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パンドラのおもちゃ匣

声劇台本などを適当に置いておく場所です。
ここにある台本は、商用以外の利用ならどこでも自由に使っていただいて結構です。
何か質問などある方は、twitterの@marion2009までどうぞ。

企業戦士 ガンバルダー 第二話 後編



香取 真太郎 (27歳 男)
香取 桜    (6歳  女)
藤原 剛輝   (48歳 男)
真宮寺 美鈴 (29歳 女)
真鍋 優衣  (23歳 女)

竹中 源三  (61歳 男)
結城 隼人  (18歳 男)


第二話 父とライバルだ! 後編 


〈模擬市街地〉

源三   「行けー!超獣、合体、ゴー、ガンバルダー!」

結城   「何!」

ME カッコイイ音楽  SE 合体の機械音。間をあけて四回  SE 合体変形完了音

結城   「な、何だ、これは?」

*源三 「フン。貴様に内緒で作っていた、ガンバルダーの飛行用換装ユニット。バルイーグルだ。」

結城   「バルイーグル?」

*源三 「わしが作ったガンバルダーは完璧なんじゃい。空戦用、陸戦用、水中戦用のそれぞれの
      換装ユニットを装備する事で、どんな状況にも対応する。それがガンバルダーじゃ。」

*真太郎 「すごい。すごいよ、源さん。こんな秘密兵器があったなんて。」

*源三 「待たせて悪かったな、若造。だが、これからだ。
      あのくそガキの伸びた鼻をへし折ってやってくれ。」

*真太郎 「はい!」

結城   「あっはっはっはっは。」

*源三 「何がおかしい?」

結城   「秘密兵器って、これだけ?馬鹿じゃないの。空が飛べるようになったからって、
      何が変わるのさ?障害物の無い空にいてくれた方が、よっぽど狙いやすいよ。」

真太郎 「そ、そういえば・・・。源さん、これ、武器とか無いんですか?
      と言うか、どうやって動かせばいいかも解らないんですけど・・・。」

*結城 「あはははは。何それ?動かし方も秘密の兵器か?笑わせてくれる。」

*優衣 「大丈夫です。」

*結城 「何!」

真太郎 「誰?」

*優衣 「今、コックピットを繋げますね。」

真太郎 「え・・・?」

SE 宇宙船の自動ドアが開くような音

真太郎 「き、君は・・・。」

優衣   「お待たせしました。大丈夫ですか?」

真太郎 「優衣ちゃん!何で君がここに・・・?」

優衣   「あたし、ガンバルダーの換装補助ユニット、バルアニマーのパイロットですから。」

真太郎 「バルアニマー?」

優衣   「空戦用のバルイーグル、陸戦用のバルパンサー、水中戦用のバルシャーク。
      それぞれ独立して戦闘が可能ですが、ガンバルダーと超獣合体した時、
      本来の戦闘能力を発揮するよう、設計されているんです。」

真太郎 「な、なるほど・・・。って、それはわかったけど、どうして君がパイロットなんて?
      女の子がこんな危険な事をしちゃいけないよ。」

優衣   「大丈夫です。慣れてますから。」

真太郎 「え?」

優衣   「昔からおじいちゃんの作ったものは、まずあたしが試す事になってるんです。」

真太郎 「おじいちゃん?」

*源三 「おい若造。優衣に手を出したらどうなるか、わかってるだろうな?」

真太郎 「おじいちゃん!?」

優衣   「真太郎さん。とりあえず壊れたガンバルダーのメインカメラから、
      バルイーグルのカメラにモニターを切り替えますね。それと、
      機体の操縦に関してはあたしが受け持ちます。真太郎さんは攻撃に集中してください。」

真太郎 「わ、わかった。」

*美鈴 「ちょっと待って。これは香取君のパイロット適正を診るテストなのよ。
      他の人が操縦したんじゃ意味がないわ。そうでしょ?」

優衣   「え?そんな・・・。」

*結城 「いいんじゃない?」

*美鈴 「結城君?」

*結城 「誰が操縦したところで、結果は同じなんだから。僕は別に構わないよ。」

*美鈴 「そういう事じゃなくて・・・。社長!」

*剛輝 「うむ・・・。結城君に異存がなければ、このまま続投と行こうじゃないか。」

*美鈴 「いいんですか?」

*剛輝 「優衣君を含めた二人でテストパイロットという事であれば、問題はないんじゃないかね?」

*源三 「さすが社長!わかってる!」

*美鈴 「・・・社長がいいのであれば。」

*剛輝 「と言うわけだ。二人とも、頑張ってくれたまえ。」

優衣   「社長、ありがとうございます。さあ、行きますよ、真太郎さん。」

真太郎 「おう!」

*結城 「フン。すっかり元気になっちゃって。でもその元気もすぐに奪ってあげるよ!」

優衣   「来ます!Gに気を付けてください!」

SE 銃撃音

真太郎 「うわっ!」

優衣   「大丈夫ですか?」

真太郎 「な、何とか・・・。」

*結城 「へえ。良く避けたじゃん。ちょっとは楽しめそうだ。じゃあ、これならどう?」

SE 銃撃音

優衣   「くっ。」

*結城 「そらそら、上手く避けないと当たっちゃうよ。」

SE 銃撃音  SE衝撃音

優衣   「きゃあ!」

真太郎 「うわっ!」

*結城 「ほら、だから言ったろう?今度はしっかり避けてくれよ。あっははは。」

真太郎 「くそー。どうすれば・・・。」

優衣   「真太郎さん。」

真太郎 「何?」

優衣   「このまま避け続けても、いつかやられるだけです。」

真太郎 「わかってる。でもはっきり言って、どうしようもない。」

優衣   「私に考えがあります。」

真太郎 「考え?」

優衣   「はい。特攻を掛けるんです。」

真太郎 「特攻?でもそれじゃあ・・・。」

優衣   「はい。相手の思うようにねらい撃ちされるでしょう。でも、イーグルの羽を最大限に広げて
      頭から突っ込めば、ガンバルダーは完全に相手の視界から隠れる事が出来ます。
      そこで、ギリギリまで近づいた所でガンバルダーを切り離せば、
      バルイーグルが目眩ましになって、ガンバルダー自体は無傷のまま
      すぐ近くまで近づく事が出来るはずです。」

真太郎 「・・・・・・。」

優衣   「もちろん、気づかれれば至近距離で相手のライフルの前に立つ事になりますから、
      とても危険な賭です。でも、このままここにいても、いつかやられるだけですから・・・。」

真太郎 「勝負するしかないと。」

優衣   「はい。」

真太郎 「・・・わかった。で、俺は何をすればいい?」

優衣   「はい。ガンバルダーのメインカメラは使い物にならない状態になっています。今はこの
      イーグルと繋がっているので見えていますが、切り離しと同時に何も見えなくなります。
      真太郎さんは、それまでに相手の機体をしっかりとロックオンしておいてください。」

真太郎 「わかった。・・・必ずあいつに一矢報いてやろう。」

優衣   「はい。」

*結城 「そろそろ作戦でも決まったかい?」

優衣   「ええ。今からそちらに向かいます。」

*結城 「僕のところに?ふっ、面白い。来られるものなら来てごらん。
      その前に、蜂の巣にしてやるよ。」

優衣   「行きますよ、真太郎さん!」

真太郎 「おう!」

SE 空を飛ぶ風切り音

*結城 「特攻か?潔いじゃないか。お望み通り、撃ち落としてやるよ。落ちろ!蚊トンボ!」

SE 衝撃音  SE 衝撃音オフ(会話中も継続)

優衣   「くっ。」

真太郎 「大丈夫?」

優衣   「大丈夫です。それより真太郎さんはロックオンを・・・。」

真太郎 「ああ。・・・落ち着け、・・・焦るな。集中しろ・・・。後少し・・・。そこだ!よし!」

優衣   「バルイーグル、切り離します!」

真太郎 「了解!」

SE 飛行音  SE 墜落(不時着)音

結城   「フン。ペイント弾で前が見えなくなって、山に突っ込んだか。逃げ回っていればいいものを。
      僕を倒そうなんて馬鹿な事を考えるからそうなるんだよ。まったく・・・。
      ・・・ん?レーダーに反応?前方、距離・・・二十?!ま、まさか!」

*真太郎「行けー!」

結城   「謀ったな!貴様!うわー!!」

(台詞に被り気味で)SE 銃撃音  SE 衝撃音   FO


〈本部〉

結城   「あんなのは反則だ!機体を切り離して目眩ましにするなんて!
      それに、実戦ならもっと前に向こうは戦闘不能になっているはずだ!」

源三   「何が反則だ。あれはちゃんとした作戦だ。今さら負け惜しみか?」

結城   「うるさい!じじいは黙ってろ!」

源三   「何!」

結城   「社長、何とか言ってやってください。」

剛輝   「うむ・・・。結城君。今回は訓練というルールの中での模擬戦だ。
      だから、香取君達の取った行動は反則とはならないし、
      戦闘不能だったかどうかも考慮すべきところではない。」

結城   「な!社長!」

優衣   「それじゃあ・・・!」

剛輝   「うむ。今回の結果は、香取君、優衣君チームの勝ちとする。よって、本日付で、
      香取君を正式にガンバルダーのテストパイロットに任命する。頑張ってくれたまえ。」

