今日は神前結婚記念日 | さてと、今夜はどこ行く?

さてと、今夜はどこ行く?

酒場であったあんなこと、こんなこと。そんなことを書いてます。ほとんど、妄想、作話ですが。

今までに参加した結婚式で一番印象に残ってるのは?

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1900年の今日、今の東京大神宮が、神前結婚式のPRを始めたのだそう。ちなみにPRとはpublic relationsの略である。
一般大衆に対して、「神前結婚式は良いものですよー。オススメですよー」、と宣伝を始めた日らしい。
それを知ったからといって、感想は、
「へえ。」
としか言いようが無いのだが、神前結婚式、俺は二度ほど出席した。
一度目は大学の友人の結婚式、二度目は通称ぽっちゃりクンの結婚式だ。
ぽっちゃりクンの結婚式に呼ばれたのはいまだに不思議でならない。
ある飲み会の席で、飲み友のDTJ氏が、
「ちょっといいですか?」
とTRYの兄貴と俺を呼び寄せ、
「お二人に相談があるのですが、実は、ぽっちゃりクンが今度結婚することになりまして、できればお二人にも式に出て欲しいということなんですよ。」
と切り出した。
式に出ることは吝かではなかったが、
「俺が出ていいの?」
というのが率直な感想だった。
ぽっちゃりクンとはDTJ氏を通じて何度か一緒に飲んだり遊んだりしたことはあれど、二人だけで差し向って飲んだことは一度もなかったし、仕事は何をしているのかとか、どこに住んでいるのだとか、電話番号やメールアドレスすら、その時はまだ知らないような仲だった。
それは彼からしても同じことだったと思う。
恐らくに俺の事なんて、乃木坂46のメンバーの誰かほどにも知らなかったに違いない。
TRYの兄貴も俺と同じ感想を抱いたようで、
「俺なんかが出てもいいんですか?」
と、DTJ氏に訊ねていた。
「ええ、是非お二人に、ということなんで・・・」
そんなDTJ氏の言葉に、我々はお互い顔を見合わせると、目をぱちぱちさせ首を傾けた。
結局のところ、俺もTRYの兄貴も式に出席するということで合意した。
 
数日前の雪空が嘘のような、雲一つない晴天だった。
あまり出向く事の無い神宮に到着すると、中庭の隅の喫煙スペースで煙草を吸うTRYの兄貴の姿が目に入った。
手を振りながら近づいていった俺に、「すでにみんなお揃いですよ。」と、彼はニコニコ笑みをたたえながら中庭の中央を指差した。
みんな?
指先に目を移すと、今回の主賓であるぽっちゃりクンと彼の奥さんとを取り囲むまったく知らない大勢の人々の中に、DTJ氏とCPの兄貴の姿を見て取れた。
CPの兄貴も呼ばれていたのか!
俺はまたも不思議な気分になった。
兄貴も、おそらくにぽっちゃりクンとの関係は俺と似たようなものだったはずだから。
だがこれで、大勢の来賓者の中に俺が直接知っている者は、4人となった。
しかし、それだけだった。
つまり、主催者のぽっちゃりクンはじめ、DTJ氏、TRYの兄貴、そしてCPの兄貴。それだけ。
ぽっちゃりクンの奥さんすら、はじめてだった。
彼のご家族も知らなきゃ、友人も知らない。ましてや奥さんのそれらなんて、言うまでもない。
それは、DTJ氏、TRYの兄貴、CPの兄貴も同じだったようで、辺りを見渡しては、
「いやはや、なんだか、我々浮いてませんか?」
「これで、主賓とのご関係は?とか訊かれたら、ちと、説明に困りますねえ・・・」
などと言い合っては、苦笑していた。
その状況は、中庭で集合写真を撮り、場所を変えての宴の席となってもかわらなかった。
ただ、違いは、目の前においしい料理と酒が並んだことだ。
我々四人の席が同じテーブルだったことも、気を緩ませた。
誰だってそうだとおもうが、はじめて会う知らない顔に囲まれての食事より、仲良し同士顔を突き合わせての食事の方が背筋の緊張も緩むし、酒も進むってものだ。
いつしか、我々の一角は、巷の居酒屋のそれと化していた。
タイトな制服に身を包み、まるで客室乗務員のように姿勢良く颯爽と各テーブル間を行き交う会場係の女性に、ついいつものノリで、「ちょいと、姉さん、日本酒あと二合追加ね!」と空になった徳利を持ち上げ左右にブラブラと振りそうになっては、「おっといけねえ!」とハッと我にかえり、振り上げかけた手を引っ込めることがしばしばだった。
ここは居酒屋のカウンターじゃない。もっと厳粛な場なのだ。
俺は徳利を掴みかけた腕を膝の上に戻すと、ナプキンを手に取り、口を拭った。
 
それが俺を襲ったのは、ぽっちゃりクンの奥さんが、両親への感謝状を読み始めた時だった。
酔って感傷的になっていたこともあるのだろうか。
俺はいつしか涙を溢していた。
そしてそれは嗚咽へと変わった。
しかし、それは俺だけではなかった。
同じテーブルを囲む、ついさっきまで居酒屋の泥酔親爺と化していたはずの四人全員が、涙を溢し、洟を啜っていた。
感謝状が読み終えられると、我々は
「おめでとう!」
と歓声を上げ、盛大な拍手をした。
なんだか、不思議な御呼ばれだったけれど、こういう結婚式も悪くないな、と、ふと思った。
皆の拍手が終わっても我々四人は洟をすすりながら、パチパチ拍手を続けていた。


 
というのが、俺の印象に最も残る結婚式です。
 
もう5年くらい前の話だけど、ずっと書くに書けずにいた。
今日、漸くここで紹介できて、きっかけをくれた神前結婚記念日に感謝している。
ありがとねん。