パンドラのおもちゃ匣 -4ページ目

パンドラのおもちゃ匣

声劇台本などを適当に置いておく場所です。
ここにある台本は、商用以外の利用ならどこでも自由に使っていただいて結構です。
何か質問などある方は、twitterの@marion2009までどうぞ。

アクリアムの花


【設定】

アクリアムの花  どんな病気も治せるという奇跡の薬の材料。非常に高価で幻の花と言われている。
ユーリ(少年)  ミナの幼なじみで、旅の途中で出会ったライラに淡い恋心を抱いている。
ミナ(少女)  母親の病気を治すために、幼馴染のユーリとアクリアムの花を求めて旅に出る。港町で占い師から旅の危険を告げられるが旅を続け、ミナはその旅の途中何者かに殺されてしまう。
ライラ(女)  旅の途中で出会ったお姉さん。元々は貧民街の出で、今は女盗賊である。そのことは内緒にして、ユーリとミナの旅に同行。アクリアムの花を自分のものにしようと企んでいる。


ユーリ  少年
ライラ   女

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ユーリ ライラさん、あれをみてください!
ライラ  あれは…!アクリアムの花!?
ユーリ そうですよ!伝説の通り、真っ赤な葉に鮮やかな紫の花!ついに、ついに見つけたんです!
ライラ  あれが、どんな病気にも効くという伝説の花、アクリアム…。
ユーリ はい!…ミナ、ついに見つけたよ…。これでミナのお母さんも…

ユーリを後ろから撃つライラ

ユーリ え…?

倒れ込むユーリ

ユーリ ら、ライラさん、どうして…
ライラ  ふっふっふっふっふ、あーはっはっはっは。今までありがとね、ユーリ
ユーリ ライラ…さん?
ライラ  あの花はねぇ、ものすごく価値のあるものなのよ。
     それこそ、金持ちがいくら払ってでもでも欲しがるようなそんな花さ。
     それを、貧乏人の家族に使うなんてあり得ないだろ?だから、あたしが有効に使ってあげるわ。
     これをオークションに掛けたら、一体いくらになるだろうねぇ…。ふふふふふ…
ユーリ まさか、そのために今まで僕らと一緒に…
ライラ 当たり前でしょ?誰が好きこのんでお前みたいなガキと旅をするって言うのよ。
     儲け話がなけりゃ、来るわけがないでしょう!
     ま、そんなことも気づかないお子様が相手で、とてもやりやすかったわよ
ユーリ くそぅ!
ライラ  ふふ、まあせいぜい死ぬまでそこで悔しがっている事ね。アタシはあの花を手に入れて
     大金持ちになって幸せに暮らすわ。ユーリ、あなたの分までね。ふふふふ。

アクリアムの咲いているところまで歩いていって花を手にするライラ

ライラ  これが伝説の花アクリアム…。見れば見るほど美しいわ…。
     これを持って帰れば、アタシは大金持ち。もうあんな惨めな生活ともおさらばよ…。
ユーリ ライラさん…
ライラ  ん?まだ死んでなかったの?ガキのくせに結構しぶといわね
ユーリ 最後に一つ聞かせてください
ライラ  何?
ユーリ ミナを…、ミナを殺したのはあなたですか?
ライラ  そんなことを知ってどうするつもり?
ユーリ 教えてください…
ライラ  …そうよ
ユーリ !!な、なぜ…、なぜミナを殺したんですか!?
ライラ  なぜ?むかついたからよ。
ユーリ え?
ライラ  むかついたのよ!あんな本当の苦労も知らない小娘が、自分は苦労して旅してます
     みたいな顔で一緒にいるのが腹が立って腹が立ってしょうがなかったのよ!!
     母親の病気を治すため?自分の命を心配しないで暮らしていけるだけで、
     それがどれだけ幸せなことかお前らにはわからないだろう!!
     あたしはね、5歳の時にはもう自分の身一つで生きてかなきゃいけなかった。
     だから生きるためには何でもしたよ。スリ、強盗、詐欺、人殺し…。
     生きるためには何でもしなきゃいけなかった…。
     お前にわかるかい?今日生きるための食料を得るために、十にも満たない子供が
     自分の身を売っているような世界が!!アタシはね、そういう世界で生きてきたんだよ!!
ユーリ ……
ライラ ふっ、同情してんのかい?自分を殺そうとした相手を?今から死んでいく者が?
     あっはっはっはっは…。ふざけんじゃないよ!!!
     アタシはね、同情されるのが一番嫌いなんだよ!!!
     お前、自分がどれだけ上からものを見てるかわかってんのかい?
     そういう善人面した偽善者どもが一番むかつくんだよ!!!あのミナだってそうさ!!!
     …ふっ、…さ、無駄話もここまでさ。じゃあね、ユーリ。

その場を立ち去ろうとするライラ。すると後ろからユーリがライラの銃を持つ手を撃つ

ライラ  うあ!!あああ!!て、手が…あぁぁ…
ユーリ ライラさん
ライラ  ユーリ!な!なぜ!?胸を撃たれてなぜそんな平気な顔をしていられるの?
ユーリ これですよ
ライラ  そ、それは!鎖かたびら!?騙したのかい!?
ユーリ ライラさんはいつも携帯しやすいように口径の小さい銃を持ってた。だから、
          これで防げると思ってずっと着ていたんです
ライラ  ユーリ、まさかお前、初めから気づいていたというの?
ユーリ あなたと出会う前、ミナと立ち寄ったある港町で占い師に声を掛けられたんです。
     その占い師はこう言いました。これから出会う仲間にいつか裏切られると…。
     でも僕たちはそんな言葉は信じていなかった。あなたと出会ってもそんなことは思わなかった。
     ミナが何者かに殺されるまでは…。ミナはあなたのことを信じていた。それはボクも同じです…。
     でも、ミナは死んだ。何者かにズタズタに切り裂かれて!!正直信じたくはなかった。
     いや、ついさっきまでどうしても信じることが出来ないでいた。それなのに…
ライラ  ふっ、ドジをふんじまった様だね…
ユーリ ライラさん、ボクはあなたをどうしていいかまだ決めかねています
ライラ  どういうことだい?まるでアタシの命をユーリが握っているような言いぐさだね
ユーリ そうです。今ライラさんの命はボクの手の中です
ライラ  そうかい…。じゃあ、試してみるかい!!

落ちている銃に向かって走ろうとするライラ。しかしすぐにユーリがライラの足を撃ち抜く

ライラ  ぎゃああああ!!!あ、足があああぁぁぁぁ!!!
ユーリ ほら、もう走って逃げることも出来ませんよ
ライラ  くそう!!こんなガキに!!こんなガキにアタシが!!!
ユーリ さあ、その手に持っているアクリアムの花を渡してください。
     その花を渡してもらえれば、命だけは助けてあげますから
ライラ  これは…これはアタシんだ!!これがあれば、もうあんな家畜のような生活を
     送らなくていいんだ!!これは、アタシが人として生きていくために必要なものなんだよ!!
     絶対に渡さない…。お前なんかには絶対に渡さないよ!!!
ユーリ そうですか…

ライラの胸を撃ち抜くユーリ。ライラはその場にアクリアムの花を落とす

ライラ  うあっ!!ああぁぁ…はあはあはあ…
ユーリ じゃあ、勝手にもらっていきます
ライラ  やめて…。それは、アタシのなの…。お願い…、持って行かないで…
ユーリ あなたが生きてきた世界では、これは当たり前のことなんでしょ?
ライラ  いや…、お願い…、ぐふぅ…(血を吐く)
ユーリ ライラさん…
ライラ  アタシの…アタ…シの…なの…
ユーリ …もうそんな姿見せないでよ
ライラ  ユー…リ…
ユーリ ライラさん!ボクは…あなたのことが…好きだったんだ…
ライラ  ……ふふ…
ユーリ ライラさん!!!

ライラの頭を撃ち抜く。その場に倒れるライラ。

ユーリ ……ライラさん…うわあああああおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!