真太郎 「は、はい!」

桜    「父、やったー!」

SE 壁を叩く音

結城   「認めない・・・。僕は認めないぞ!」

美鈴   「結城君・・・。」

結城   「香取真太郎・・・、僕は負けたとは思ってない。
      覚えておけ。ここに残った事を必ず後悔させてやるからな。」

SE 自動ドアが開く音  SE 閉まる音

真太郎 「はあ・・・。最後の最後まで負け惜しみかよ。ったく、本当に嫌な奴だな。」

優衣   「・・・本当は優しい子なんですよ。」

真太郎 「え?あいつのどこが?」

優衣   「最後、隼人君が油断したのは私達の事を心配したからだと思います。
      そうじゃなければ、あそこまで反応が遅れる事はなかったはずです。」

真太郎 「あいつが、俺達の事を?」

優衣   「はい・・・。」

真太郎 「まさか、そんな事あるわけ・・・。」

優衣   「初めだってそうです。ガンバルダーの手足を狙ったのは実力差を見せつける為もありますが、
      コックピットへの衝撃を最小限に抑えようとした、彼の配慮だと思います。」

真太郎 「そんな・・・。じゃあ、何であんな憎まれ口なんか・・・。」

優衣   「負けられないんです。隼人君は負ける事が許されないんです。」

真太郎 「どういう事?」

優衣   「・・・美鈴さんは、知ってますよね?隼人君のお母さんの事。」

美鈴   「・・・ええ。彼を捨てて出て行った・・・。」

優衣   「・・・・・・。」

美鈴   「元々結城君の家は、父親が亡くなって、お母さんが一人で彼を育てていたの。
      でも、そのお母さんも出て行ってしまって、結城君は独りぼっちになってしまった・・・。
      その後、母方の祖父母に引き取られた彼は、めざましい才能を開花させはじめ、
      そして、天才の名を欲しいままにして、一躍有名人になった・・・。」

優衣   「・・・それもひとえに、お母さんに帰ってきて欲しいからなんです。
      常に一番で居続け、目立っていれば、いつかお母さんが帰ってきてくれる・・・。
      彼はそう信じているんです。だから彼は負けられない。 隼人君にとって他人は競争相手、
      敵でしかないんです。ああやって相手より上に立とうとするのは、その為なんです。
      ・・・でも、本当はとても心の優しい子なんです。」

真太郎 「そうだったんですか・・・。」

剛輝   「我が社の方でも捜索に協力しているのだが、未だに行方はわからんのだ・・・。」

優衣   「彼が腹を立てているのは、自分に対してだと思います。負けてしまった自分に対して・・・。
      多分、彼自身気付いてないと思いますが。」

真太郎 「何で、そんな事までわかるの?」

優衣   「半年も一緒に暮らせばわかりますよ。・・・心は開いてもらえませんでしたけど。」

桜    「父・・・。」

真太郎 「どうした?桜。」

桜    「・・・隼人の母、見つかるといいね。」

真太郎 「桜・・・。・・・そうだな。」

源三   「だが、どんな理由があろうと、あいつは負け、香取が勝った。それだけだ。
      勝負の世界というのは結果が全てだからな。・・・若造、・・・良くやったな。」

真太郎 「源さん・・・。」

源三   「まあ、全部優衣がお膳立てして、お前は撃っただけだけどな。(笑い)」

真太郎 「そ、そんなぁ・・・。」

源三   「だが、ちっとは見直した。この調子で、これからも頑張れよ。」

真太郎 「はい!」

源三   「じゃあ、社長。俺はこれで。派手にやらかしてくれたから、修理が大変なんで。」

剛輝   「うむ。頼む。」

優衣   「おじいちゃん!あの・・・、ごめんなさい。」

源三   「なあに、気にすんな。あいつに一泡吹かせられたんだ。これくらい安いもんよ。」

SE 自動ドアの開く音  SE 閉まる音

優衣   「おじいちゃん・・・。」

美鈴   「大丈夫よ。木がクッションになってくれたから、思ったより損傷は少ないみたいだって、
      さっき回収班から連絡があったから。」

剛輝   「さて、美鈴君。今後の香取君のスケジュールを伝えてくれ。」

美鈴   「わかりました、社長。香取君、まずはおめでとう。」

真太郎 「ありがとうございます。」

美鈴   「テストに合格した事で、先ほど社長からも伝えましたが、本日付で正式に
      当社のオリジナル試作ブレード、ガンバルダーのテストパイロットに任命される事となりました。」

真太郎 「はい。精一杯頑張りますので、よろしくお願いします。」

美鈴   「いい返事ね。と言うわけで、これからは私が直属の上司に当たるから、よろしく。
      何かあったら、遠慮無く言ってね。」

真太郎 「はい。」

美鈴   「それで、明日からのスケジュールなんだけど、
      香取君には、パイロットとしての体力や思考力、判断力などの、基礎能力が欠けています。
      まずはそこを徹底的に鍛えていかなければなりません。はい、これ。(紙を渡す)
      明日以降の訓練の予定表をプリントしておいたから、目を通しておいて。」

真太郎 「はい。えっと、朝六時から・・・、ランニング10㎞?!」

美鈴   「七時に朝食。八時から戦闘、戦術の勉強。十二時から昼食。午後一時から
      シミュレーターを 使っての判断力、反射能力の訓練。三時から肉体訓練、

      六時に夕飯。七時から・・・。」

真太郎 「ちょ、ちょっと待ってください!こんなの、出来るわけ無いじゃないですか。」

美鈴   「そう?」

真太郎 「こんなスケジュール、無茶苦茶ですよ。」

美鈴   「でも、結城君も優衣ちゃんも、もちろん私も、みんなこなしてきたわよ?」

真太郎 「優衣ちゃんも?え・・・?と言うか、美鈴さんも・・・?」

美鈴   「そうよ。だって、私もブレード乗りだから。」

真太郎 「美鈴さんが、パイロット?!」

優衣   「あたしや結城君に訓練をつけてくれたのは、美鈴さんなんですよ。」

美鈴   「一応、私がリーダーだから。と言うわけで、五分前には迎えに行くから、よろしくね。」

優衣   「訓練の時の美鈴さんは恐いですよ。(小声で)」

真太郎 「はは・・・、ははは・・・。」

桜    「父、頑張れ!」

真太郎 「桜・・・。(弱々しく)」

桜    「大丈夫。今日の父、カッコ良かった。父は桜の『おこり(誇り)』だから。」

真太郎 「『おこり』?」

桜    「父、いつも桜に言ってる。『桜は父のおこりだ』って。父も、桜の『おこり』だよ。」

真太郎 「桜・・・。わかった。父、頑張るからな。」

桜    「うん。桜も、べんきょ頑張る。」

真太郎 「そっか。いい子だ。」

美鈴   「(笑み)じゃあ、今日はもう帰って、明日に備えてゆっくり休むといいわ。」

真太郎 「はい。それじゃあ、明日からよろしくお願いします。」

美鈴   「こちらこそよろしくね。」

真太郎 「では、失礼します。」

優衣   「失礼します。」

SE 自動ドアの開く音  SE 閉まる音

剛輝   「・・・ふう。どうだね、美鈴君。彼はものになると思うかね?」

美鈴   「たぶん、今回のテストも優衣ちゃんの助けが無ければ、合格できなかったでしょう。
      はっきり言って、彼はパイロットに向いているとは思えません。」

剛輝   「そうか・・・。」

美鈴   「ただ・・・。」

剛輝   「ただ?」

美鈴   「守るべきものがあると、人は強くなれる。・・・彼には守るべきものがあります。
      だから、もしかしたら・・・、化けるかもしれません。」

剛輝   「・・・君のように?」

美鈴   「・・・・・・。」

剛輝   「私は彼にひどいことを強いてるのかも知れんな。」

美鈴   「社長。・・・違いますよ。(哀笑)私の時とは全然違います。だから・・・、安心してください。」

剛輝   「美鈴君・・・。」

美鈴   「彼は私が責任を持って、立派なパイロットにしてみせますから。」


〈香取の家(部屋)〉

真太郎 「いやー、でもあの優衣ちゃんがパイロットだったなんて、驚いたな。」

桜    「優衣ちゃん、カッコ良かった。」

真太郎 「それに、美鈴さんもパイロットだったなんて・・・。」

桜    「美鈴もカッコ良いの?」

真太郎 「うーん・・・。美鈴さんは綺麗だし、スタイルも良いし、カッコ良いとは思うけど。
      あの優衣ちゃんが、冗談でも、『恐い』って言うくらいだからな・・・。」

桜    「美鈴、恐いの?」

真太郎 「たぶん、相当・・・。」

桜    「あびょびょー。(恐がってる)」

真太郎 「大丈夫だ、桜。別に桜が怒られるわけじゃないから。」

桜    「・・・本当?」

真太郎 「ホントだよ。・・・たぶん怒られるのは、・・・俺、だよな。ははは・・・。(力無く)」

優衣   「お待たせしました。夕飯の支度が出来ました。」

真太郎 「ありがと。・・・なんだか悪いな。優衣ちゃんだって疲れてるだろうに。」

優衣   「あたしは大丈夫ですよ。慣れてますから。それより、早く来てください。
      今日はお祝いなんですから。」

真太郎 「お祝い?」

優衣   「真太郎さんの、パイロット就任祝いです。」

真太郎 「え?でも、昨日も歓迎会って言って、お祝いしたんじゃ・・・。」

優衣   「昨日は歓迎会、今日は就任祝い。内容が別です。
      それに、お祝い事はいくらあってもいいじゃないですか。」

真太郎 「そうかもしれないけど・・・。」

桜    「ハンバーグもある?」

優衣   「和風きのこハンバーグに、デミグラスソースのチーズハンバーグ。
      目玉焼きを乗せた上に、ソースとマヨネーズと鰹節をかけた、お好み焼き風ハンバーグ。
      その他にシチューやサラダもあるから、いっぱい食べてね。」

