特定技能という新しい在留資格が出来、技能実習よりも若干制限が緩く、外国人を入れやすいという認識が、新規参入する人たちにあるようで、簡単に考えている人たちが新たなビジネスチャンスとばかり、いろいろと動いているようです。それはそれで別にいいんですが、傍目から見てド素人がこの業界をわかりもしないでお客様に説明している光景を目にすると、大丈夫かなと余計なお世話ですがそう思ってしまいます。
これから書くことは一応フィクションであることをお断りして、お読み下さい。
某県で銀行の子会社として不動産の売買や管理、保険代理店などの業務を行っている某会社。最近、経営悪化が叫ばれている地銀が、この外国人材ビジネスに参入してくるケースが結構あり、子会社の中に人材サービス部を作りました。銀行からの営業の情報ではかなりの人手不足が地方の中小零細企業を襲っているので、銀行での人脈を使えば、外国人材の入れ込みは簡単にできる。まして、特定技能という新しい在留資格もできたので、仲介手数料も取れるのではないかという思惑から始まりました。
しかし、所詮ド素人の集まり。ネットでの情報を元にいろいろと調べていましたが、技能実習生も特定技能もよくわからない。在留資格もちんぷんかんぷん。移民の解禁だとマスコミで報道されているわりには、いろいろ手続きが面倒らしく、試しに登録支援機関の申請を行ったところ、経験者がいないということで入管の受付で書類を返される始末。コンプライアンスのうるさい銀行がよくぞこのグレーゾーンばかりの業界に参入してきたものです。昔は人出しといって、やくざな方々がやっていた仕事ですよ。
そのうち、どこどこの銀行が外国人材ビジネスをやるんだってよ。という噂を聞きつけ、その方面のブローカーという連中がコンタクトを取ってきます。外国人材を扱うのに資格は必要ありませんから、いかにも知っていると言わんばかりですが、実際には実務経験がない連中ですから、よくわかっていない。でも某会社もよくわかっていないので、連中の嘘が見抜けない。コンサルをやるにあたっては、最初にきちんと手数料について決めておかなければなりませんが、そういう連中に限って最初は金のことは言わない。まずは食い込んでから、自分の付き合いのある監理団体や送出し機関、在日ベトナム人たちを使って、金はそちらからもらう予定。
某会社も全く収入がない状態なので、できる限り出費は避けたい。しかし、ノウハウはほしいというところから、関係が始まっていきます。
銀行経由で知り合った監理団体からの話を聞けば、ベトナムから人を入れるには、送出し機関たるところを通さなければならないと言われ、送出し機関とはなんぞやと言うことで、とりあえずハノイへ視察に行って状況の確認をしようということになりました。でも、言っておきますが、何を見るのでしょうか。半分仕事で半分観光気分。向かい入れるベトナム側送出し機関は、付き合いのある監理団体からの紹介なので無碍にすることはできません。銀行の子会社だし、そういうネームバリューはありますので、それはしっかり接待は行うことでしょう。
しかし、この某会社、どうやってお金を取るつもりでしょうか。立場上は直接受入が出来ない会社なので、これこそ
「ブローカー」
でございます。右から左へ人を移して手数料を取る。まあ銀行は今まで右から左へお金を移して手数料を取っているのですから、同じ事ですか。
正直に申しまして、彼らが見に行ったところ、何もわからない。一方送出し機関側はこういうお客に対しては、百戦錬磨の強者ばかり。どこをどう押さえればいいのか、よーくわかっています。ノイバイ空港へのお迎えは、送出し機関の中でも12を争ううら若き美女、短いスカートはかせて透けるブラウス着せて、
「○○社長さま、ようこそベトナムへ」
甘ったるい日本語と軽いボディタッチでもさせれば、日本のスケベ爺はすぐに鼻の下を伸ばしてデレデレ。ハノイ到着口で午後からあそこに立っていれば、だいたい日本からの直行便(成田、羽田、中部、関空、福岡)は午後に到着するので、送出し機関からのお迎えレディーがたくさんおりますよ。