ユーリ(モノ) ミナのお母さんの病気は治った。けれどミナが亡くなったことを知ったお母さんに、
     以前のような明るさは戻らなかった。別名悪魔の花と言い伝えられるアクリアムの花。
     手に入れるために失ったモノを考えると、ただの言い伝えではないのかも知れない。




もしもあなたが傷ついていたら



もしもあなたが傷ついていたら

誰かに助けを求めてください

もしもあなたが困っていたら

誰かに助けを求めてください

もしもあなたが弱っていたら

誰かに助けを求めてください


助けを求める相手に迷ったら

わたしに助けを求めてください

あなたの力になれるかはわからないけれど

あなたの助けを拒否することはありません

わたしはあなたを受け入れます


助けを求めることは悪い事じゃない

お節介を焼く人を拒否する事も悪い事じゃない

逃げ出すことも悪い事じゃない

色んなことを悪く捉えてしまうのも悪い事じゃない


自分であることを放棄しないで

この世に生を受けた瞬間から

あなたの存在は許されています

だから

『自分』を殺してしまわないで

あなたがあなたであるから

あなたを素敵だと思うのです

あなたがあなたであるから

世界はこんなにも素敵なのです


素敵な願い事



(園崎)司 (10歳)  真面目で優しく、普段はどちらかというと大人しい感じ。たまに目がキラッ。

由美 (14歳)     司のお姉ちゃん。明るく活発な女の子。きつい感じもあるが本当は優しい。

お父さん (38歳)   司のお父さん。ちょっとさえない感じ。でも優しくて、みんなに好かれてる。

お母さん (36歳)   司のお母さん。ほんわかした優しい母親。お父さんが大好き。

謎のおじいさん (70歳くらい)  ただのおじいさん?とんでもねえ。あたしゃ神様だーよ。

ロック (年齢不明)  ランプの精。元々は天使だったのが、罰としてランプの精にされている。


  学校のチャイム。 帰り道。「じゃあね」等、別れの声。 司の足音。

おじいさん 「ちょっと、坊や。」

司      「?」

おじいさん 「そう。坊や。坊やの事だよ。」

司      「僕?」

おじいさん 「そうさ。ちょっと、こっちにおいで。」

司      「え?」

おじいさん 「大丈夫。怖くないから。坊やに良いものをあげようと思ってね。」

司      「良いもの?」

おじいさん 「そう。良いもの。」

司      「何?」

おじいさん 「これだ。」

司      「これ・・・何?」

おじいさん 「魔法のランプさ。」

司      「魔法のランプ?」

おじいさん 「そう。これにはランプの精というのが住んでいて、

        何でも願いを叶えてくれるんだよ。」

司      「ホント?」(目を輝かせながら)

おじいさん 「本当さ。いいかい。このランプを、こうやって擦ると・・・。」(ランプを擦る音)

   モアモアモア、ボーン・・・みたいな、ランプの精が出てくる音。

ロック    「ふあ~ぁ。(欠伸)まったく、つまんねぇテレビしかやってねぇなあ。

        ・・・ん?あれ?もしかして、俺、呼ばれた?」

おじいさん 「こら、ロック!いつもいつも、昼間っからだらけてるんじゃない!」

ロック    「ったく、うるせぇなあ、じじい。 ん?何だ?このガキ。」

おじいさん 「お前の新しい持ち主。つまりご主人様だ。」

ロック    「こいつが?新しいご主人?」

おじいさん 「すまないねえ。ちょっとばかし口は悪いが、勘弁してやってくれ。」

司      「ロックって言うの?」

ロック    「ん?」

司      「名前・・・。」

ロック    「そうだ。俺様はロックだ。お前は?」

司      「え?僕?・・・司。園崎司。」

ロック    「そっか。ま、短いつき合いだとは思うが、よろしくな。」

司      「・・・うん!」

おじいさん 「じゃあ、ロック。お前は一旦中に入りなさい。」

ロック    「あいよ。じゃあ、また後でな、司。」

司      「うん。またね。」

   ヒュルヒュルヒュル、ポン・・・みたいなランプの精が中に戻る音。

おじいさん 「どうかな?気に入ってくれたかい?」

司      「うん!あ・・・でも・・・。」

おじいさん 「どうしたんだい?」

司      「僕、お小遣い、あんまり無いから・・・。」

おじいさん 「何だ、そんな事かい。始めに言っただろ?良いもの『あげる』って。」

司      「ホント?良いの?」

おじいさん 「ああ、本当だとも。だから、大切にしておくれ。」

司      「うん!」

おじいさん 「じゃあ、あんまり遅くなるとお母さんが心配するから、早くお帰り。」

司      「ありがとう。おじいちゃん。」   走り出す音。

おじいさん 「気をつけて帰るんだよ~。」(遠くへ)

司オフ   「ばいば~い。」


  司の家。司の部屋。

由美     「で、これがその、もらってきたランプ?」

司      「うん!」

由美     「ふ~ん。・・・何か、きったないね。」

司      「でも、魔法のランプなんだよ!」

由美     「これが・・・。」

司      「お姉ちゃん、何かお願い事ある?何でも言って。」

由美     「そうねえ・・・。司の妄想が早く治るように、かな。」

司      「何それ。」

由美     「だって、ランプの精なんているわけ無いもの。

        司ももうすぐ五年生になるんだから、いい加減そういうの卒業しなよ。」

司      「いるもん!僕見たもん!」

由美     「だから、それを妄想って言うのよ。」

司      「じゃあ、お姉ちゃんにも見せてあげるよ。お願い。ロック、出てきて。」(擦る音)

由美     「そんな事したって、何も出てくるわけ・・・。」

ロック    「残念!ところが、本当に出てきちゃうんだなー、これが。」

由美     「え?え?な、何、これ?」

ロック    「オッス、オラ妄想。よろしくな。」

司      「ロック!」

ロック    「よう、司。中で聞いてて、あまりに腹立ったから、こっそり登場してやったよ。」

由美     「え・・・?もしかして、本当に・・・?」

ロック    「そのとおり。俺様がランプの精、ロック様だ。あ、頭がた~か~い~。」

司&由美  「はは~。」

由美     「って、何させるのよ!司も!頭下げてないで。あんた、主人なんでしょ?」

司      「う、うん・・・。」

由美     「とりあえず、何か願い事してみなさいよ。」

司      「え?願い事?」

由美     「そうよ。ランプの精が本当だとしても、願い事が叶うかどうか、

        やってみなけりゃ わからないでしょ?」

司      「そうだけど・・・。」

ロック    「そうそう。最初に言っておくが、願い事は全部で三つだ。

        ひとつ前の願い事を無しにするのにも、願い事をひとつ消費する。

        願い事の数を増やす願いは聞けない。

        世界規模で大きな混乱を招く願い事も駄目だ。」

由美     「ねえ。」

ロック    「何だ?」

由美     「もしかして、三つの願いを叶えたら、代わりに魂を頂く、とか・・・。」

ロック    「アホか、お前。漫画の読み過ぎだ。」

由美     「な、何よ!あんたの存在自体が漫画でしょうが!」

ロック    「三つの願いを叶えたら、ランプと一緒に俺はいなくなる。

        その時に、 俺に関する記憶だけ消させてもらうが、別に命を取ったりはしねえよ。」

由美     「何か、あやしいわね。」

ロック    「うるさい、ボケ!だったら願い事すんな。」

由美     「な、何ですって~!」

お母さんオフ 「由美~、司~、ご飯にするわよ~。」

由美     「は~い!(母に)とりあえず、ご飯にするよ。ほら、それしまって。」

ロック    「ご飯?俺の分もあるのか?」

司      「え?あ、ごめん・・・。」

由美     「あんたの分なんてあるわけ無いでしょ。

        何でも願い事を叶えられるなら、自分でごちそうでも何でも出せばいいじゃない。」

ロック    「・・・出来ねえんだよ。」

由美     「え?」

ロック    「他人の願いは叶えられても、自分の願い事は叶えられないんだよ!」

司      「・・・そうなの?」

ロック    「・・・そうだよ。何か文句あるか!」

司      「そっか・・・。ごめんね。」

ロック    「何で、お前が謝るんだよ。」

司      「え?何となく・・・。」

ロック    「へっ!同情なんてまっぴらだよ。」

   部屋のドアが開く音。

お母さん  「ちょっと、由美、司。お父さんも待ってるんだから・・・。」

ロック    「おう。今行く。」

お母さん  「キャ~~~!か・い・じゅ・う・・・。」(お母さん、倒れる音)

由美&司  「お母さん!お母さん?お母さん!ねえ、お母さん!」(徐々にオフ。)

ロック    「怪獣って・・・。せめて、悪魔とか言ってくれ。」(前の台詞に被って)


  居間。

お母さん  「本当にごめんなさいね。ビックリしちゃったものだから。」

ロック    「良いって。うまいメシもご馳走になったし、もう気にしてねえから。」

お父さん  「しかし、え~と・・・。」

ロック    「ロックだ。」

お父さん  「ああ、ロックさん。あの・・・、本当に、あの有名なランプの精なんですか?」

ロック    「物語に出てくる奴は俺じゃねえ。ありゃ別の奴だ。」

お父さん  「別の?」

ロック    「そう。本来俺達は、願い事を全て叶えたら、俺達に関する記憶を全て消さなきゃならない。

        つまり、俺達に関する記録も伝承も残ってちゃいけねえんだ。

        それなのに、そういう物が残ってるって言う事は、どっかのドジがミスったって事だ。」

お父さん  「なるほど。ホテルの消し忘れビデオみたいなもんか・・・。」

司      「消し忘れビデオ?」

お母さん  「あなた!」

お父さん  「あ、いや、その・・・、はははは。」

由美     「ねえねえ、とりあえず何かお願いしてみたら?」

お父さん  「そ、そうだな。そうしよう。母さんは何が良い?」

お母さん  「もう。・・・そうねえ、庭付き一戸建てが欲しい、なんてどうかしら?」

由美     「え~、そんなお願い叶うの?」

ロック    「失礼な。俺様に不可能な事は・・・あまり無い。」

由美     「ほら、駄目じゃん。」

ロック    「誰が出来ないと言った!その願い事は可能だ。」

お母さん  「本当ですか?」

ロック    「ああ、本当だ。・・・だが、ママさん。庭付き一戸建てを手に入れる事は出来るが、

         いきなりそんなものを手に入れたら、ご近所さんがあやしく思うが良いのか?」

お母さん  「え?」

ロック    「国税局やら何やらが来て、色々調べられたりするかもしれないが良いか?」

お母さん  「それは・・・ちょっと・・・。」

由美     「そこら辺も何とかしてよ。」

ロック    「それは別の願い事になる。」

由美     「けち。」

ロック    「二つ目の願い事で、万事解決すればいいが、もし三つ目の願い事をしても問題が

        残ったら、それは自力で解決するしか無くなるが、それでも良いか?」

お母さん  「・・・違うお願いにします。」

ロック    「そうか。」

由美     「じゃあ、お父さんを昇格させて、給料をアップさせたらどうかしら?」

お母さん  「あら、由美。言い事言うじゃない。ロックさん。家の主人を、会社の・・・

         社長とまで言わないけど、重役クラスにしてもらえないかしら。」

お父さん  「おいおい、母さん。」

ロック    「ママさん。非常に言いにくい事なんだが・・・。」

お母さん  「無理・・・かしら?」

ロック    「いや、無理じゃねえ。無理じゃねえんだが、あまりお薦めはしないなあ。」

由美     「どうしてよ?」

ロック    「うん。今現在のパパさんの仕事の能力を考えると、重役はちょっと・・・。

        仕事の重積に押しつぶされて、蒸発もしくは自殺なんて事になったら困るでしょ?