桜    「わーい!ハンバーグ。ハンバーグ。父ー、桜見てくるね。」

真太郎 「うん。父もすぐ行くから。」

桜オフ  「早くねー。」

真太郎 「・・・はあ。」

優衣   「どうしたんですか?」

真太郎 「うん・・・。明日からのことを思うと、気が重くてね・・・。」

優衣   「あたしが付いていてあげられれば良いんですけど、
      ご飯の支度や、桜ちゃんの勉強を見なくちゃいけないから・・・。」

真太郎 「いや、そうじゃないんだ。何と言うか、勢いでここまで来たけど、大丈夫なのかなって・・・。
      俺、パイロットなんて本当にやっていけるのかなって、何か急に不安になって来て・・・。」

優衣   「真太郎さん・・・。大丈夫ですよ。真太郎さんなら大丈夫。
      だって、真太郎さんには桜ちゃんがいるじゃないですか。だから・・・、
      どんなに大変なことだって、きっと乗り越えられますよ。ね?」

真太郎 「優衣ちゃん・・・。ありがとう。何か元気出てきたよ。」

優衣   「良かった。」

桜オフ  「ちーちー。まーだー?」

優衣   「(笑み)ほら。呼んでますよ。」

真太郎 「うん。おーし、桜―。今行くぞー。」

桜オフ  「はーやーくー。」

真太郎オフ 「桜ー。」(抱きつく)

桜オフ  「あー、父、邪魔。手、洗ってきて。」

優衣   (笑み)

真太郎オフ 「桜は父の誇りだー!」

桜オフ  「もー、桜、先食べちゃうよー。」


第二話 後編 ―完―



企業戦士 ガンバルダー  第二話 前編



香取 真太郎 (27歳 男)
香取 桜    (6歳  女)
藤原 剛輝   (48歳 男)
真宮寺 美鈴 (29歳 女)
真鍋 優衣  (23歳 女)
竹中 源三  (61歳 男)
ニューキャラクター
結城 隼人  (18歳 男)
(チョイ役)
ナレーション (性別不問)


第二話 父とライバルだ! 前編


NA 『西暦2053年。日本は増大し続ける失業者を救うため、ある法律を制定する。
    適正職業就職法。これにより、学生を終了したものは就職適正国家試験を受け、
    その適性に応じた職業に自動的に就職を決定される事となる。

    この法律により失業者の数は激減し、国家が指導する企業の下、安定した暮らしが

    提供される事となった。
    初めは民主主義に反すると、一部の勢力は反対運動をしていたが、安定した生活を
    保障された人々はいつしかそんな事も忘れ、日々の生活を平和に暮らしていた。
    そして、時は2079年。とある企業に就職し、退屈ながらも平穏に暮らしていた
    香取真太郎。人違いで新型ブレード「ガンバルダー」のテストパイロットに
    選ばれてしまったこの男に、今、時代の荒波が襲いかかろうとしていた。』


〈真太郎の部屋〉

優衣   「真太郎さん。・・・真太郎さん。」

真太郎 「う~ん。」

優衣   「真太郎さん。朝ですよ。起きてください。」

真太郎 「う~ん。ふぁ~い。・・・ん?うわぁ!」

優衣   「おはようございます、真太郎さん。」

真太郎 「ゆ、優衣ちゃん?・・・ああ、そっか。おはよう。」

優衣   「真太郎さんったら、まだ寝ぼけてるんですか?さあ、朝ご飯出来てますから、
      顔洗って来てください。九時には本部に行くんですからね。近いからって油断してると
      遅刻しちゃいますよ。はい、タオル。キャア!」(転んでベッドに倒れ込む)

真太郎 「うわっ、・・・大丈夫?」

優衣   「は、はい、大丈夫です。昔から転ぶのには慣れてますから。(顔の近さに気付き)あ・・・。」

真太郎 「あ、あの・・・、優衣ちゃん・・・。」

優衣   「は、はい・・・。」

真太郎 「あの・・・、彼氏とかって・・・いるのかな?・・・なんちゃって。」

桜    「あー!父ー!」

真太郎 「さ、桜!あ!いや、これはその、違うんだ。
      優衣ちゃんがタオルを転んで、じゃなくて渡そうとしたら・・・。」

桜    「ずるいー!」

真太郎 「え?」

桜    「桜も一緒に寝るー!」(ダイビング桜)

真太郎 「うわ!さ、桜。く、苦しい・・・。」

優衣   「じゃ、じゃあ、あたし、食事の用意しちゃいますね。
      もう出来てますから、早く来てくださいね。」

真太郎 「うん。すぐ行くよ。」

優衣   「あ、それから・・・。」

真太郎 「ん?何?」

優衣   「・・・いませんから、彼氏とか。」

真太郎 「え・・・?」

桜    「ちーちー。」

真太郎 「やっほーい!よーし、桜。顔洗いに行くぞ。ほら、父の肩に乗れ。」

桜    「わーい。」

優衣   (笑い)


〈本部〉

美鈴   「・・・社長、香取君への処遇は決まりました?」

剛輝   「うむ。」

源三   「やっぱりこのアークセプター内で、何かしら別の仕事をしてもらうってのが
      一番妥当ですかね。ねえ、社長?」

剛輝   「まあ、彼の件については、本人が来てから話そうじゃないか。」

SE 電話(内線)が鳴る音。続いて受話器を取る音。

美鈴   「はい。・・・・・・。分かりました。通してください。」

SE 受話器を置く音。

美鈴   「社長、香取君が来たそうです。」

剛輝   「うむ。分かった。」

真太郎(オフ) 「失礼します。」

SE 自動ドアの開閉音。

真太郎 「おはようございます。」

剛輝   「おはよう、香取君。昨日はよく眠れたかね。」

真太郎 「はい。おかげさまで。」

剛輝   「それは良かった。さて、君に来てもらったのは他でもない、君の処遇についてなんだが・・・。」

真太郎 「・・・はい。」

剛輝   「その前に、君に聞いておきたいことがある。君の気持ちはどうなんだね?」

真太郎 「は・・・?」

剛輝   「君はテストパイロットを続ける気はあるのかね?」

真太郎 「私は・・・。」

桜    「父・・・。」

優衣   「真太郎さん・・・。」

真太郎 「・・・初めは正直言って嫌でした。桜の為に、路頭に迷うわけにはいかないって思って・・・、
      ただそれだけでした。でも・・・。」 

美鈴   「でも?」

真太郎 「たとえ初めはそうだったとしても、そして人違いだったとしても、一度決めたことから
      簡単に逃げ出すようなことはしたくない。私は桜にとって、誇れる父親でありたいんです。」

桜    「父ー!」

真太郎 「それに、・・・応援してくれてる人もいるし。」

優衣   「真太郎さん・・・。」

剛輝   「そうか・・・。分かった。」

美鈴   「社長!」

源三   「まさか・・・。」

剛輝   「では、もう一度君の適正を調べさせてもらおう。
      しかも今度は実際にブレードに乗ってもらってだ。そのテストに合格したら、
      君をパイロット候補として改めて採用させてもらう。それでどうだね?」

真太郎 「はい。」

剛輝   「二人も依存はないな?」

美鈴   「まあ、社長が決めたことですから・・・。」

源三   「あまり大きな傷は付けんで下さいよ。」

剛輝   「よし、それでは決まりだ。」

SE 電話のプッシュ音(一回)

剛輝   「話はついた。入ってくれ。」

真太郎 「あの、社長。で、テストって・・・。」

SE 自動ドアの開閉音。

結城   「失礼します。」

優衣   「あっ・・・。」

美鈴   「結城君。」

剛輝   「結城君、さあこっちへ。紹介しよう。
      バルダー二号機、トライバルダー正パイロットの結城隼人君だ。」

結城   「どうも、はじめまして。」

真太郎 「どうも、香取真太郎です。」

剛輝   「君にはこの結城君と戦ってもらう。」

優衣   「え!」

美鈴   「そんな!」

源三   「社長、そりゃあいくら何でも無茶な!」

剛輝   「何か問題はあるかね?」

源三   「問題はあるかねって、大あり食いですよ。なんでよりによってこいつを選んだんですか?」

剛輝   「大あり食い・・・。それ、もらって良いかな?」

源三   「社長!」

剛輝   「ま、ま、まあまあまあ、落ち着きなさい。何も勝てと言ってる訳じゃない。
      二号機の性能をどれだけ引き出せるかを見るだけなんだから・・・。」

源三   「しかし・・・。」

結城   「どうすんですか、社長?僕はどっちでも良いけど?」

剛輝   「結城君、君にお願いしたい。」

結城   「だってさ。そういうわけだから、よろしく。」

真太郎 「こちらこそよろしく。」

結城   「ん?あれ?優衣じゃん。お前、まだいたんだ。」

真太郎 「え?」

結城   「あー、そう言うことか。こいつがお前の新しいご主人様ってわけだ。」

優衣   「・・・・・・。」

結城   「良かったなあ、僕と違って優しそうな奴で。
      ・・・でも、それも今日までだ。かわいそうに、今日でこいつクビだからな。」

真太郎 「おい!お前!」

結城   「おじさん。」

真太郎 「おじさん?」

結城   「しっかり逃げ回ってくれよ。あまり派手に壊すと、あそこのじじいが後でうるさいからね。
      じゃあ社長、僕はサロンにいるから、そちら側の準備が出来たら呼んで下さい。」