まず、最初のつかみがうまくいけば、後は送出し機関側の主導で視察は進んでいきます。どこも考えることは同じ。ありのままの状況を見せることはあり得ない。教育している実習生の中から優秀な子を選抜して、それから日本語を教える先生もトップの先生をつけ、日本人から受ける質問はだいたい決まっているから、それをシュミレーションさせておく。視察にきた某会社の社長は、用意された教室に入り、あまりにも整然として授業が行われているのに驚き、実習生たちのにこやかな笑顔に、こんな子たちがお客様の会社に来てくれたらどんなに喜ばれるだろうと思い、すぐにでも契約をしてもいいと思いますが、そこは一旦おいといて、他の送出し機関も視察してから決めようと思い、同行した監理団体の理事長に伝えると
「それでは明日も視察がございますから、今日は長旅でお疲れでしょう。マッサージへ行って、食事でもしましょう」
サウナが入れるマッサージのお店に連れて行かれ、その後ホテルにチェックイン。フロントには自分と同じ視察に来たと思われる日本人ご一行があふれています。部屋に荷物を置くとそのまま車で高級レストランへ連れて行かれ、そこで送出し機関の社長と一緒に食事。頃合いを見計らって送出し機関の社長から
「日本語が話せる女性がいるカラオケに行きましょう」
と誘われ、再び泊まっているホテルへ戻る。あれっカラオケに行くんじゃないの?と思っていると、ホテルの地下に案内されました。
「いらっしゃいませ」
そこはホテルのナイトクラブでありました。後はご想像にお任せします。
すでに監理団体と送出し機関との間には、キックバックなどのお金のやりとりがあり、今回の視察はすべて出来レース。夜の接待を滞りなく行えば、受注確定。こんな流れにまんまとはまります。
何もわからなければ、蜘蛛の巣に捕まる蝶々のように、知らないうちに糸にまきつかれ、少しずつ食べられていく存在になるというのがこの業界でもあります。某会社もこの蝶々のようにならなければ良いのですが、たぶん無理でしょう。
この某会社がその後どういう道を歩むのか、だいたい想像がつきます。まずは知ったかぶりしたブローカー連中から、いろいろアドバイスを受けますが、すべてピント外れ。特定技能も入れようとしたが、元実習生の再入国で手続きしたものだから、実習生の時の履歴書が合わず、入管から不許可続出。特定技能の外国人ですでに人数を当てにしていた会社からは、紹介料を取っていた手前、損害賠償を言われる始末。プローカー連中に文句を言っても、彼らは自分たちの立場がまずいとわかると、さっさと雲隠れ。
そんな中でもやっと特定技能のベトナム人が数名入ってきましたが、空港までの送迎は?市役所における手続きは?アパートや日常生活用品の手配など、雑務と呼ばれる仕事が目白押し。会社に連れて行けば、思ったより日本語ができないので、通訳はどうしたと言われ、次に何をやればいいのかわからず、会社とベトナム人からも白い目で見られ、あたふた状態。
やっと定着したと思う頃にいきなり1名転職希望。理由は給料が安いから。説得しようにもすでに本人は次の会社を決めているため、全く応じない。会社からはクレームが入り、某会社の信用は失墜。その話は銀行にも伝わり、人材サービス部の人員入れ替えと体制の見直しを命じられる。
ということです。フィクションで書きましたが、似たような事例はたくさんあります。新規参入者には一応警告はするのですが、皆さん痛い目に遭わないとわからないようで、いくら言っても聞かないんですよね。
この外国人材ビジネスに参入したい方は、まずは耳の痛い厳しいことを言う方々の話を謙虚に聞くことです。そして、外国人労働者の労務管理を実際経験してみることです。それは監理団体なり派遣会社なりに入って経験を積んで、それから参入すべきなのです。簡単に儲かると思っている方々が多すぎます。そうではありませんよ。