        せめて、課長くらいに留めておいた方が良いと思うけど・・・。」

司      「お父さん・・・。」

お母さん  「そ、そうねえ。それくらいがちょうど良いかも。じゃあ、課長でお願い。」

ロック    「よし、わかった。じゃあ司。」

司      「何?」

ロック    「『何?』じゃねえ。俺の主人はお前なんだから、

        お前が願い事を言わねえと駄目なんだよ。さ、早く願い事を言え。」

司      「そっか。うん。じゃあ・・・、うちのお父さんを課長に昇進させてください。」

ロック    「あいよ!お願い一丁入りました!ありがとうございます!それでは、参ります。

         あ、ビビンバ・ビビンバ・トムヤンクン、ビビンバ・ビビンバ・トムヤンクン

         もうすぐもうすぐ、もうすぐ半分こ~~!・・・・・・はい、来ました。」

由美     「え?終わり?・・・っていうか何、今の?」

   電話のベルが鳴る。

お母さん  「あら、誰かしら?(電話に出る)はい、もしもし、園崎です。

        ・・・・・・はい、少々お待ちください。あなた!」

お父さん  「ん?何だい?」

お母さん  「部長さんから電話よ!」

お父さん  「え?部長から?・・・はい、お電話代わりました。・・・・・・はい。・・・・・・はい。

         ・・・え? 私が?本当ですか?・・・・・・はい。

         いえ、是非とも頑張らせて頂きます。・・・・・・はい。

         わざわざお電話ありがとうございました。はい。それでは、失礼いたします。はい。」

お母さん  「ねえ、何だって?」

お父さん  「・・・課長に昇進だって。」

由美     「え!本当?」

お父さん  「ああ。まだ公式な発表前だが、決定したから報告しておくって。とりあえず明日から

         課長代理として働いて、次の人事で正式に課長に昇進だそうだ。」

ロック    「・・・何だ?(視線を感じて)とりあえず、課長代理にしたんだが、それじゃ駄目か?」

お母さん  「ロックさん、ありがとうございます!」

お父さん  「本当に、あのランプの精だったんですね!感激です!」

ロック    「え?そ、そうか?まあな。」

司      「すごいよ、ロック!」

由美     「あんた、やるじゃない。見直したよ。」

ロック    「なあに、これくらい大したことじゃねえよ。

         お前こそ、よく見るとママさん似で 結構美人じゃねえか。」

お母さん  「あら、嫌だ。あたしに似て美人だって。」

みんな (笑い)

ロック    「よ~し、調子乗ってきたぞ!この調子で後二つも、バンバン行っちまおうぜ!」

由美     「ねえねえ、じゃあ次、あたしがお願いしても良い?」

司      「うん、良いよ。どんなお願い事?」

由美     「えっと・・・。」(モジモジしている)

ロック    「何だよ、男らしくねえな。スパッと言っちまえよ。」

由美     「うるさいわね。ちょっと司・・・。」

司      「何?」

由美     「あのね・・・。」

司      「・・・お姉ちゃんの好きな人に、好きな人がいるか聞きたい?」

由美     「あ~!ちょっと、声が大きい!」

お父さん  「何だ、由美、好きな子がいるのか?」

お母さん  「由美だってお年頃だもんね。」

由美     「良いでしょ。早く答えてよ。」

ロック    「何だよ。そんな事でいいのか?そんな事くらい・・・。」

由美     「・・・どうしたの?」

ロック    「・・・やっぱ無理だわ。」

由美     「え?何で?どうして?」

ロック    「どうしてって・・・、どうしてもだ。」

由美     「何でよ。出来ない事はほとんど無いんじゃなかったの?」

ロック    「うるせえな。世の中には、知らない方が良い事もあるんだよ!・・・あ。」

由美     「・・・何よそれ。どういう意味?」

ロック    「いや、その・・・。」

由美     「もしかして・・・。」

ロック    「・・・・・・。」

   由美、駆け出す音。ドアを開け去っていく。

お母さん  「由美!」

司      「お姉ちゃん!」

ロック    「・・・しょうがねえだろ。嘘は吐けねえんだから。」

お父さん  「・・・ロックさん。」

ロック    「ん?」


  由美の部屋。  (優しい音楽を入れてください)

  由美が泣いていると、部屋のドアをノックする音。

由美     「・・・なに。」

お母さん* 「お母さんよ。・・・入って良い?・・・・・・入るわね。」(扉越し)

   お母さんがドアを開けて入ってくる。

お母さん  「由美・・・。」

由美     「お母さん・・・。」

お母さん  「あのね、お母さんの初恋もね、由美と同じくらいの歳だったの。」

由美     「え・・・?」

お母さん  「同じ中学のひとつ先輩で、とっても格好良かったのよ。

        頭も良くて、運動も出来たし。みんなの憧れの先輩だったわ。」

由美     「・・・うん。」

お母さん  「でも、当時のお母さんは、地味でパッとしない子だったの。

        だから、すごい努力したわ。勉強も運動も、もちろん、お洒落もね。

        ・・・結局お母さんは勇気が無くて告白出来なかったけど、でも良かったと思ってる。

        その人がいたからお母さんは変われたの。女の子はね、そうやってたくさん恋をして

        少しずつ綺麗になっていくものなのよ。」

由美     「お母さん・・・。」

お母さん  「だから、由美もたくさん恋をして、少しずつ綺麗になっていけばいいの。

        そうすれば、いつかお母さんにとってのお父さんみたいな人に巡り会えるから。」

由美     「・・・うん。・・・でも、あたしはお父さんよりもっといい人見つけるんだから。」

お母さん  「あら、お父さんだって、いい男よ。」

二人 (笑い)

お母さん  「元気出た?」

由美     「うん。ありがと。」

お母さん  「お礼はお父さんと司に言って。」

由美     「お父さん達に?」

お母さん  「お父さんが、二つ目の願いで『由美を元気にして欲しい』ってお願いしたの。」

由美     「お父さんが・・・?」

お母さん  「そうよ。だから、ね。」

お父さん* 「お~い、由美。コーヒー入れたけど、飲むか?(伺うように)」(扉越し)

お母さん  「(笑み)ほら。」

由美     「うん・・・。今行くから、ちょっと待ってて~。(扉の向こうに)」

お父さん* 「わかった・・・。あ、別に急いで来なくても大丈夫だからな。」(扉越しに)

由美     「は~い。(扉の向こうに)」

お母さん  「じゃあ、待ってるからね。」

由美     「うん・・・。ありがと。」

   (音楽フェードアウト)


  居間。

ロック    「よし、じゃあ最後のお願い事は何だ?」

司      「ねえ、その前に聞いても良い?」

ロック    「ん?何だ?」

司      「何でロックは人の願い事を聞いてくれるの?」

由美     「あ、それはあたしも気になる。願いを叶えると、あんたに良い事でもあるわけ?」

ロック    「それは・・・、まあ別に内緒にしなきゃいけないって訳でもねえから、良いか。

        実はな、俺達は、元からランプの精って訳じゃねえんだ。」

司      「え?それじゃあ、何なの?」

ロック    「まあ、簡単に言うと、悪い事をした天使が罰としてなってるって感じだ。」

由美     「あんた一体何したのよ。」

ロック    「うるせえ。それは今いいだろ。んで、色んな人の願いを叶えてやって、

        世界で一番素敵な願い事を叶えてやると、許してもらえて

        また天使に戻れるって寸法さ。」

司      「へ~、そうなんだ。それで、世界で一番素敵な願い事って?」

ロック    「それがわかりゃ苦労はしねえっての。」

司      「そっか・・・。」

ロック    「だから、何かとびっきり素敵な願い事を言ってくれ。」

司      「ねえ、何だと思う?」

お母さん  「そうねえ・・・。」

お父さん  「素敵な願い事かぁ・・・。」

みんな    「う~ん・・・。」

由美     「・・・あ~、もう!考えてたってわかんないよ。司、あんた決めな。」

司      「え?僕?」

由美     「そうよ。あんた、自分の願い事、一つもして無いじゃない。」

お母さん  「あら、そういえば。」

お父さん  「司は、何か願い事は無いのか?」

司      「僕は・・・。そうだ!一つだけ。」

お父さん  「何だい?」

司      「あのね・・・。」

由美     「・・・え?そんな事なの?」

お母さん  「お母さんは良いと思うわよ。」

お父さん  「司がお願いしたいなら良いんじゃないか?」

由美     「・・・まあ、司が良いって言うなら、あたしも、別に良いけど・・・。

        でも、それって出来るのかな?」

ロック    「何だ何だ、どうした?決まったのか?決まったなら早いとこ言ってみな。」

司      「うん。あのね。ロックを元の天使に戻して欲しいの。」

ロック    「へ?・・・俺を?天使に?」

司      「・・・無理、かな?」

ロック    「いや、つーか、お前、これが最後の願いだぞ?」

司      「うん。でも、僕別に願い事ないし。」

お父さん  「もう、二つも願い事を叶えてもらったし。」

お母さん  「大きな願い事を言って、しわ寄せが来ても怖いしね。」

由美     「それに言っちゃ悪いけど、あんたのした事ってよく考えたら、

        あんたに頼らなくても時間さえあれば可能な事ばかりな気がするのよね。」

ロック    「う・・・。」

司      「だから、最後の願いはロックにお礼がしたいの。・・・出来る?」

ロック    「司、お前・・・。よーし、わかった!ランプの精、伊達に三千年もやっちゃいねえぜ!