SE 自動ドアの開閉音。

真太郎 「社長、あいつは一体・・・。」

美鈴   「結城隼人。ゲーム会社が主催する数々の大会を総なめにしてきたゲームの達人。
      いえ、天才ね。その才能を買われ、16歳にして我が社に入社。
      今は彼がバルダーシリーズのエースパイロットよ。」

真太郎 「ふん。なんだ、ゲームオタクか。」

美鈴   「ちなみに彼、15歳で大学を卒業している本物の天才よ。
      実際、二号機以降の特化型バルダーの基本設計にも彼は参加しているわ。」

真太郎 「ええ?そんなぁ・・・。」

源三   「ふん。あんな小僧っ子一人いなくても、開発に影響はないわい。」

美鈴   「・・・優衣ちゃんには、初め彼のお世話をしてもらってたの。でも、彼の方からサポーターは
      いらないって言われてね。性格に問題はあるけど、まあ、天才にはありがちな話だから。」

真太郎 「そうだったんですか・・・。」

剛輝   「よし。では、15:00より香取君のテストを行う。それまでシミュレーターは自由に使うと良い。」

源三   「社長。俺はこいつの側につかせてもらいますよ。」

剛輝   「うむ。私からもお願いする。」

源三   「ほら、若造!今から特訓だ!あんなガキ、こてんぱんにしてやるぞ!」

真太郎 「は、はい!」

桜    「父ー。」

SE 自動ドアの開閉音。

美鈴   「社長・・・。」

剛輝   「何も言うな。獅子は我が子を千尋の谷へ突き落とすという・・・。
      彼にもこの試練を乗り越えてもらいたいものだ。」

美鈴   「三時まで5時間以上ありますけど、結城君には伝えなくて良いんですか?」

剛輝   「え?・・・ハンデだ。」


〈格納庫〉

源三   「よし。じゃあ香取、お前は三時ギリギリまでシミュレーターで特訓だ。
      お譲ちゃんは親父の応援をしててくれ、いいな。」

桜    「うん!」

真太郎 「あの、源さんは・・・?」

源三   「俺は今からやることがある。あの小僧を倒すための秘密兵器の調整だ。」

真太郎 「おお、秘密兵器ですか!」

源三   「大体、俺の作ったガンバルダーは完璧だっつーのに、あの小僧が
      コストより性能重視の特化型がどうのとか言い出しやがって・・・。
      あんなガキの玩具はいらねえっつー事を思い知らせてやる。」

真太郎 「なんか源さん頼もしい・・・。」

源三   「そのためにも、お前さんにはもう少しまともに操縦してもらわにゃならん。
      こっちのことは気にせず、しっかり練習しとけよ。」

真太郎 「はい!よーし、やるぞー!」

桜    「父ー!頑張れー!」

優衣   「頑張って下さい。」

真太郎 「はい。行ってきます。」

SE 車の自動ドアを閉めるような音。

源三   「よし。じゃあ、優衣。お前はこっちだ。」

優衣   「え?」

源三   「今回はお前にも協力してもらう。あいつ一人じゃ心配だからな」

優衣   「もしかして、完成したの・・・?」

源三   「そうだ。だから今から超特急で調整を済ますぞ。手伝ってくれ。」

優衣   「はい。」


〈本部〉

剛輝   「よーし、これより香取君のテストパイロット適正テストを始める。二人とも用意は良いか?」

*真太郎「・・はい。」(*マークは機械を通したような音声)

*結城  「こっちはいつでも行けますよ。」

剛輝   「うむ。では美鈴君、説明を。」

美鈴   「はい。今回の演習は公平を期す為、有利不利の無い模擬市街地で行います。
      弾はブルーペイント弾を使用し、コックピットへの直撃を受けたら負けとします。
      またこの演習は、香取君のパイロット能力のテストなので、三十分間で勝敗が
      決まらなかった場合、香取君の合格と言うことでテストは終了となります。」

*結城  「つまり、逃げ回ってても合格ってわけだ。ま、逃がさないけど。」

*真太郎「誰が逃げるか。さっきの練習でだいぶ操縦に慣れたからな。
        あまり舐めてると痛い目みるぞ。」

源三   「おお!その意気だ、若造。こんなガキに負けるんじゃねえぞ。」

桜    「父ー、頑張れー。」

*結城 「あっははは。面白いね、おじさん。・・・久しぶりに、ちょっとカチンと来たよ。
       じっくりいたぶってあげるから、覚悟してね。」

剛輝   「うむ。両者、意気込みは良し。それでは始める。ブレードファイトォ!レディー、ゴー!」

SE ゴングの音


〈模擬市街地〉

SE ロボットの歩く音、オンからオフへ(外からコックピット内へ)

真太郎 「・・・とは言ったものの、本当はあまり自信がないんだよな。何たって向こうは天才、
      こっちは昨日ここに来たばかり。ハンデがありすぎるよ。くそぉ。」

*源三 「おい、若造。聞こえるか?」

真太郎 「源さん?どうしたんですか?」

*源三 「さっき話した秘密兵器についてだが・・・。」

真太郎 「そうだ。そういや、それがあったんだ。源さん、秘密兵器って何なんですか?」

*源三 「まあ兵器っつっても武器じゃねえんだが。
      でもお前さんにゃあ、これ以上ないくらい心強いもんだ。」

真太郎 「何なんですか、それ?」

*源三 「説明は後だ。今からそいつを射出するから受け取り準備をしてくれ。まず左奥の黄色い
      レバーを手前に引いて、画面右下の小さいアイコンの右から三番目をタッチしてくれ。」

真太郎 「はい。えっと、これと・・・、右から三番目・・・。」

*源三 「できたか?」

真太郎 「はい。四つのボックスが表示されました。」

*源三 「よし。その中に、一つだけ青い表示のやつがあるだろ。それをオンにしてくれ。」

真太郎 「はい。」

*源三 「よし、これで準備は完了だ。後は、さっきの画面右下のアイコンが黄色く点滅したら、
      思い切りジャンプしろ。コンピューターが自動で拾ってくれる。」

真太郎 「わかりました。ところで源さん、その秘密兵器なんですけど結局何なんです・・・」

SE ロボットの銃撃の音

真太郎 「うわ!て、敵?でも、こっちのレーダーには何も・・・。」

*源三 「くそ、もう来やがったか。いいか、向こうのトライバルダーは遠距離射撃が得意分野だ。
      積んでるレーダーもこっちより性能がいい。」

真太郎 「そんなぁ。」

*源三 「だが、火力を重視した分スピードは落ちる。そこにこちらの勝機がある。
      とりあえず今は逃げろ。こいつが到着してからが勝負だ。」

真太郎 「わかりました。・・・って言ったって、どこから狙われてるかもわからないのに、
      どっちに逃げればいいのか・・・。」

SE ペイント弾が壁に当たる音

真太郎 「うわっ!くそ、迷ってる場合じゃない。とにかく動かなきゃ。
      このままここにいたらねらい打ちにされる。」

SE ロボットの走る音、オンからオフへ

真太郎 「銃撃が止んだ?よし、逃げ切ったのか?」

*結城 「お前馬鹿だろ。」

真太郎 「ゆ、結城!」

*結城 「狙撃された角度を考えれば、レーダーに頼らなくても
      相手の方向くらいは判るだろうに。自分から真っ直ぐ突っ込んでくるなんて。」

真太郎 「くっ。と、遠くにいたんじゃ、お前に攻撃する事が出来ないからな。わざとだよ。」

*結城 「へぇ、ホントに僕を倒す気でいるの?逃げ回っていれば、もしかしたら
      三十分持ちこたえられたかもしれないのに。・・・やっぱり馬鹿だね。」

真太郎 「何だと。」

結城   「まあいいや。その無謀なる勇気に敬意を表して、僕の場所を教えてあげる。ほら。」

SE ピピッという機械音

真太郎 「敵補足?距離・・・ジャスト二千。」

*結城 「お前の機体のレーダーは二千メートルが限界だろ?だから入ってあげたよ。」

真太郎 「くそー、なめやがって。」


〈本部〉

美鈴   「完全に遊ばれてますね。」

剛輝   「むうぅ。」

美鈴   「一メートル単位で相手との距離をコントロールするなんて・・・。結城君は本物の天才です。
      それに比べて香取君は逃げ回る事すら出来ない。差は歴然としています。
      やはり彼には荷が重すぎたみたいですね。」

桜    「父・・・。」

源三   「・・・まだだ。まだ奴には秘密兵器が残ってる。」

美鈴   「秘密兵器?」

源三   「頑張れ、若造。後もう少しの辛抱だ・・・。」


〈模擬市街地〉

SE ペイント弾が壁に当たる音

*結城 「ほらほら。逃げないと当たっちゃうよ。」

真太郎 「くそ。何とか射程内に入らないと・・・。」

*結城 「無駄だよ無駄。そちらの機体のデータは全て僕の頭に入ってる。
      僕がお前の射程内に入るなんてあり得ない。
      まあ、仮に入ったとしても、お前の弾が僕に当たるわけ無いけどね。
      ・・・さて、そろそろ当てていこうかな。」

