『脳のなかの水分子』 | Wind Walker

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ネイティブアメリカンフルート奏者、Mark Akixaの日常と非日常

脳のなかの水分子―意識が創られるとき

 

『脳のなかの水分子 意識が創られるとき 中田力著 2006年

 

 

毎年誕生日に絵を描いて贈ってくれるアーティストの方がいるのですけど、今年の絵が水の流れを感じさせる作品だったので、お礼を兼ねて「私が人間の本質は水だと思っていることを見透かしているような絵だった」と感想を伝えたところ、「心の動きには水の動きが本質にあるという研究者の著作がある」と教えてくれました。それが本作。

 

 

皆さんは「全身麻酔のメカニズムは実はまだ解明されていない」という冗談みたいなトリビアを聞いたことはありますか?

 

2つのノーベル賞を獲得したライナス・ポーリング(1901-1994)は、人の意識が脳における水分子の状態変化に左右されていることを見抜いた科学者だといいます。

 

しかしながら彼の突拍子もない水性相理論を人々は理解できず、現在も全身麻酔は脂肪溶解度説というまったく別の理論で説明するのが医学会の常識として定着しているそうです。

 

MRIの専門家である著者の中田さんはポーリングのアイデアを受け継ぎ(MRIは水分子の画像なのだそうです)、脳の中で水が動いていてそれが脳機能と結びついているという独自の「渦理論」を組み立てました。

 

 

残念ながらバリバリ文系の私にはよく理解できない部分も多かったのですが、松岡正剛さんが千夜千冊でこの本を取り上げていますので、興味のある方は是非ご一読ください。

 

非常によくまとめられているので、ここだけ見れば十分・・・と思ったでしょう。

 

しかし著者の中田力さんはとても知識の幅が広く、「好奇心は猫を殺すという。」という一文で始まる本作は私のような文系人間が読んでも思わず惹きつけられるような話題をいくつも散りばめていて面白かったですし、なんとなく分かったような気分にしてくれるほど噛み砕いてやさしく説明してくれています。

 

 

中田さんはポーリングの理論すら理解されなかったことを思って渦理論の論文を学会に提出することなく、学術書と一般書を書いただけで2018年に逝去されました。

 

ご冥福をお祈りすると同時に、氏の望んだ通りに本作がアイデアを理解し受け継ぐことのできる方の眼に触れることを願います。

 

 

 

 

ところで私がなぜ「人間の本質は水」と思っているのかというと、状況に応じていかようにも変化でき、また何でも受け入れることのできる柔軟性、そして穏やかな時は癒しや浄化の力があると同時に集団で暴走し始めたらもはや誰も止めることができない、などの点です。

 

さらに言えば一人一人の魂は一滴の水のようなもので、死ねばみんな海に還るものだと、自分でも何に影響されてそう思うようになったのか分かりませんが、とにかくそう信じています。

 

なんの根拠もないことなので誰かに理解してもらおうとも思っていませんが、共感してくれる方がいるのであれば嬉しいです。

 

なぜなら私たちは最終的にはお互いに混ざり合うことになる水なのですから。