        お前のその望み、しかと受け取った!俺の命に代えても叶えてやるぜ!じじい!」

おじいさん 「何だ?」

お父さん&お母さん&由美 (驚く)

司      「あ、ランプをくれたおじいさん!」

ロック    「おい、じじい。聞いてただろ?こいつの願いだ。俺は天使に戻るぜ!」

おじいさん 「うむ。この子の願いとあればいいだろう。天使に戻るがよい。」

司      「やったぁ!良かったね、ロック。」

ロック    「おう!」

お母さん  「素敵な願い事って・・・。」

お父さん  「そういう事だったんだね。」

おじいさん 「司君。こんな馬鹿者の為に、貴重なお願い事を使ってくれてありがとう。お礼に、

        この願い事は私が叶えてあげるから、もう一つ最後のお願いを言ってごらん?」

司      「え?でも、僕、他にお願い事なんて・・・。」

ロック    「おう、司。遠慮なんてする事無いぞ。何でも言ってみな?」

司      「う~ん。でも、本当に特に無いから・・・。

         あ、そうだ!ロックとの記憶を消さないで欲しい。」

ロック    「司・・・。」

おじいさん 「う~ん。それは本当はいけないんだが・・・。わかった。」

司      「ありがとう、おじいさん。」

おじいさん 「よし、じゃあロックよ。元の天使の姿に戻るがよい(エコーかけて)」

   姿が変わる、何某かの効果音。

お父さん  「おお。」

お母さん  「まあ。」

由美     「綺麗。」

司      「わあ。」

ロック    「よっしゃー!天使ロック様、完全復活だー!って、痛っ、てててて!何だこりゃあ!

        輪っかが頭に巻き付いてるじゃねえか!いててて!し、閉まる、いててててて~!」

おじいさん 「天使に戻ったからには、汚い言葉遣いは直してもらわんとな。」

由美     「何あれ?孫悟空みたい。」

ロック    「くっそー、じじい!覚えてろ!いてててて~!」

みんな (笑い)

司      「じゃあ、ロック。」

ロック    「おう。短い間だったが、世話になったな。」

司      「・・・元気でね。」

ロック    「・・・お前もな。」

おじいさん 「さて、行くとするか。」

ロック    「おう。」

   窓を開ける音。羽ばたく効果音。去っていくロック達。

司      「・・・・・・。ロック~!ありがとう!僕、楽しかったよ!ロックといて楽しかった~!」

ロックオフ  「おう!司~!俺も、結構楽しかったぞ~!」

   完全に姿が見えなくなる。

由美     「行っちゃったね・・・。」

司      「・・・・・・。」

由美     「司・・・。あれ?これって・・・。」

司      「ロックの羽だ!」

お母さん  「まあ、天使の羽?」

お父さん  「きっと、ロックからのプレゼントだよ。」

由美     「良かったね、司。」

司      「うん・・・。」


  終わり

企業戦士 ガンバルダー  第三話 後編



香取 真太郎    (27歳 男)
香取 桜       (6歳  女)
藤原 剛輝      (48歳 男)
真宮寺 美鈴   (29歳 女)
真鍋 優衣     (23歳 女)
竹中 源三     (61歳 男)
結城 隼人      (18歳 男)
ニューキャラクター
森崎 健作    (29歳 男)
〈ゲストキャラクター〉

アルベルト・フォン・ブラウン (35歳 男)

フェイバリー    (当時29歳 男)

(チョイ役)
看護師        (性別不問)

第三話 世界の中心で愛を叫ぶ美鈴! 後編


〈コックピット前〉

アルベル「あばよ。」

〈格納庫〉

SE 銃を撃つ音。(オフ)

真太郎 「!何だ?今の音!」

優衣   「美鈴さん達の方から聞こえたみたい・・・。まさか!」

真太郎 「行ってみよう!」

優衣   「はい!」

   走る二人。

真太郎 「美鈴さーん!」

優衣   「美鈴さーん!どこですかー!」

SE ロボットの歩く音。

真太郎 「あ、あれは・・・?」

優衣   「あれは、バルダー四号機、エクスバルダー。美鈴さんの機体です。」

真太郎 「じゃあ、あの中に美鈴さんが?」

優衣   「ええ、多分・・・。でもさっきの音は・・・。」

真太郎 「・・・・・・。ん?あ!優衣ちゃん。あれ!」

優衣   「美鈴さん!」

   駆け寄る二人。

真太郎 「美鈴さん、大丈夫ですか?しっかりして!」

優衣   「ああ、肩から血が・・・。」

美鈴   「うぅ・・・。」

真太郎 「美鈴さん!」

美鈴   「だ、大丈夫。急所は外れてるから・・・。」(以降、美鈴はケガの痛みを我慢しているように)

真太郎 「大丈夫じゃないですよ。優衣ちゃん、医務室に連絡を。」

優衣   「はい。」

美鈴   「待って!・・・私をガンバルダーのところまで連れて行って。」

真太郎 「何言ってんですか。早く手当てしなきゃ・・・。」

美鈴   「アルベルトを・・・、エクスバルダーを捕まえなきゃ・・・。」

優衣   「美鈴さん、後はあたし達に任せて・・・。」

美鈴   「私がやらなきゃいけないの!・・・私が・・・、うぅ・・・。」

真太郎 「・・・わかりました。」

優衣   「真太郎さん!」

真太郎 「その代わり、俺も一緒に同乗させてください。もし途中で俺が、これ以上は無理だと
      判断したら、その時は戻ってもらいますよ。」

美鈴   「わかったわ。じゃあ、早く連れてって。」

真太郎 「優衣ちゃん、医務室に手配を頼む。」

優衣   「真太郎さん・・・。」

真太郎 「大丈夫、必ず無事に帰ってくるから。」

優衣   「わかりました。美鈴さんの事お願いします!」(途中から駆け去る)

SE 走り去る音。

真太郎 「さあ、行きましょう。」


〈アークセプター施設外部〉

SE ロボットの歩く音。オンからオフ気味に。(ロボ内へ) *は電話のような声

アルベル「飛行能力は無しか・・・。まあこの分なら、一時間もあれば仲間のところまで戻れるか。」

結城*  「聞こえるか?」

アルベル「誰だ!」

結城*  「貴様に答える必要はない。良いか、よく聞け。貴様が乗っている機体は我々のものだ。
       今素直に投降すれば、腕の一本で勘弁してやる。だが、もし逃げようとすれば・・・、
       法廷で口をきく事もままならない身体にしてやる。」

アルベル「ありがたい申し出だが、ここで投降すれば、それこそ俺は軍部に殺される。
       捕まるわけにはいかないんだよ。」

結城*  「そうか。交渉決裂だな。」

SE 銃撃音(ロボ)

アルベル「くっ!どこから撃って来やがる!くそっ!落ち着け。まずは身を隠さないと・・・。
       ステルス・・・、ステルス機能・・・、これか!」(説明マニュアルをめくる音)

SE ステルス機能が作動する『ヴーン』もしくは『シュー』というような音。

結城*  「くっ、ステルスか。」

アルベル「フッフッフ。これで俺の位置は掴めなくなったようだな。こちらのレーダーに映らない
       位置からの射撃・・・。貴様の機体はトライバルダーとやらか?これは良い土産が出来た。
       貴様を引きずり出して、その機体も頂いていこう。」

結城*  「面白い冗談だ。楽しみに待っているよ。」

結城    「・・・とは言ったものの、エクスバルダーが相手か・・・。相性は最悪だな。
       あまり接近される前に勝負を決めないと。・・・美鈴。」

(回想)
優衣* 「結城君?今、彼の乗ったエクスバルダーが逃走しました。捕獲お願いします。」

結城   「了解した。」

優衣* 「あの・・・。」

結城   「何だ?まだ何かあるのか?」

優衣* 「美鈴さんが、ガンバルダーで追いかけてます。」

結城   「美鈴が?それで?」

優衣* 「あの!・・・美鈴さん、彼に肩を撃たれたみたいで・・・。」

結城   「何!そんな身体で?なぜ止めなかった!」

優衣* 「止めたけど!・・・でも、どうしても自分が行くって・・・。」

結城   「くそ!何考えてんだ。」

優衣* 「だから、お願い。・・・美鈴さんを早く医務室に連れて行って欲しいの。」
(回想終わり)

結城   「・・・どちらにせよ、早期決戦か。」


〈医務室〉

優衣   「それじゃあ、受け入れ準備をお願いしますね。」

看護師 「分かりました。」

SE 真太郎が走ってくる音。

真太郎 「優衣ちゃーん!」

優衣   「真太郎さん!どうしたんですか?美鈴さんは?」

真太郎 「それが、コックピットまで連れて行ったら・・・。」

(回想)
真太郎 「おいしょ、ふう。(美鈴をコックピットに座らせる)大丈夫ですか?