SE 衝撃音

真太郎 「うわっ!左足被弾?」

*結城 「そらそら。もっと本気で逃げないと、首が飛ぶよ。はっはっはっはっは。」

真太郎 「まずい。このままじゃ、秘密兵器が届く前にホントにやられちゃう。」

*結城 「そら、右足。」

SE 衝撃音

真太郎 「うわっ!ほ、ホントに右足が・・・。狙って撃ってるっていうのか?」

*結城 「ホントならこれで逃げ回る事さえ出来ないんだけど・・・。訓練で良かったね。」

真太郎 「くそー。源さん、いつになったら届くんですか。」

*結城 「そら、左腕。」

SE 衝撃音

*結城 「そら、右腕。」

SE 衝撃音   ビービーと鳴り響く警告音

真太郎 「警告音が・・・。」

*結城 「いくらペイント弾といっても、かなりの衝撃があるからね。それだけ受ければ
      どこかおかしくもなるだろ。じゃあ、こいつはどうかな?」

SE 衝撃音

真太郎 「うわっ!」

*結城 「あはははは。すごいね。頭は吹っ飛ぶかと思ったけど、意外と頑丈だ。 お前、
      いいテストパイロットになるかもな。機体耐久力のテストパイロットに。はっはっはっはっは。」

真太郎 「ああ、メインモニターが・・・、ペイント弾で何も見えない・・・。」

*結城 「・・・さて、お遊びにも飽きたし、そろそろ終わりにしてあげるよ。」

真太郎 「くそぅ。何も出来ないまま終わるのか・・・。」

SE ピコンピコンという機械音

*源三 「よし!待たせたな、若造!」

真太郎 「源さん!」

*結城 「さあ!こいつでとどめだ!」

*源三 「今だ!飛べ!」

真太郎 「はい!ジャンプだ、ガンバルダー!」

SE ジャンプ音

*結城 「ふっ。その程度の動きで、避けられるとでも思ったのか?甘いんだよ!」

源三   「行けー!超獣、合体、ゴー、ガンバルダー!」


第二話 前編 ―完―



企業戦士 ガンバルダー  第一話 後編



(メインキャラクター)
香取 真太郎 (27歳 男)
香取 桜    (6歳  女)
藤原 剛輝   (48歳 男)
真宮寺 美鈴 (29歳 女)
*ニューキャラクター
真鍋 優衣  (23歳 女)
竹中 源三  (61歳 男)


第一話 父、頑張るだ! 後編 


〈社長室〉

美鈴   「昨日、来ませんでしたね、彼。」

剛輝   「うむ・・・。」

美鈴   「やはり、駄目だったのでしょうか?」

剛輝   「・・・いや、まだだ。まだ、決めつけるのは早いぞ、美鈴君。」

美鈴   「しかし、あれから何の連絡もないままですし、彼自身望まない人事だったようですから・・・。」

剛輝   「美鈴君、こうは考えられないかね。寝ずに一晩考えた結果、
      昨日は思わず寝坊してしまい、恥ずかしくて休んでしまった。」

美鈴   「社長・・・。それはないと思いますが。」

剛輝   「そうかね?」

SE ノックの音

美鈴   「はい。」

真太郎オフ 「失礼します。」

SE ドアを開け閉める音

美鈴   「香取君・・・。」

剛輝   「おお、香取君!待っていたぞ。」

真太郎 「昨日はすいませんでした。」

剛輝   「いやいや。なーに、誰にでも恥ずかしくて出社出来ない日はあるものだ。」

真太郎 「は?」

美鈴   「いえ、何でもないわ。それより、あなたの後ろにいる子は?」

真太郎 「はい、娘の桜です。ほら桜、挨拶して。」

桜    「・・・こんにちは。」

剛輝   「おお、こんにちは。桜ちゃんは何歳でちゅか?」

桜    「6歳。」

剛輝   「6歳でちゅか。偉いでちゅね。」

美鈴   「(咳払い)、社長・・・。」

剛輝   「ん?ああ、おほん。」

美鈴   「で、結論は出たのかしら。」

真太郎 「はい。」

美鈴   「聞かせてもらえるかしら。」

真太郎 「人事異動の件、お受けします。」

剛輝   「おお!そうか!」

真太郎 「但し、一つだけ条件があります。」

美鈴   「何かしら?」

真太郎 「桜も一緒に連れて行かせて下さい。」

剛輝   「何?」

美鈴   「でも・・・、あなたが言ったのよ、娘には知られたくないって。」

真太郎 「・・・ええ。でも考えたんです。桜に知られたくないって言うのは、
      私のエゴでしかないって。桜は私と一緒にいたいって言いました。
      だったら、いつか私の事を軽蔑して嫌いになるかもしれないけど、
      それまでは桜の望むようにしてあげようって。いつかは桜も大人になって
      私の元を離れる日が来るんだから、それまではなるべく一緒にいてあげようって・・・。」

美鈴   「香取君・・・。」

剛輝   「うおおおぉぉん(泣き)。同じ娘を持つものとして、君の複雑な気持ちよくわかるぞ!」

美鈴   「しゃ、社長?」

剛輝   「香取君、桜ちゃんの為に優秀な家庭教師とヘルパーを付けさせよう。部屋も、
      二人で住んでも広いくらいの所を用意させる。安心して桜ちゃんを連れて行くと良い。」

真太郎 「あ、ありがとうございます、社長!」

剛輝   「なあに、これくらい同じ娘を持つ・・・。」

美鈴   「とにかく!香取君、私たちはあなたの決断を歓迎します。よろしくね。」

真太郎 「はい。」

美鈴   「じゃあさっそくで悪いんだけど、今から私たちと一緒にアークセプターに移動してもらいます。」

真太郎 「アークセプター?」

美鈴   「我が社のブレード開発施設よ。ここからヘリで一時間くらいの所にあるわ。」

真太郎 「え?でもまだ何も準備が・・・。」

美鈴   「アパートの解約から荷物の運び出しまで、全部うちのスタッフにやらせるから安心して。
      香取君にはすぐにでも仕事に取りかかってもらいたいの。」

剛輝   「新製品の開発とは、時間との戦いなのだ。君にもわかるだろう?」

真太郎 「・・・はい。わかりました。」

美鈴   「じゃあ詳しい説明は向こうに着いてからするとして、まずは向かいましょう。
      ヘリの中では簡単なブレードの操縦マニュアルを教えるわね。」

真太郎 「はい。」


SE ヘリコプターのプロペラ音
〈ヘリの中〉

美鈴   「・・・まあ、大体こんな感じ。基本制御に関しては全てコンピューターが自動で行ってくれるわ。
      オートに組み込まれていない体勢や行動に関してはマニュアル操作が必要だけど、
      かなりのパターンが組み込まれているから、その都度操作パターンの切り替えをするだけで、
      ほとんどの状況に対応出来るはずよ。」

真太郎 「はあ・・・。」

美鈴   「何か質問は?」

真太郎 「あのー。」

美鈴   「何?」

真太郎 「ブレードの開発って、どのくらい進んでるんですか?」

美鈴   「一応、今現在試作機として四体のブレードが完成してるわ。」

真太郎 「四体も?」

美鈴   「ええ。一般汎用タイプ、近接戦闘タイプ、後方支援タイプ、そして特殊任務タイプの四機。
      あなたには一般汎用タイプに乗って、その他の特化型のデータ取得に協力して欲しいの。」

真太郎 「特化型の・・・。」

美鈴   「特化型はその名の通り、それぞれの状況に適した仕様になってるわ。だから当然、
      あなたの乗る汎用型は不利な条件で相手をしなければならない。とても厳しい仕事よ。」

