『第九軍団のワシ』 | Wind Walker

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ネイティブアメリカンフルート奏者、Mark Akixaの日常と非日常

第九軍団のワシ (岩波少年文庫 579)

 

『第九軍団のワシ』 ローズマリ・サトクリフ著 1954年

 

 

『物語ること、生きること』で上橋菜穂子さんが本作から影響を受けたことを公言していたので読んでみました。

 

あらすじ:紀元117年ごろ、ローマの第九軍団がブリテン北部に進軍中に忽然と消息を絶った。第九軍団の隊長の息子マーカスもまたブリテンに赴任してきたが、戦闘中に脚を負傷して軍人として生きる夢を断たれた。挫折の日々を送っていたマーカスは、脚の傷が癒えるとともに第九軍団の象徴である「ワシ」(の像)を取り戻すべく親友のエスカとたった二人で敵地に忍び込むのであったーー。

 

 

第九軍団が消息を絶ったことと、ローマ軍のワシの像が1866年にシルチェスターの野原で発掘されたことは事実で、その二つの不思議な事件から想像の翼を広げて作られた物語とのこと。

 

約450ページの物語ですけど、主人公がワシを取り戻す旅に出かけるまでの前半200ページは正直退屈してしまいました。

 

が、ワシの像の奪還をめぐる活劇は一転して、息をつく暇もないほどハラハラドキドキの連続で、一気に読ませます。

 

名作の誉高く、2011年には映画化もされました。

 

 

しかしどうも映画の評価は今ひとつで、敵のブリテン氏族(アザラシ族)を野蛮人として描いている点や、そもそものストーリーがローマ軍の侵攻をブリテンが撃退しただけなのに逆恨みして戦利品を取り返しに行った、という風に見えてしまうが不評の原因のようです。私は観ていませんが。

 

たしかにそこまでしてワシの像を取り返すことに何の意味があるのか原作を読んでいてもよく分かりませんでしたし、大して意味はなかったと作中でも言及されるのですが、一人の人間がそれがなんであれ使命感を持って命懸けで目的を果たそうとする姿には素直に心を揺さぶられました。

 

 

本作を賞賛しているのは上橋菜穂子さんだけでなく、かつて宮崎駿さんが選んだ子供への推薦図書50選にも入っていたのですよ。

 

実写よりも宮崎監督にアニメ化して欲しかったですね。

 

 

本作には『銀の枝』、『ともしびをかかげて』、『辺境のオオカミ』という続編があって、「ローマン・ブリテン四部作」と呼ばれているそう。

 

全巻読んでみたいですけど、本作の前半のつまらなさを思うといささか躊躇してしまいますね。後半の圧巻の面白さを思うと読むべきなんでしょうけど。

 

 

個人的な興味を言えば、当時のブリテン北部では目の悪い人が多かったそうで、主人公がにせ目医者に扮して敵地に潜入するというくだりが妙に面白かったです。