      やっぱり、俺が操縦した方が・・・。」

美鈴   「香取君、ありがと。・・・ごめんね。」

真太郎 「え?何ですか?うわっ!(真太郎を押してコックピットの外に出す)
      いてて・・・。ちょっと、美鈴さん。何を・・・。」

SE コックピットの閉まる音。

真太郎 「美鈴さん?美鈴さん!開けてください、美鈴さん!」
(回想終わり)

優衣   「それじゃあ、一人で行ってしまったんですか?」

真太郎 「ああ・・・。それで、この間優衣ちゃんが乗ってた機体で追いかけられないかと思って。」

優衣   「バルイーグルですか?あれはまだ修理中で・・・。」

真太郎 「そうか・・・。」

源三   「なら、パンサーに乗っていくといい。」(歩いて来ながら)

真太郎 「源さん!」

源三   「陸戦ならパンサーの方が適しているしな。」

優衣   「完成したの?」

源三   「わしを誰だと思ってるんだ?さっき調整は済ませといたわい。」

真太郎 「さすが源さん!頼りになります!」

源三   「まあな。それより早く行った方がいい。

      美鈴も心配だが、あのくそガキもやばいかもしれんからな。」

優衣   「結城君なら大丈夫だと思うけど・・・。」

源三   「甘いな。確かにあいつは天才かもしれん・・・。だがな、訓練と実際の命のやりとりでは
      天と地ほどの差がある。第一、トライバルダーとエクスバルダーの相性は最悪だ。

      あのくそガキとて、無事でいられる保証なんぞ無い。」

真太郎 「・・・行こう、優衣ちゃん。」

源三   「若造!・・・無茶はするなよ。みんな無事に帰ることが、最優先だからな。」

真太郎 「分かってます!必ずみんな無事に帰ってきます!」(徐々にオフ)

SE 真太郎と優衣が走り去る音。

源三   「・・・頼んだぞ、香取。」

健作   「なんか、大変な事になってるみたいですね。」(歩いて来ながら)

源三   「お、お前は・・・!」


〈アークセプター施設外部〉

SE 体当たりの音(ロボ)。もしくは銃撃音。

結城   「うわあぁ!」

アル* 「あはははは。どうした?天才って聞いてたが、大したこと無いな。
      所詮ゲームの中でしか力を出せないお子様ってことか。」

結城   「くそ!こんな馬鹿な!いくらこちらの方が不利な機体だからって、一方的にやられる
      なんて・・・。それに、初めて乗る機体にこうも順応出来るものなのか?」

アル* 「だから甘いって言ってんだ。俺たちは出来るかどうかの世界じゃない。出来なきゃそれが
      死に直結なんだよ。泣き言言ってる暇があったら、生き残るための方法を考えろってな。
      安全なところで計算だけの勝負をしてる奴に、負けるわけにはいかないんだよ。
      ・・・さあ、死にたくなかったらその機体から降りろ。俺も、出来ることならそいつを
      無傷で手に入れたいからな。」

結城   「くそ・・・。」

SE 拡散銃の銃撃音(ロボ)。

アルベル「うお!何?」

美鈴* 「そこまでよ。」

アルベル「まさか・・・!」

結城* 「美鈴!」

美鈴* 「アルベルト・・・。あなたは決してやってはいけない事をした・・・。仲間を裏切り、
      あの人を死に追いやったあなたを、私は決して許さない。死をもって償いなさい!」

アルベル「ふっふっふ。そんな体で何をいきがってる。・・・本当に鬱陶しい奴だよ、お前は。
       今度こそ、ちゃんとあの世に送ってやるよ!」

SE ステルス機能の音。

結城* 「くそ!またステルスか!」

アルベル「ふははは。見えない恐怖というのを、たっぷりと味わうんだな。」

結城* 「美鈴!」

美鈴* 「自分の機体の弱点も知らないで、パイロットが務まると思っているの?」

アルベル「何?」

美鈴* 「あなたはすでに裸も同然よ。」

結城* 「あれは、磁気微粒子?そうか!電磁波を放つ微粒子を付着させる事で、
      やつの機体をレーダーに映し出すことが可能になる。」

アルベル「さっきの一発はこの為の・・・!」

美鈴* 「ゲリラ屋がゲリラ戦のやり方を忘れるようじゃお終いね。」

アルベル「くっ、ならば!真正面から蹴散らすまでのことよ!」

SE ロボット走り寄る音。

美鈴   「だから、それはゲリラ屋のやり方じゃないって言ってるでしょ。」

SE 銃を構える音。(ロボ)エネルギー充填音。

美鈴   「行くわよ。結城君、離れて!」

SE 花火のような、発射後拡散するような音。

アルベル「なんだ?うわ!」

SE 小さい爆発複数。ショート(放電)しているような音。

アルベル「く、くそ!動かない!なんなんだこれは!」

美鈴* 「あなたの機体に付着した磁気微粒子に、少しエネルギーをあげたの。
      関節部分に入り込んだ磁気微粒子は、コードを焼き切りショートさせる。
      ・・・捕獲っていうのはこうやるのよ。」

アルベル「っくぅ・・・。」

美鈴* 「さ、覚悟はいい?アルベルト。仲間を、あの人を裏切ったあなたを私は絶対に許さない。」

アルベル「ま、待ってくれ、美鈴!・・・仕方がなかったんだ!こうするしか・・・。
       俺が小さい頃に親父は戦争で死んじまって、病気のお袋と幼い弟や妹を
       俺が養わなけりゃならなかった。でも・・・、あの国にはまともな職なんか
       一つもありゃしない。だから・・・。」

美鈴* 「だから、スパイになった。」

アルベル「そうだ。お前だって知ってるだろ?イスタニアの実状を。・・・俺たちはただの家畜さ。
       偉い奴らは俺たちのことなんか、搾取するための道具としか考えていない。
       そんな中で俺たち家族が生き残るためには、仕方がなかったんだ!」

美鈴* 「・・・言いたい事はそれだけか?」

アルベル「!」

美鈴* 「盗み、殺しは当たり前・・・。あの国で人として暮らすのがどれだけ難しいか。
      そんな事は分かってる・・・。でも・・・、だからこそ、だからこそ命を賭けて
      自分たちの国を、自由を取り戻みんな必死だった・・・。それなのに、

      そんなあの人たちをあなたは裏切った。それは絶対に許せない。」

(回想)
フェイバリー 「それと・・・、アルベルトの事を許してやってほしい。」

美鈴     「え?どういう事?」

フェイバリー 「・・・いずれ、彼を憎む事になっても、どうか許してやってほしいんだ。
        大切な者を守るためには、つらい決断が必要な時もある。今のように・・・。
        彼には彼の立場での正義や信念があるという事だよ。」
(回想終わり)

美鈴   「あの時の言葉は、私を日本に送り返した行動の事だと思ってた・・・。でも彼は、
      フェイバリーは全部知っていたのかもしれない。あなたの裏切りのことも、何もかも。
      全てを知っていて、それでもあなたに賭けたのだとしたら、私はあなたの行動を
      決して許せはしない・・・。」

アル* 「た、頼む・・・。助けてくれ・・・。」

美鈴   「今さら命乞いなんてやめて・・・。仲間の恨み。そして、フェイバリーの苦しみを受けなさい!