真太郎 「・・・・・・。」

美鈴   「でも、香取君。あなたならしっかりやってくれると信じています。」

真太郎 「・・・はい。」

美鈴   「さあ、そろそろ着くわ。」


SE 足音

〈アークセプター施設内〉

美鈴   「ここから右側が生活エリア。そして左側が開発エリアよ。
      両エリア共に、地上三階地下四階建ての造りになってるわ。」

桜    「あ、アイスクリーム!ねえ父、見て!」

真太郎 「本当だ。クレープ屋に映画館、ゲームセンターまで・・・。」

剛輝   「飲食店はもちろん、ここには生活に必要な様々な店や娯楽施設が全て揃っている。
      桜ちゃんもきっと気に入ってくれると思うよ。」

優衣OFF「社長ー、美鈴さーん。」

美鈴   「優衣ちゃん。」

優衣   「ハアハア。すみません。お部屋の準備をしてたら遅れちゃいました。待ちました?」

美鈴   「いいえ、私たちも今着いた所よ。香取君、紹介するわね。
      あなたと桜ちゃんの生活をサポートしてくれる真鍋優衣ちゃん。」

真太郎 「え?サポートって?」

美鈴   「まあ、秘書兼ヘルパーみたいなものと考えていいわ。
      桜ちゃんの事もあるし、あなたには必要でしょ?」

真太郎 「はあ・・・。」

優衣   「はじめまして、真鍋優衣です。これからよろしくお願いします。」

真太郎 「あ、どうも。香取真太郎です。あの、こっちは娘の桜です。
      こちらこそ、いろいろよろしくお願いします。」

美鈴   「じゃあ優衣ちゃん、私たちは本部の方に行くから、桜ちゃんを部屋に案内してくれる?」

優衣   「はい、わかりました。じゃあ行こっか、桜ちゃん。」

桜    「父は?」

優衣   「お父さんはお仕事に行かなきゃ行けないの。」

桜    「桜も一緒に行く。」

優衣   「え?でも・・・。」

桜    「桜も父と一緒がいい。」

優衣   「どうしましょう?」

剛輝   「連れて行けばいい。」

美鈴   「社長。」

剛輝   「父親の働いている姿を見るのも良い勉強だ。

      香取君だってそれを望んだから連れて来たのだろう?」

真太郎 「・・・はい、お願いします。」

美鈴   「(ため息)わかりました。じゃあ、優衣ちゃんも一緒に来てくれる?」

優衣   「はい。桜ちゃん、お姉ちゃんと一緒にお父さんのお仕事を見学しようか?」

桜    「うん!」

美鈴   「とりあえず格納庫に向かうわよ。」

SE 足音 FO


〈格納庫へ続く廊下〉

SE 足音

優衣   「・・・じゃあ、桜ちゃんは・・・。」

真太郎 「ええ、ずっと寂しい思いをさせてきたんです。
      だから、これからは少しでも長く側にいてあげようって・・・。」

剛輝   「うおおおぉぉぉん。」

優衣   「そうだったんですか・・・。桜ちゃん、良かったね。」

桜    「うん。」

優衣   「それに、これからはお姉ちゃんもいつも一緒にいてあげるからね。」

桜    「優衣ちゃんも?」

優衣   「そうよ。そうだ!今日はあたしと一緒に寝ようか?」

真太郎 「え?」

桜    「本当?」

優衣   「うん。本当よ。」

真太郎 「ちょっと!一緒にって、どういう事ですか?」

優衣   「え?一緒にって、同じベッドで寝るって事ですよ。」

真太郎 「そうじゃなくて・・・。」

美鈴   「ああ、ちゃんと言ってなかったけど、
      優衣ちゃんには香取君と同じ部屋に住んでもらうから。」

真太郎 「ええ!同じ部屋って・・・。」

美鈴   「もちろん、同じ部屋って言うのは同じ家という意味よ。
      香取君の部屋は3LDKのタイプにしたから、その家の一部屋を彼女に貸してあげて。」

真太郎 「いや、でも・・・。」

優衣   「大丈夫です。こう見えても私、結構家事は得意なんです。」

真太郎 「いや、そういう事じゃなくて・・・。」

美鈴   「桜ちゃんがいるから大丈夫よ。いくら何でも桜ちゃんのいるところで
      彼女に手を出そうとは思わないでしょう?」

剛輝   「何だったら、男性用娯楽施設の場所を後で教えてやるぞ。」

真太郎 「社長!」

剛輝   「はっはっはっはっは。」

美鈴   「さあ、着いたわ。」

SE 自動ドアの開く音

真太郎 「うわぁ。これが、ブレード・・・。」

剛輝   「これが我が社が開発中のブレード、バルダーシリーズ試作一号機ガンバルダーだ。」

真太郎 「ガンバルダー・・・。」

美鈴   「全てのバルダーシリーズの基本となっている汎用タイプ。
      あなたにはこの機体に乗ってもらう事になります。」

真太郎 「これが俺の乗る機体。」

源三OFF「社長!」

SE 走ってくる音

源三   「昨日来るって聞いてたのに来ないから、どうしたのかと思いましたよ。」

剛輝   「いやぁ、いろいろと準備に手間取ってしまってな。」

美鈴   「紹介するわ。チーフメカニックの竹中源三さんよ。
      こちらは一号機のテストパイロットの香取真太郎君。」

真太郎 「はじめまして、香取です。よろしくお願いします。」

源三   「おう、こっちこそよろしくな。
      わしの事は源さんとでも呼んでくれ。みんなそう呼んでるから。」

真太郎 「はい。」

源三   「しかし、こう言っちゃ何だが、思ってたよりもずいぶん冴えないと言うか平凡な奴だな。
      社長が、『我が社の中にすごい逸材がいた~!』なんて大騒ぎするから、
      どんなすごい奴が来るのかと思ったら、全然そんな風には見えねえなぁ。
      ま、人は見かけによらないって言うけどな。」

美鈴   「そうですね。実は私もそれは思っていました。本当に彼にそんな資質があるのかどうか・・・。」

剛輝   「何だ二人とも。私の目を疑うというのか?」

美鈴   「いえ、そう言うわけでは。でも、適性検査の時点で間違いがあったとすれば・・・。」

剛輝   「わかった。なら、実際に今試してみれば良かろう。シミュレーターは使えるな?」

源三   「ええ。」

剛輝   「よし。香取君、君の実力の程をみんなに見せてやってくれ。」

真太郎 「え?」

桜    「父ー!頑張って!」

優衣   「頑張って下さい。」

真太郎 「でもまだ、動かし方もちゃんとは・・・。」

剛輝   「大丈夫だ。やりながら覚えてくれればいい。そのためのシミュレーターでもある。」

真太郎 「・・・はい。」

SE 車の自動ドアを閉めるような音

*剛輝 「香取君、聞こえるか?」(*マークは機械を通したような音声)

真太郎 「はい、聞こえます。」

*剛輝 「今から簡単にシミュレーターの説明をする。」

真太郎 「はい。」

*剛輝 「メイン画面上に敵ブレードが現れる。君はそれをただ倒せばいいだけだ。はじめ、
      敵は離れた場所に出現するから、敵が近づいてくる間に色々と操作を確かめておくといい。
      敵の位置は右上に表示されているレーダーを見れば確認出来る。
      君の武器は、今回はバルダーライフルとバルダーソードの二種類だけ。敵も同じだ。
      後は、君の思うようにやってみるといい。それでは、健闘を祈る。」

真太郎 「え?それだけ?」

*桜   「父ー!頑張れー!」

真太郎 「とりあえず、やれるだけやってみるしかないか。えっと、これがライフルで・・・。」

SE ライフルの音(大砲のような音)

真太郎 「おわっ。ライフルの反動までしっかり再現されてる。このシミュレーター、結構すごいな。
      って、感心してる場合じゃない。えっと、これがバルダーソード・・・。おお、すげー。
      なんか、学生の頃によくやってたゲームを思い出すな。そんで、これが前進・・・。
(SEロ ボットの歩く音)
      これが横移動・・・。
(SE ロボットの歩く音)
      おお!何か俺すごいかも。これなら何とかなるかもな。よし、敵をやっつけに行くか。」


桜    「父、大丈夫かな。」

優衣   「大丈夫。ね、社長。」

剛輝   「うむ。わしは彼を信じている。だから、桜ちゃんもお父さんを信じなさい。」

桜    「うん。」

美鈴   「・・・源さんはどう思います?」

源三   「う~ん。社長の目を信じたいところだが、正直何とも言えんなぁ。」

美鈴   「そうですか。」


SE ロボットの歩く音

真太郎 「そろそろ敵と遭遇してもいい距離なんだけど・・・。おかしいな。何処かに隠れてるのかな。」

SE ライフルの音  爆発音  ビー、ビーという警告音(続く)

真太郎 「うわっ。う、撃たれた?どこから?」

SE ライフルの音  爆発音

真太郎 「くっ、また撃たれた?とにかく逃げなきゃ。・・・あれ?動かない。なんで?あ!足をやられてる!」

SE ライフルの音  爆発音

真太郎 「うわぁ!ちょ、直撃?システムエラーって・・・。おい、動けよ!動けったら!」

SE ロボットの歩く音

真太郎 「敵?真正面!ラ、ライフル。・・・くそ、何で動かないんだよ!ああ、来た。うわああぁぁ!」

SE 爆発音


剛輝   「な、何と言う事だ・・・。」

美鈴   「社長・・・。」

剛輝   「い、いや、今のは初めてだったからしょうがない。次こそ彼の実力を見せてやろう。」

*剛輝 「そう言うわけだから、香取君、次こそはしっかり頼むぞ。」

SE 爆発音(四回)

源三   「五回連続撃墜。」

美鈴   「それも、全て三分持たずに。」

剛輝   「ななな、何と言う事だ!」


SE 車の自動ドアが開くような音

桜    「父ー!」

優衣   「香取さん・・・。」

剛輝   「ええい!こんなはずはない!データでは、彼はすごい資質を持っていると・・・。」

美鈴   「社長、そのデータちょっと見せてもらえますか?
      ・・・確かに、このデータを見る限りでは、そうですね。」

剛輝   「だろ?わしの目に狂いはないはずなんだが・・・。」

美鈴   「社長、これ、本当に彼のデータですか?」

剛輝   「間違いない。商品開発部に優秀な人材がいると言うのを聞いて、
      新製品の企画書と一緒にそのデータも取り寄せたんだから。
      企画書も良く出来たものだったし、こいつならと思ったんだが・・・。」

真太郎 「え?」

美鈴   「企画能力とパイロットの適正は別です。」

剛輝   「しかし、データ上は・・・。」

真太郎 「ちょっと見せて下さい。・・・これは。」

美鈴   「どうしたの?」

真太郎 「・・・これは、私のじゃありません。」

優衣   「え?」

美鈴   「どういう事?」

真太郎 「これは多分、うちの部の進藤って奴のデータです。」

剛輝   「何!」

真太郎 「・・・この前、私とその進藤って奴に新製品のプレゼンの仕事が来たんです。
      良くできた方を採用するって。進藤は同期の中じゃ断トツに仕事の出来る奴です。
      頭も良いし運動神経も良い。多分、手違いでそいつのデータに
      名前だけ私の名が社長の下に送られたんじゃないですか。」

