恒例になりすぎて、もはやなにが 【Special】 なのか自分でも分かりませんが、読んだけどブログに書かなかったシリーズ第12弾です。
読んだことがない作家さんの本を読むほうが好きなのですけど、今回は読んだことがある人の本を特集してみました。
『星の巡礼』 パウロ・コエーリョ著 1987年
名作『アルケミスト』の著者のデビュー作。
著者が所属するRAM教団の儀式で最後の試験でしくじり、その失敗を取り戻すために巡礼の旅に出て、大切なことを学んでいく・・・という物語。
語られる教訓は『アルケミスト』とそれほど大差ないのですが、向こうはファンタジーだったので素直に感動できた一方、本作は著者のリアルな体験を基に書かれたもので、RAM教団のあまりのカルト臭さに共感することが難しかったです。
原題は「魔法使いの日記」。自分を棚に上げて「いい年して厨二病すぎるだろ。このおっさん達」と思ってしまいました。
ただ教団の合言葉、「山が高いか低いか知るためには、必ずしもその山に登る必要はない」、「船は港にいる時、最も安全であるが、それは船が作られた目的ではない」はメチャクチャ格好良かったです。私も言いたい!(←やっぱり厨二でした。)
『6時間後に君は死ぬ』 高野和明著 2007年
未来を予知できる青年と、彼に「6時間後に死ぬ」と予言された女性が未来を変えるために奮闘する物語を表題作とした短編集。
どの話にもその青年が顔を出す連作で、内容はサスペンスとほっこりヒューマンドラマ。昔読んだ傑作ミステリー小説『13階段』と同じ著者だと読んだ後に気がつきましたけど、こういう軽めの作品も書いていたとは。『13階段』には及ばないとはいえ、普通に面白かったです。
本作は映像化のために書かれた作品とのことでしたが、解説によれば著者は「小説は知的な好奇心や知識欲を満たすもの、映画はエモーションで押すもの」という考えを持っているそう。
これにはまったく同意見で、アホみたいな小説、または小難しい映画を見ると私は本当に腹が立ちます(笑)。
『旅のラゴス』 筒井康隆著 1986年
筒井康隆さんの著作はそんなにたくさん読んだことがあるわけではないのですが、メタ構造やブラックユーモアなどの度が過ぎた毒々しさが強いイメージがあります。
面白く読めた『パプリカ』でも多少その気は感じましたけど、本作にはその悪癖が無かったので楽しめました。
高度な文明を失った代償として人類が空間転移や読心術などの超能力を身につけた世界を、ひたすら主人公が旅する物語。
たくさんの出会いと別れ、恋や冒険が描かれますが、これといったメッセージ性も特には無いので読む人それぞれに違った印象を与えるであろう名作。
主人公の誰からも好意を持たれる性質が、生きていく上でもっとも強力な能力であることが個人的には心に残りました。
これはSFなのか、ファンタジーなのか、はたまた新しい神話なのか。オススメですけど、男性向きなのは間違いないでしょう。
『きげんのいいリス』 トーン・テレヘン著 2018年
著者のトーン・テレヘンってどこかで聞いたような・・・と思いながら読み始めたら、途中で気がつきました。哲学童話『だれも死なない』の作者さんだと。
本作も『だれも死なない』と同じような内容で、この人はこんな作品ばかり書いているのかと思っていたら、まさにその『だれも死なない』を改題したものでした(笑)。
もっとも重要なキャラクターであるリスに着目して新しい邦題が付けられたとのこと。前のタイトルのほうが良かった気もしますけど、表紙はこっちのほうが可愛いですね。
不条理な内容の連続なのでずっと読んでいると頭がおかしくなりそうですが、本来はいっぺんに読むのではなく子供が寝る前に1話ずつ読んであげる本なのでしょう。
2019年度の本屋大賞、翻訳小説部門で第2位に輝きました。
『ジヴェルニーの食卓』 原田マハ著 2013年
『楽園のカンヴァス』と『暗幕のゲルニカ』の間に書かれた、マティス、ドガ、セザンヌ、モネを題材とした短編集。
それまでの常識を覆した印象派の巨匠たちですが、当時はまだ評価もされず貧しい生活を余儀なくされていました。そんな彼らを支え見守る女性たちの視点で描かれるところが原田マハさんらしい、女性にしか描けなかったであろう物語。
原田マハさんの著作や山田五郎さんのYouTubeによってだんだんこの時代の画家たちの知識も増えてきましたけど、やっぱり私は絵画そのものよりもそこに込められたアーティストの苦悩や理想、メッセージのほうに興味を引かれてしまいます。
芸術家は普通の人々と同じような生活をしつつ、「何かが違う」瞬間や空間をもつという馬渕明子さんの解説も見事。
『ソウルメイト』 馳星周著 2013年
直木賞を獲った『少年と犬』より前に書かれた、馳星周さんの犬小説。
7篇の短編集で、いずれも飼い主と犬の絆を描いた感動作でした。犬を飼ったことがある人や、これから飼おうかなと思っている人には読んでいただきたいです。
『少年と犬』みたいに死ぬほど泣かされる話はありませんが、どれもほろりとさせられる話ばかり。人が死ぬノワールが苦手な方はこちらのほうが読みやすいでしょう。一つの作品としての力は『少年と犬』のほうが数段上だとは思いますけど。
この作品も最終話が一番泣かせる話で、私も実家で飼っていた犬が永眠するのを見送ったことを思い出しました。
ちなみにその犬の名前は「ラブ」でした。