      アルベルト!」

真太郎*「待ったー!」

SE ロボットの走ってくる音。そして着地音。

美鈴   「香取君?退きなさい!」

真太郎*「退きません。」

真太郎 「・・・美鈴さんの過去に何があったかは、優衣ちゃんから何となく聞きました。」

美鈴* 「だったら・・・。」

真太郎 「でも!これは私怨です。私怨で人を殺すのは間違ってます。いや、戦争で人を殺すのも
      いけないんだけど・・・。でもとにかく、この人を殺しちゃいけない!」

美鈴* 「あなたに何が分かるの!仲間を・・・、最愛の人を殺された私の気持ちが
      あなたに分かるっていうの?教科書通りの説教なら聞きたくないわ。」

優衣   「美鈴さん・・・。」

真太郎 「・・・確かに、俺には美鈴さんの気持ちは分からないかもしれない。
      いくら詳しく話を聞いたとしても、他人の傷を測り知ることなんか出来ないから・・・。
      でも、それでも・・・!俺はあなたに人を殺してほしくないんです!」

優衣   「真太郎さん・・・。あたしからもお願いします!美鈴さん、どうか銃をひいてください!」

美鈴* 「香取君、優衣ちゃん・・・。ありがとう。でもね、私の手はとうの昔に血で汚れているのよ。」

真太郎 「美鈴さん!」

美鈴* 「さあ、もう話し合いは終わりよ。」

真太郎 「くっ!優衣ちゃん、ガンバルダーと合体して、操縦をこちらに切り替える事は出来ないの?」

優衣   「無理です。向こうから信号が送られてこない限り、合体は出来ません。」

真太郎 「くそ!どうすれば良いんだ・・・。」

健作* 「ちょっと待った~!」

SE ロボットのジャンプ音。そして着地音。

真太郎 「あ、あの機体は?」

優衣   「グランバルダー!?じゃあ、あれに乗っているのは・・・。」

美鈴* 「森崎君!」

健作   「よう、美鈴。俺のいない間に色々とあったみたいだな。」

美鈴* 「森崎君、どいて。」

健作   「どうした美鈴。そんな怖い声出して。俺ごと撃ちそうな勢いだな。そんなにこの男が憎いか?」

美鈴* 「・・・あなたには関係のないことよ。」

健作   「そうか・・・。なら聞こう。美鈴、それがお前の正義か?それがお前の真実か!」

美鈴* 「私の真実・・・?」

健作   「・・・お前の愛した男は何と言っていた?こんな事を望むような奴だったか?」

美鈴* 「!あの人は・・・。」

(回想)
フェイバリー 「・・・いずれ、彼を憎む事になっても、どうか許してやってほしいんだ。」
(回想終わり)

健作   「もしもお前が、彼のためにこいつを撃つというなら、それは彼を貶める行為だ。
      逆に、自分の気持ちを満足させるために撃つというなら、そんなお前を彼はどう思うか。」

美鈴* 「でも、私は・・・、私は・・・。」

健作   「真実はすべてお前の中にある。それさえ見つければ、おのずと答えは出るはずだ。」

美鈴   「(泣き)フェイ・・・」
健作* 「美鈴・・・、答えを間違えるなよ。」

美鈴   「(泣き)うぅ・・・、フェイバリー・・・。(泣き崩れる)」


〈本部〉

剛輝   「いや~、森崎君が何とか間に合ってくれて良かった。」

健作   「社長が事前に連絡をくれていたからですよ。」

真太郎 「社長が?」

優衣   「今回の事は、あらかじめ社長の方から連絡が来ていたんです。アルベルトさんと、
      ・・・美鈴さんを見張っておくようにって。」

真太郎 「そうだったんですか。だから・・・。」

剛輝   「香取君。君にだけ内緒にしていて申し訳なかったが、なにぶん君はまだここに来て日も浅いし、
      まだ訓練中の身だったので、あえてはずさせてもらった。」

真太郎 「いえ、私は別に・・・。気にしないでください。」

健作   「社長、長い事留守にして申し訳ありません。」

剛輝   「なになに、そんなこと気にする事はない。その分を返しても余りある働きだ。」

源三   「美鈴の傷も、見た目ほど大した事はないそうだし。これで一件落着だわい。」

健作   「・・・香取君?」

真太郎 「え?はい・・・。」

健作   「君の話はちょこちょこ聞いている。なかなか根性があるそうだな。」

真太郎 「いえ・・・。」

健作   「ん?どうした?浮かない顔して。」

真太郎 「・・・あの時、僕の声は美鈴さんには届きませんでした。言いたい事や伝えたい事はあるのに
      うまく言葉に出来ず、美鈴さんの心には何一つ響かなかった。それが悔しくて・・・。」

優衣   「本当に・・・。あたしたちには美鈴さんは止められませんでしたから。」

健作   「それは違うな。確かにうまく言葉に出来なかったかもしれない。だが、だからと言って
      美鈴に何も伝わらなかったとは俺は思わない。少なくとも俺の心には、
      お前の不器用な優しさが伝わってきた。」

真太郎 「でも、森崎さんの言葉は美鈴さんを止めたけど、僕には・・・。」

健作   「それはまあ・・・、付き合いの長さだ。気にする事はない。」

真太郎 「・・・・・・。」

SE 自動ドアの開く音。

桜    「父ー!」(駆け寄る)

真太郎 「!桜。」

桜    「父、お仕事まだ終わらないの?桜・・・(モジモジ)、お腹減った。」

真太郎 「え?ああ!」

優衣   「あら!もう八時?」

真太郎 「ごめんな、桜。すぐご飯にするから。」

健作   「桜ちゃん。」

桜    「ん?おじちゃん、誰?」

健作   「俺か?俺は森崎健作だ。健作でいいぞ。」

桜    「健作?」

真太郎 「こ、こら!桜!」

健作   「良いって。桜ちゃん、何か食べたいものあるかな?」

桜    「食べたいもの?う~ん・・・、ハンバーグ!」

健作   「そうか、ハンバーグか。社長!こんな小さい子を待たせたんだから、
      美味しいハンバーグの一つも食べさせてやらなきゃいけませんよ。」

剛輝   「うむ、そうだな。よし。せっかくだから、みんなで飯を食いに行くか。」

源三   「お!さすが社長!太っ腹!」

剛輝   「任せておけ!とびっきりのハンバーグを食べさせてやるぞ!」

桜    「わ~い!ハンバーグ!ハンバーグ!」(その後も社長とオフで騒いでいる)

健作   「そういや、結城の姿が見えないな。」

優衣   「結城君は・・・、シミュレーションルームに閉じこもってます。」

健作   「そうか。あいつらしいな。」

真太郎 「あの、一つ聞いても良いですか?」

健作   「なんだ?」

真太郎 「森崎さんは、今日までどこに行ってたんですか?」

健作   「俺か?病院だ。」

真太郎 「病院?」

森崎   「修行中に怪我しちまってな。」

優衣   「滝の上から丸太を落とすなんて、漫画じゃないんですから!もう絶対にやめてくださいよ。」

森崎   「いやぁ、悪い悪い。いけるかと思ったんだがな。はっはっはっは。」

桜オフ  「健作ー!ハンバーグ行くよー!」

健作   「おう!今行くぞ!さ、お姫様の機嫌がいいうちに行くぞ。」

優衣   「はい。」

(以降の優衣と健作の会話、徐々にオフに)

健作   「やっぱり木がちょっと太すぎたのかな?最初はもっと細い木で・・・。」

優衣   「まさか、またやる気なんですか?」

健作   「いやいや、やるかどうかは分からないけど、何が悪かったのかなって・・・。」

優衣   「滝の上から物を落とす事自体に問題があると思いますよ。」


真太郎 「・・・少し前からうすうす思ってたけど、この会社の人達、おかしいよな。」

桜オフ  「ち~ち~!」

桜&健作オフ 「ハンバ~グ~!」


第三話 後編 ―完―



企業戦士 ガンバルダー  第三話 前編



香取 真太郎 (27歳 男)
香取 桜    (6歳  女)
藤原 剛輝  (48歳 男)
真宮寺 美鈴 (29歳 女)
真鍋 優衣  (23歳 女)
竹中 源三  (61歳 男)
結城 隼人   (18歳 男)
〈ゲストキャラクター〉
フェイバリー  (当時29歳 男)
アルベルト・フォン・ブラウン (当時26歳 現在35歳 男)
(チョイ役)
ナレーション  (性別不問)
兵1       (20代 男)


第三話 世界の中心で愛を叫ぶ美鈴! 前編


NA 『西暦2053年。日本は増大し続ける失業者を救うため、ある法律を制定する。
    適正職業就職法。これにより、学生を終了したものは就職適正国家試験を受け、
    その適性に応じた職業に自動的に就職を決定される事となる。

    この法律により失業者の数は激減し、国家が指導する企業の下、安定した暮らしが

    提供される事となった。
    初めは民主主義に反すると、一部の勢力は反対運動をしていたが、安定した生活を
    保障された人々はいつしかそんな事も忘れ、日々の生活を平和に暮らしていた。
    そして、時は2079年。とある企業に就職し、退屈ながらも平穏に暮らしていた
    香取真太郎。人違いで新型ブレード「ガンバルダー」のテストパイロットに
    選ばれてしまったこの男に、今、時代の荒波が襲いかかろうとしていた。』


〈美鈴の夢(戦場)〉

SE 銃撃の音オフ  SEそれに反撃する銃撃の音

フェイバリー 「くそ。完全に追いつめられたか・・・。」

美鈴(20歳)「どうするの?フェイバリー。もう、弾薬も底を尽きかけてる。」

兵1      「うぅ・・・。」

美鈴     「みんな疲労しきってるし、怪我人だっていっぱい。このままじゃ・・・。」

フェイバリー「わかってる。・・・アルベルト。」

アルベルト 「なんだ?」

フェイバリー「みんなを逃がす為の囮部隊を作る・・・。志願者を募ってくれ。」

美鈴     「え?」

アルベルト 「・・・わかった。」

美鈴     「囮部隊って、どういう事?」

フェイバリー「このままじゃ全滅だ。だから・・・、一人でも多くの仲間を逃がす為に、
        敵のど真ん中に飛び込んで、相手の注意をひく。」

美鈴     「でも、それじゃあ・・・。」

フェイバリー「ああ・・・。たぶん囮部隊は全滅だろう。」

美鈴     「そんな・・・。ねえ、他に方法はないの?何とかして・・・。」

フェイバリー「美鈴。俺は解放軍のリーダーとして、全滅だけは何としても避けなければならない。
        一人でも生きていれば、いずれ我々の意志を継ぐ者達が現れてくれる。
        ・・・そのために今、犠牲が必要なら、俺はそれを背負わなければならないんだ。」