剛輝   「と言う事は・・・。」

美鈴   「人違い?」

真太郎 「ええ。」

源三   「なんてこった・・・。」

美鈴   「どうするんですか、社長。」

剛輝   「どうするったって・・・。」

美鈴   「ここまで内部の事を知られちゃったら、人違いだったから元の部署に戻って下さい
      なんて訳には行きませんよ。」

剛輝   「うむぅ・・・。」

優衣   「香取さん・・・。」

剛輝   「あー、香取君。君の処遇については一晩考えさせてくれ。
      とりあえず今日は、部屋に帰ってゆっくり休むと良い。」

真太郎 「・・・はい。」

美鈴   「優衣ちゃん。彼を部屋まで連れて行ってあげて。」

優衣   「はい。さあ、香取さん。」

桜    「父・・・。」

SE 去っていく足音

源三   「・・・どうします?社長。」

剛輝   「源さんはどう思う?」

源三   「難しいんじゃないですかね、彼では。」

剛輝   「やはりそう思うか。」

美鈴   「でも、今さら社の方に帰すわけには・・・。」

剛輝   「わかっている。・・・一晩考えさせてくれ。」

美鈴   「社長・・・。」


〈香取の家(部屋)〉

優衣   「・・・向こうが洗面所とお風呂場で、ここが寝室です。可変式のダブルベッドで、
      シングルベッド二つにもする事が出来ます。」

桜OFF 「ねえ、父ー!フカフカだよー!」

真太郎 「・・・・・・。」

優衣   「香取さん・・・。大丈夫ですよ。人違いだったとはいえ、
      一度選んだパイロットを替えるような事はしませんって。」

真太郎 「・・・ありがとう、真鍋さん。」

優衣   「(笑い)あたしのことは優衣ちゃんで良いですよ。桜ちゃんもそう呼んでくれてますし。
      これからは家族みたいなもんですから、ね。」

真太郎 「ありがとう、優衣ちゃん。」

優衣   「・・・あたしも真太郎さんって呼んじゃおうかな。」

真太郎 「え?」

優衣   「じゃあ、そろそろ夕飯の支度しますね。
      今日は歓迎会もかねて、ごちそう作りますからいっぱい食べて下さいね。」

優衣オフ「桜ちゃん、今日は何が食べたい?」

桜オフ  「ハンバーグ!」

優衣オフ「よーし!じゃあ、美味しいハンバーグ作ってあげるね。」

桜オフ  「わーい。ハンバーグ!ハンバーグ!」

真太郎 「(ため息)悩んでてもしょうがないか・・・。なるようにしかならないもんな。
      ・・・よし。桜、父達も手伝うぞ!今夜は三人でパーティーだ!」

桜    「うん!」


第一話 後編 ―完―

企業戦士 ガンバルダー  第一話 前編


*ロボットアニメ風ボイスドラマ。色んなパロディを含みます。

*シリアスな部分とコミカルな部分が混ざっています。

(メインキャラクター)
香取 真太郎 (27歳 男)
香取 桜    (6歳  女)
藤原 剛輝   (48歳 男)
真宮寺 美鈴 (29歳 女)

(チョイ役)

ナレーション (性別不問)
部長       (42歳 男)
同僚       (27歳 男)
OL1       (24歳 女)
OL2       (24歳 女)


第一話 父、頑張るだ! 前編


NA 『西暦2053年。日本は増大し続ける失業者を救うため、ある法律を制定する。
   適正職業就職法。これにより、学生を終了したものは就職適正国家試験を受け、
   その適性に応じた職業に自動的に就職を決定される事となる。
   この法律により失業者の数は激減し、国家が指導する企業の下、
   安定した暮らしが提供されることとなった。初めは民主主義に反すると、
   一部の勢力は反対運動をしていたが、安定した生活を保障された人々は
   いつしかそんな事も忘れ、日々の生活を平和に暮らしていた。
   そして、時は2079年。
   とある企業に就職し、退屈ながらも平穏に暮らしている一人の若者がいた。
   その名も香取真太郎。
   二年前に亡くなった姉の一人娘『桜』を男手一つで育てている、
   情けなくも心優しいこの男に、今、時代の荒波が襲いかかろうとしていた。』


〈オフィス内> 仕事をしている男女のガヤ

部長   「おい、香取!」

真太郎 「は、はい!」

部長   「この間頼んでおいた企画書は出来てるだろうな?」

真太郎 「へ?企画書?」

部長   「新製品のプレゼンの企画書だ。お前と進藤の二人に頼んでおいたやつだ。」

真太郎 「あ・・・。」

部長   「あ・・・じゃない!まさか忘れてたわけじゃないだろうな。」

真太郎 「あ、あの、今すぐ・・・。」

部長   「もういい!ったく・・・。ま、初めからお前の企画書なぞ当てにはしてないからな。」

真太郎 「・・・すみません。」

部長   「もういい。さっさと席に戻って、ほかの仕事をやっとけ。」

真太郎 「はい・・・。」

OL1オフ「(笑い)香取さん、また部長に怒られてる。」

OL2オフ「ホント、さえないよね、あの人。」

OL1オフ「しかも、知ってる?香取さん、娘が一人いるのよ。」

OL2オフ「えー、ホント?」

OL1オフ「何でも、亡くなったお姉さんが残した娘らしいけど。」

OL2オフ「さえないコブ付き、絶対結婚したくない男ナンバーワンね。」

OL1オフ「ねー。(笑い)」

真太郎 「はあ・・・。」

SE カラスの鳴き声


〈真太郎のアパート> SE ドアを開ける音  SE ビニール袋を置く音

真太郎 「桜ー。帰ったぞー。」

桜    「父ー!」

真太郎 「おう、桜。今日もいい子にしてたか?」

桜    「うん!ねえねえ父、これ見て。」

真太郎 「うん?何だ?お、これ、もしかして・・・。」

桜    「うん!父!ガッコで描いたの。」

真太郎 「桜・・・。」

桜    「父・・・?」

真太郎 「桜!お前は父の誇りだ!んー。(抱きしめる)」

桜    「ち、父。痛い・・・。」

真太郎 「あ、す、すまん。」

桜    「ううん、大丈夫。」

真太郎 「ごめんな。その、あまりに感動しちゃって。」

桜    「父、どうかしたの?」

真太郎 「ん?いや、何でもない。そうだ、桜。今日は桜の好きなハンバーグだぞ!」

桜    「ハンバーグ!わーい、父大好き!」

真太郎 「そうか、父大好きか。父も桜が大好きだぞ。」

桜    「ハンバーグ!ハンバーグ!」

真太郎 「よーし、じゃあご飯の支度をしよう!」

桜    「うん!」

ここから徐々にFO
SE ビニール袋の音

真太郎 「桜はまず、お米を研いでくれるか。」

桜    「もう研いだ!」

真太郎 「え?」

桜    「父が帰ってくる前に、お米研いだ。後はスイッチ押すだけ。」

真太郎 「桜、お前は本当にいい子だな。」

桜    「えへへ。」


〈オフィス内〉 仕事をしている男女のガヤ

同僚   「おい香取、聞いたか。急遽人事異動があるってよ。
      今日の昼休みに張り出されるらしいぞ。」

真太郎 「へー。」

同僚   「何でも、部長を飛び越す異例の昇進らしいぜ。」

真太郎 「部長を?それすごいな。」

同僚   「ま、俺たちには関係ない話だけどな。俺の勘じゃ、たぶん進藤あたりじゃないかな。
      あいつ、俺たちの同期の中じゃダントツの成績だしな。」

真太郎 「うん・・・。」

同僚   「あーあ、いいよな、成績のいいやつは。」

部長オフ「おい、香取!ちょっと!」

真太郎 「あ、はい!」

同僚   「おい、また何かやったのか?」

真太郎 「いや、そんな心当たりは・・・。」

同僚   「また忘れてんじゃねえの?なんか怒ってるぞ、部長。」

真太郎 「いや、ホントに・・・。」

同僚   「とにかく急げよ。」

真太郎 「うん・・・。」

   間。

真太郎 「何でしょう?」

部長   「・・・・・・。」

真太郎 「・・・部長?」

部長   「これを持って、社長室に行くように。」

真太郎 「・・・は?」

部長   「聞こえなかったのか?これを持って社長室に行くように。」

真太郎 「え?あの・・・。」

部長   「早くしろ!」

真太郎 「は、はい!」

SE 走り去る音

部長   「ふう・・・。何だって、あんな奴が・・・。」


〈エレベーター内〉

真太郎 「何だって社長室なんかに・・・。お届けものかな?これ、置いてくればいいのかな?
      ったく、ちゃんと最後まで用件を言ってくれりゃいいのに・・・。」

