともいきの思想』で、アメリカ先住民の「今日は死ぬのにもってこいの日」という言葉が『葉隠』の「武士道とは死ぬことと見つけたり」と同じことを言っているという記述を見て、そういえば『葉隠』って読んだことないなと気がつきました。
ググったら、なんと三島由紀夫が『葉隠』を解説するという本があったので読んでみました。
「武士道とは死ぬことと見つけたり」の一文しか知りませんでしたけど、全体を読むと死を肯定しているというよりは「必死の覚悟で生きろ」と言っているように思えました。
それは死を賛美することとは違うように思えましたけど、三島はこの本を書いた3年後に割腹自殺。『葉隠』が三島由紀夫にとって座右の書であり、死生観に大きな影響を与えていたとは知らなかったです。
前半は三島由紀夫による『葉隠』の解説、後半は別人による現代語訳。
『葉隠』の内容というより、三島が『葉隠』をどのように読んだのかのほうが興味深く思えました。
『アメリカ・インディアンの歴史 ビジュアルタイムライン』 グレッグ・オブライエン著 2010年
翻訳は阿部珠里さん。阿部先生が書いたわけではありませんが、この本もアカデミックな内容です。
1492年以前から今日に至るまで、各時代のアメリカ先住民がどのような歴史を歩んできたのかを約300点に及ぶ写真やイラストとともに見ることができます。
例えば、1492年の時点で先住民の人口は「800万人から1200万人、最大推定で1800万人と考えられている。」(P.6)など、きちんとした数値を提示してくれるのが勉強になります。
あまり他の本で触れられない1492年以前のインディアンの暮らしぶりに言及している点が特によかったですけど、コロンブスが来てから1890年のウンデッドニーの虐殺までずっと戦いの連続だったことを再認識し、その歴史の重みを改めて痛感させられました。
大型本で読み応えもありますが、まるで学校の教科書や参考書を読んでいるような感覚なので、そこが好き嫌いが分かれそうですね。
真剣に学びたい方にはオススメ。