美鈴     「フェイバリー・・・。」

フェイバリー「それと・・・、アルベルトの事を許してやってほしい。」

美鈴     「え?どういう事?」

フェイバリー「・・・いずれ、彼を憎む事になっても、どうか許してやってほしいんだ。
        大切な者を守るためには、つらい決断が必要な時もある。今のように・・・。
        彼には彼の立場での正義や信念があるという事だよ。」

美鈴     「・・・・・・。」

アルベルト 「フェイバリー。」

フェイバリー「どうだ?何人くらい集まった?」

アルベルト 「ほとんどのやつが志願してくれたが、俺の方で、怪我人とあまりに若い奴は抜いた。
        とりあえず、俺を入れて十二人ほど集めたが、それで大丈夫か?」

フェイバリー「ああ、十分だ。ありがとう。しかし、お前はみんなと行ってくれ。」

アルベルト 「しかし、それじゃあ、囮部隊の指揮は誰が執る?」

フェイバリー「俺だ。」

アルベルト 「馬鹿な。リーダー自ら囮部隊の指揮をするなんて・・・。」

フェイバリー「今回の失敗は、完全に俺のミスだ。俺のせいでみんなを危険にさらしてしまった。」

美鈴     「違うわ。こちらの情報が軍に漏れていたのよ。きっと内通者がいるんだわ。」

フェイバリー「例えそうだったとしても、それを未然に見抜けなかったのは俺の責任だ。
        俺は、リーダー失格だ。これからは、アルベルト、お前がみんなの指揮を執ってくれ。」

アルベルト 「フェイバリー・・・。」

兵1      「俺も、囮部隊に入れてください。」

フェイバリー「お前・・・。」

兵1      「俺の傷は腹まで達してる。どうせ助からない。それに、解放軍に参加した時から、
        この命、いつでも捨てる覚悟は出来てる。だから、どうせ死ぬなら仲間の為に死にたい。」

フェイバリー「・・・わかった。一緒に行こう。」

兵1      「へへへ・・・。」

美鈴     「私も行くわ。」

フェイバリー「君は駄目だ。」

美鈴     「何故?」

フェイバリー「君は、この国の人間じゃない。こんな事で命を落とすことはない。」

美鈴     「そんなこと関係ない。あなたを残して私だけ逃げるなんて出来ないわ。」

フェイバリー「美鈴。俺達解放軍は祖国を守る為に戦っている。では、守るべき祖国とは何だ?
        それは、愛する者達のことなんだ。愛する者の幸せを守る為に、みんな必死になって
        戦ってるんだ。だから、俺は君を守る。必ず。」

美鈴     「フェイバリー・・・。」

フェイバリー「美鈴、どうか生きてくれ。

        生きて、俺達が目指した自由なイスタニアを、いつかその目で見てくれ。」

美鈴     「・・・・・・。」

SE 銃撃の音オフ

アルベルト 「フェイバリー、そろそろ・・・。」

フェイバリー「わかった・・・。アルベルト、美鈴の事を頼む。」

アルベルト 「・・・ああ。・・・さあ、行こう、美鈴。」

美鈴     「・・・・・・。フェイバリー、どうか死なないで。」

フェイバリー「・・・・・・。行ってくる。」

SE オフで銃撃音や爆発音

美鈴     「フェイバリー!フェイバリー!」(二つ目はエコーかけて)


〈美鈴の寝室〉

SE ベッドから飛び起きる音

美鈴   「はぁはぁはぁ、はぁ・・・。また、あの夢・・・。もう十年近く経つのに・・・。
      フェイバリー・・・、私はまだあの頃のまま・・・。あなたを殺した、あの戦争の・・・。
      フェイバリー・・・・・・。」


〈シミュレータールーム〉

SE オフで銃撃音(ロボ)

美鈴   「判断が遅い!考える前に動く!」

真太郎 「はい!」

美鈴   「360度、全てに神経をめぐらせて!」

真太郎 「は、はい!」

美鈴   「そんなんじゃ、敵の標的になるだけよ!もっと気配を感じて!」

真太郎 「え?気配って・・・。」

美鈴   「余計な事は喋らない!舌を噛むわよ!」

真太郎 「は、はい~!」

SE 室内フォン(オフで銃撃音など続いている)

美鈴   「そのまま続けて。・・・はい、シミュレータールーム、真宮寺です。社長。・・・はい。・・・はい。
      え、アルベルトが?・・・はい、・・・はい。わかりました、すぐに行きます。はい、それでは。」

真太郎 「あの・・・。」

美鈴   「ちょっと社長室に行って来るわね。香取君はそのまま続けて。二十機撃墜出来たら
      休憩してて良いわよ。それじゃあ。」

真太郎 「あ、あの、ちょっと!・・・はあ。二十機って、一時間やってまだ一機も落とせてないのに、
      出来るわけ無いですよ~!」


〈社長室〉

SE 美鈴、社長室までの廊下を歩く音。

(回想)
美鈴    「どういうこと?アルベルト!私は・・・、足手まといってこと・・・?」

アルベル 「そうじゃない。」

美鈴    「だったら、なぜ私が日本に帰らなきゃならないの!私だってこの国のために、
       イスタニア解放のために命を捧げる覚悟はあるわ!なのに、なぜ・・・?」

アルベル 「それだよ。」

美鈴    「え?」

アルベル 「君がそんな考えだから、日本に返すんだ。・・・俺はフェイバリーから君のことを
        任された。あいつは最後君になんて言った?・・・・・・『生きろ』って。」

美鈴    「・・・・・・。」

アルベル 「だから俺は、決して君を死なすわけにはいかない。・・・わかってくれ、美鈴。」

美鈴    「・・・うぅ。(泣き)フェイバリー・・・。」
(回想終わり)

SE 自動ドアの音

美鈴   「失礼します。」

アルベル「美鈴!」

美鈴   「アルベルト・・・。本当にあなたなの?」

アルベル「ああ、久しぶりだな、美鈴。元気にしてたか?」

美鈴   「どうしたの、急に。他のみんなは・・・?」

アルベル「大丈夫。みんなは元気だ。今回は・・・。(剛輝を見る)」

剛輝   「彼、アルベルト・フォン・ブラウン氏は、我が社の商品、ブレードを見に来たんだ。」

美鈴   「ブレードを?」

アルベル「美鈴が今、ブレードの開発チームにいると聞いて、それを見せてもらうために来た。
       日本の技術力は定評があるからね。つまり、商談ということだ。」

美鈴   「商談・・・?アルベルト、それどういう事?あなた、今はいったい・・・?」

アルベル「それは・・・。(一瞬剛輝を見て)色々見せてもらいながら話すよ。
       他にも話したい事はいっぱいあるし。いいですか?」

剛輝   「ええ、結構です。まだ試作段階ですし、機密事項もありますがそれ以外ならご自由に。
      美鈴君、ブラウン氏を案内してあげてくれ。」

美鈴   「はい・・・。それじゃ、行きましょ。」

アルベル「ああ。」

SE 自動ドアの音


〈廊下〉

SE 二人の足音

美鈴   「・・・ねえ、さっきの話、説明してくれない?」

アルベル「陸軍情報部一等特佐。それが、今の俺の身分だ。」

SE 胸ぐらをつかみ、アルベルトを壁に叩きつける音。

美鈴   「!アルベルト!あなた、私達を裏切ったの!」

アルベル「しっ!・・・美鈴、最後まで話を聞いてくれ。」

美鈴   「・・・・・・。」(アルベルトを放す)

アルベル「フェイバリーが死んでお前を無理矢理日本に帰らせた後も、俺達はずっとゲリラ戦を
       続けていた。・・・だが、状況は悪くなる一方。このままではフェイバリーが命を掛けて
       守ったものが全て無になってしまう。だから・・・、一時戦闘活動を中止する事にした。
       そして、リーダーとして仲間の命を危険にさらさない為に俺が考えたのが、
       軍の内部に入り込み、軍の情報を仲間にリークする作戦だ。」

美鈴   「スパイ・・・。」

アルベル「そう・・・。そして、情報部に入り死にものぐるいで昇進して、やっと今の地位まで
       登り詰める事が出来た。二年前から活動も再開しだした。これからだ。
       フェイバリーが託した、俺達の祖国を取り戻す戦いは、まだこれからなんだ・・・。」

美鈴   「アルベルト・・・。そうだったの。ごめんなさい。私・・・。」

アルベル「いや、いいんだ。・・・美鈴。今回のブレード視察は、俺達にとっても重要な意味を持つ。
       これから俺達がそのブレードを相手にしなくてはならなくなるかもしれないからだ。」

美鈴   「そんな・・・!生身でブレードと戦うなんて・・・。」

アルベル「だから・・・。設計図やブレードに関する資料をもらう訳にはいかないだろうか?」

美鈴   「え・・・?それは・・・。」

アルベル「君に迷惑が掛かる恐れを承知で頼む。

       ブレードが実戦配備されたら、正直俺達に勝ち目はない。だが、
       開発チームしか知らないような機体の弱点を知る事が出来れば、少しはあいつらと戦う事が
       出来るかもしれない。いや、その情報を使ってブレードを奪取する事が出来れば、
       戦況をひっくり返す事だって出来るかもしれない。」

