旧法において、そもそも技能実習修了時に厚生労働省から委託を受けて、JITCOが
「技能実習修了証書」を出しておりました。(平成30年3月31日で終了)
新法においては、監理団体と実習実施者から「技能実習修了証明書」を発行しております。(ひな形は厚生労働省が作成しましたが、修了の証明は監理団体と実習実施者が行います)
この証明書を特定技能における「評価調書」の代わりにならないのかは、実際この事業に
携わったJITCOが出入国管理庁に掛け合っていますが、却下されたそうです。
また厚生労働省もあくまでも修了証明書は技能実習制度の中での話であり、特定技能は
出入国管理庁の管轄なので、この修了証明書を特定技能の在留資格認定として採用する資料
にするかどうかに関しては、出入国管理庁で判断するものだそうです。
この「技能実習修了証明書」が「評価調書」の代わりにならないのは、旧法で帰国した
実習生たちは、新法で義務づけられている随時3級の技能試験に合格していないこと、また
この修了証明書が特定技能における試験免除に該当するだけの価値がないと判断されたのだ
と思います。
国としては、人手不足で苦しんでいるのは業界であり、ならば業界が責任をもって
元実習生を入国させるのは当然であり、国として外国人が増えることにより生じる問題の
責任については基本的に負わないので、無理して通した「特定技能」を業界の要望によって
成立させたのだから、その見返りとして考えているだと思います。
上記のことを鑑みると、国が「評価調書」を求める原則は変えないと見た方が
妥当だと思います。
さて、監理団体として、この「評価調書」をどう考えるかですが、感情論として3年間
面倒を見た実習生を他の企業に転職することは、あまり気持ちの良いものではありません。
日本人が転職するのに前の会社から仕事の状況を報告するなど、あり得ないことなので、
非常に違和感を覚えます。
また「技能実習」での支援を行っている監理団体としては、「特定技能」の支援体制や
参入している人材派遣会社などの状況を見ると、不安を覚えるものです。
外国人の労務管理はそんなに簡単なものではなく、派遣の延長で考えているのでは
ないかと思います。
先日、国際人材育成機構の柳沢共栄会長が、中日新聞社の取材に対して、
「出稼ぎの外国人が増えれば、治安悪化の恐れがあるため、特定技能の制度には協力できない」
「団体側は良好というお墨付きを与えることで、トラブルが起きた場合の責任も問われることもあるだろう。負担を現場に押しつける国の対応はおかしい」
と述べております。
技能実習も特定技能も出稼ぎの外国人ではありませんので、特定技能を出稼ぎの外国人と
言うこと自体、おかしいですね。
また国際人材育成機構という日本最大の監理団体であり、たくさんの技能実習生を育成
されたところの会長たるお方が、技能実習生から特定技能に変更するための評価調書に
いちゃもんをつけるために、自らの技能実習生が特定技能に切り替わったことで出稼ぎの
外国人となり、治安悪化に結びつくという言い方はおかしいと思います。
やはり私からすれば、特定技能への当てつけにしか聞こえません。
しっかりと技能実習を行ってきた自負から出てきている言葉だと思います。
正直な話、実習生の善し悪しの担保を監理団体と実習実施者に持たせるなよということ
でしょうか。
国自体も「特定技能」の危うさを十分認識しているのかもしれません。
あちこちの監理団体から、この「評価調書」を書かないという話を聞いています。
皆様の団体はどう考えているのでしょうか?