美鈴   「でも・・・。」

アルベル「頼む、美鈴。今回は上官をなんとか説得して俺が視察に来ることが出来た。

       だが、軍内部には正直俺の事を快く思ってない連中も多い。

       だからもう二度とこんな無茶は出来ない。これが、最初で最後のチャンスなんだ。」

美鈴   「アルベルト・・・。・・・わかったわ。」

アルベル「美鈴!」

美鈴   「ただし、誰にも気付かれないようにして。そして、私達イスタニア解放軍のメンバー以外には

      決して公開しない事。これを破ったら、例えあなたでも・・・。」

アルベル「大丈夫だ。必ず約束は守る。」

美鈴   「うん・・・。」

アルベル「(懐笑)私達か・・・。」

美鈴   「あ・・・、ごめんなさい。何もしてない私がそんな事言ったら、気分悪いわよね。
      一人だけこんな安全な所にいて・・・。」

アルベル「俺が何も知らないとでも思ってるのか。・・・フェイバリーのお袋さんから聞いてるぞ。
       毎月日本から送られてくる解放軍への資金援助。物価の違いを考えてもお前がどれだけ
       俺達の為に自分を犠牲にしているか・・・、それくらいはわかるつもりだ。
       ありがとう、美鈴。お前は今でも俺達の大切な仲間だ。」

美鈴   「アルベルト・・・。ありがとう。」

アルベル 「じゃあ美鈴、案内をお願い出来るかな?」

美鈴   「ええ。こっちよ。」

SE 二人の足音


〈格納庫〉

真太郎 「源さ~ん。美鈴さん、知りません?」

源三   「美鈴?いや、こっちには来とらんぞ。」

真太郎 「はあ、どこに行っちゃったんだろう。もう二時間以上経つっていうのに・・・。」

源三   「何だ?美鈴がどうかしたのか?」

真太郎 「はい、トレーニングの途中でいなくなっちゃって・・・。どうしたらいいか。」

結城   「美鈴なら、客人の対応中だ。間もなくこっちに来る。」

真太郎 「結城!」

結城   「相変わらずむかつく奴だな。せっかく人が教えてやったっていうのに。」

真太郎 「あ・・・。その、ありがとう。」

結城   「気持ち悪いから、礼なんて言わないでくれる。」

真太郎(独り言) 「くそー、やっぱ、こいつ、むかつく!」

結城   「そうそう。意味ないとは思うけど、一応。おじさん。」

真太郎 「おじさん?」

結城   「客人に気をつけて。」

真太郎 「え?」

結城   「じじい。ちょっとトライバルダーで出てくる。」

源三   「ふん!いちいち報告なんぞせずに、勝手にすれば良かろう。」

結城(徐々にオフへ)「何かあった時に、泣きつく相手がどこにいるかわからないと困るでしょ?(笑)」

源三   「くそぅ。相変わらずむかつくガキだ。ん?どうした?若造。」

真太郎 「いや、客人に気をつけろって、一体どういう意味なのかなって・・・。」

源三   「あんな奴の言う事なんぞ気にする事無いわい。ほれ、仕事しろ、仕事。」(去る)

真太郎 「でも・・・。」

SE 自動ドアが開く音

美鈴(オフ)「ここが格納庫よ。さっき見せた資料にあったバルダーシリーズが全てここにあるわ。」

アルベル(オフ)「へぇ。」

真太郎 「美鈴さん!」美鈴に駆け寄る

美鈴   「香取君?あ、ごめんなさい!すっかり忘れてたわ!」

真太郎 「やっぱり・・・。そうじゃないかと思ってましたよ。」

アルベル「美鈴、彼は?」

美鈴   「ああ、紹介するわね。ガンバルダーのテストパイロットの香取真太郎君よ。」

真太郎 「どうもはじめまして、香取真太郎です。」

アルベル「へぇ、君がテストパイロット。」

美鈴   「こちらは・・・。」

アルベル「アルベルトだ。アルベルト・フォン・ブラウン。よろしく。」

美鈴   「彼は我が社のブレードを視察に来たの。」

真太郎 「視察?」

アルベル「簡単に言うと、試乗して、気に入ったら買うって事だよ。」

真太郎 「つまり・・・、お客さんって事ですか?」

美鈴   「そうよ。」

真太郎 「うわぁ、何かサラリーマンしてる気がしてきました。」

美鈴   「何言ってるのよ。私達は元からサラリーマンじゃない。」

真太郎 「いや、そうなんですけど。何か最近、やってる事がサラリーマンぽく無かったから・・・。」

桜(オフ)「あー!父―!」

優衣(オフ)「ちょっと、桜ちゃん、待ってー!」

真太郎 「え?桜?うわー!・・・うぶぅ。」(ダイビング桜)

SE 桜が飛びつく音。

桜    「父、発見なの。」

優衣   「桜ちゃん、真太郎さんはまだお仕事中だから、邪魔しちゃ駄目よ。」

桜    「ん~・・・、わかった。桜、父のお仕事待ってる。」

優衣   「桜ちゃん、良い子ね。」

美鈴   「優衣ちゃん。こんな事言いたくないんだけど、お客様がいるのに・・・。」

アルベル「はっはっは。美鈴、君の職場は明るくて良いな。」

美鈴   「アルベルト。」

優衣   「あの、すみません。お騒がせしました。」

アルベル「良いんだよ。君たちは平和を大いに楽しむ権利があるんだから。
       ・・・私の祖国もいつかこの国のように、笑顔の絶えない国にしてみせる。」

優衣   「アルベルトさん・・・。(哀笑)そうなれると良いですね。」

アルベル「ありがとう。」

桜(小声で)「父・・・。」

真太郎 「ん?どうした?桜。」

桜(小声で)「あのおじちゃん、・・・怖い。」

真太郎 「桜・・・?」

美鈴   「じゃあ、そろそろ・・・。」

アルベル「そうだね。あまりのんびりもしていられないし・・・。」

美鈴   「優衣ちゃん、ちょうど良いから、私の代わりに香取君の訓練メニューを

      続けておいてくれないかしら?私は今日ちょっと手が離せないから。」

真太郎 「え?」

優衣   「はい、わかりました。」

美鈴   「ありがとう。じゃあアルベルト、行きましょう。」

SE 美鈴とアルベルト奥へ去る。

真太郎 「優衣ちゃん・・・。」

優衣   「はい?」

真太郎 「優衣ちゃんはどう思う?あのフォン・ブラウンさんて人・・・。」

優衣   「え・・・。」

真太郎 「桜がすごく怖がってた・・・。あんなに優しそうに微笑んでたのに。それに、結城も
      客人に気をつけろって・・・。どういう事なんだろう・・・。」

優衣   「・・・あの、真太郎さん。ちょっとお話ししたい事が・・・。」


〈コックピット前〉

美鈴   「これが、高性能ステルス機能を搭載した特殊任務型バルダー、エクスバルダーよ。
      もし、本気で軍からブレードを奪うつもりなら、この機体がベストでしょうね。」

アルベル「ステルス機能・・・。」

美鈴   「ええ。レーダーに写らないだけじゃなく、光の屈折を利用して姿を隠すから、
      映像で確認するのも難しいわ。いわゆる光学迷彩というやつね。」

アルベル「そうか・・・。ちょっと操縦席に座らせてもらって良いかい?」

美鈴   「ええ。私が同乗していれば、この格納庫内なら動かしても大丈夫よ。」

アルベル「へえ、そいつはありがたい。・・・でも、一緒に乗るのは遠慮しておくよ。」

SE 銃を構える音。

美鈴   「アルベルト・・・。冗談はやめて。早く銃をしまって。」

アルベル「冗談なんかじゃない。俺はいつだって本気さ。こうやって生きてきたんだ。」

美鈴   「どういう事?」

アルベル「必死になったからって、簡単に陸軍一等特佐までなれると思うか?なれるわけ無いさ、
       普通にやってたらな。・・・フェイバリーが死んだ時、お前、内通者がいるって言ってたろ。
       ・・・俺だよ。俺が仲間を売ったんだよ。(笑い)」

美鈴   「アルベルト!あなたは・・・!」

アルベル「おっと、動くなよ。お前は昔からやっかいな相手だったからな。フェイバリーの方が
       よっぽど扱いやすかったぜ。だからお前を日本に追い返したんだ。
       ・・・だが、あいつが死んでからは、お前も意外と扱いやすかったぜ。
       フェイバリーの名前を出せば、何でも言う事を聞いてくれるんだからよ。」

美鈴   「くっ!」

アルベル「お前が送ってくれる金も、ありがたく使わせてもらった。やっぱり金を渡すのが、
       昇進の一番の近道だからな。・・・だが、それももう結構だ。この仕事が終われば、
       俺は将軍の地位が約束されているんだ。このブレードさえ手に入れれば・・・。
       お前からの最後のプレゼント、ありがたくちょうだいするぜ。代わりに、
       この鉛玉をくれてやるから、あの世でフェイバリーと仲良く暮らすんだな。(高笑い)」

美鈴   「アルベルトー!」

アルベル「あばよ。」

SE 銃を撃つ音。(響く)


第三話 前編 ―完―