SE エレベーターが着く音

真太郎 「お、着いた。とりあえず、秘書課の人に話せばわかるかな。」


〈社長室前〉

真太郎 「あの・・・、商品開発部の香取ですけど、
      部長にこれを持って社長室に行けと言われたのですが・・・。」

美鈴   「ああ、香取君ね。待っていました。さあ、こちらへ。」

真太郎 「え?は、はい・・・。」


〈社長室〉 SE 扉が開く音

美鈴   「社長、お連れしました。」

剛輝   「うむ。」

SE 扉が閉まる音

真太郎 「・・・・・・。あの・・・。」

剛輝   「よく来てくれた、香取君。私が社長の藤原剛輝だ。」

美鈴   「社長秘書の真宮寺美鈴です。」

真太郎 「はあ・・・。」

剛輝   「立ち話もなんだ。まあ、掛けたまえ。」

真太郎 「え?は、はい・・・。」

剛輝   「君も知っているとは思うが、わが社は元は小さな貿易会社だった。
      名もない小さな会社だったそれを、私が一代でここまで大きな会社にしたのだよ。
      ・・・むろん簡単なことではなかった。が、私の飽くなきチャレンジ精神により、
      様々な業界に手を出すことで、今日の大きな会社へと成長してきた。」

真太郎 「はあ・・・。」

剛輝   「だが私のチャレンジは、まだ終わってはいない。現状に満足することなく、まだまだ
      新しい分野に手を広げようと考えている。そして、もうすでに着手し始めているのだ。」

真太郎 「はあ・・・。」

剛輝   「書類には、もう目を通してもらえたかな?」

真太郎 「は?」

美鈴   「人事異動の書類です。その封筒の中に入っていたでしょう?」

真太郎 「え?これ・・・?」

剛輝   「そうだ。君には、わが社の最新部署、ブレード開発部に行ってもらう。」

真太郎 「ブレード・・・?え?ブレードってあの・・・?」

美鈴   「そう。汎用人型有人兵器ブレード。
      今、各国で開発の競争が行われている、最新事業です。」

剛輝   「君にはそのテストパイロットをやってもらう。」

真太郎 「え?テストパイロット?あの、よく意味がわからないのですが・・・。」

剛輝   「テストパイロット。つまり、我が社のブレードに乗ってもらい、
      データを取るのに協力して欲しいという事だ。」

真太郎 「ちょ、ちょっと待ってください!そんなの俺には・・・。」

剛輝   「大丈夫だ。今のブレードはほとんどがオートメーション化されていて、操作自体は簡単だ。
      まあもちろん、マニュアル操作をしようとすれば別だが。」

真太郎 「いや、そういう事じゃなくて、兵器の開発なんて、私は・・・。」

美鈴   「香取君。兵器と言ったって、9年後の2088年には正式にオリンピック競技に認定される
      スポーツ用の機体なの。」

真太郎 「え?」

美鈴   「これはまだ正式発表前なんだけど、各国が持っている軍事力を披露する場として、
      ブレードによる戦闘競技がオリンピック化される事になっているのよ。」

真太郎 「そ、そうなんですか?」

美鈴   「ええ。でもこれは、その後の国家間の勢力バランスに大きな影響を与える
      とても重大なものなの。だからどの国も、目の色を変えてこの事業に取り組んでいるわ。」

剛輝   「そこで、私もこれに目を付けたという訳だ。もうすでに優秀なメカニックもそろえてあるし、
      試作機も完成している。君には正パイロット候補の相手を務めてもらいたい。」

真太郎 「・・・・・・。」

美鈴   「まだ読んでないみたいだから一応簡単に説明させてもらうけど、
      少なくとも二年間は我が社の研究施設で生活してもらいます。」

真太郎 「え?」

美鈴   「飲食店はもちろん、スポーツジムから娯楽施設まで何でも揃っているから、
      外に出なくても何にも不自由はないわ。一応休みの日は外出許可を取れば
      外に出られるけど、その場合監視の者を付けさせてもらいます。」

真太郎 「監視?」

美鈴   「ええ、情報が外に漏れないようにする為よ。申し訳ないけれど、
      それだけこの計画が我が社にとって重要なモノだと理解してくれるとありがたいわ。」

真太郎 「・・・・・・。」

美鈴   「何か質問は?」

真太郎 「あの・・・。」

美鈴   「何?」

真太郎 「あの、何で私なんかが・・・。」

美鈴   「あなたの適正試験の結果を見せてもらいました。その結果、わが社で一番
      パイロット適正があると、社長自ら判断されました。とても光栄なことよ。」

真太郎 「でも・・・。」

美鈴   「お給料も、危険手当などを含むと今までの三倍以上。悪くない話だと思うけど?」

剛毅   「どうだね、香取君。やってくれるかね。」

真太郎 「・・・出来ません。」

美鈴   「え?」

真太郎 「いくら競技用の機体と言ったって、兵器は兵器です。そんな物を造っているなんて、
      娘には絶対言えません。それに、娘を一人残してそんなところには行くわけには・・・。」

美鈴   「香取君・・・。」

真太郎 「ですから、申し訳ありませんがこの話、無かった事にしてください。」

剛輝   「・・・・・・。」

真太郎 「すみません・・・。」

剛輝   「・・・そうか。わかった。」

美鈴   「社長!」

剛輝   「君の、娘を思う気持ち、同じく娘を持つものとして痛いほどよくわかった。」

真太郎 「社長・・・。」

剛輝   「すまなかったな、呼び出したりして。」

真太郎 「いえ、こちらこそ我が儘を言って申し訳ありませんでした。」

美鈴   「社長、ホントに良いんですか?」

剛輝   「うむ、仕方ない。無理強いは出来んからな。」

真太郎 「では、私はこれで・・・。」

剛輝   「あ、そうそう。辞職願いは早めに出すように。」

真太郎 「へ?」

剛輝   「辞職願いだよ。もう君には用は無いから。」

真太郎 「そ、そんな!」

剛輝   「あー、美鈴君。今の法律だと、確か辞職した者は
      一年間他の職業に就く事は出来ないんだったっけ?」

美鈴   「はい。しかも、その後もずっと辞職の経歴は残りますから、
      再就職はかなり優秀な者でないと難しいでしょうね。」

剛輝   「そうか・・・。それは大変だ。」

美鈴   「はい。」

真太郎 「ちょっと待ってくださいよ!辞職って、そんな!」

剛輝   「だって、それ以外にうちは君を必要としてないんだからしょうがない。
      会社の人事は絶対。ユー、アンダスタン?」

真太郎 「でも・・・!」

美鈴   「じゃあ、こうしたらどうでしょう。あなたの身に何かあった場合、保険金の他に、
      娘さんが成人するまで、もしくは大学を卒業するまでの養育費は、
      わが社のほうで持つ。いかがですか、社長?」

剛輝   「うむ、良いだろう。娘を思う父親の気持ちは、私も痛いほどわかるからな。」

美鈴   「いかがかしら、香取君。」

真太郎 「・・・・・・。」

美鈴   「パイロットとしてわが社で働くか、それとも職を失って路頭をさ迷うか。
      答えは決まってると思うけど?」

真太郎 「・・・一晩考えさせてもらえますか?」

剛輝   「良いだろう。今日はもう帰って、よく考えてみるんだな。・・・いい返事を期待してるよ。」

真太郎 「・・・失礼します。」

SE ドアを開け閉める音

美鈴   「・・・社長、来ますかしら、彼。」

剛輝   「来る。・・・私が見込んだ男だからな。」


〈真太郎のアパート〉 SE ドアを開ける音

真太郎 「・・・ただいま。」

SE ドアを閉める音

桜    「父ー!お帰りなさい!」

真太郎 「ああ、桜・・・。」

桜    「?父、どうした?元気ない?」

真太郎 「いや、何でも無い。ちょっと疲れてるだけだよ。」

桜    「大丈夫、父?」

真太郎 「うん、大丈夫。」

桜    「父、これ見て元気出して。」

真太郎 「え?」

桜    「これ。今日ガッコから帰って、また描いたの。父の顔。」

真太郎 「桜・・・。」

桜    「父、これ見て元気出して。」

真太郎 「桜・・・。(涙ぐむ)」

桜    「父・・・?」

真太郎 「桜・・・、もし父がどっかに行っちゃったら、悲しいか?」

桜    「え・・・?父、どっかに行っちゃうの?」

真太郎 「行かないよ。桜を置いてどっか行くわけ無いだろ。・・・ただ、もしだ。
      もし、父がどうしても遠くに行かなくちゃならなくなったら、桜悲しいか?」

桜    「・・・うん。」

真太郎 「そっか・・・。そうだよな。」

桜    「でも・・・、もし父がどうしても遠くに行かなくちゃならないなら、桜も一緒に行く!」

真太郎 「桜・・・。」

桜    「・・・桜、ホントはガッコも行きたくない。ずっと父と一緒にいたい。
      だって、桜には父しかいないもん・・・。桜にはもう母はいないから・・・。」

真太郎 「桜・・・。明日、遊園地に行くか?」

桜    「え?だって明日はガッコが・・・。」

真太郎 「ずっと父といたいんだろ?」

桜    「・・・いいの?」

真太郎 「ああ。」

桜    「うん!行く!」

真太郎 「よし。じゃあ、とりあえずご飯にしよう。何か食べたいものはあるか?」

桜    「ハンバーグ!」

真太郎 「(笑い)そうか。よし、じゃあ今からおいしいハンバーグを食べに行こう!」

桜    「わーい!」

真太郎 「ほら、すぐに支度して。」

桜    「はい、父!」

真太郎 「(笑い)・・・桜、お前を独りにはしない。絶対に。」


第一話 前編 ―完―

『恋するベイビー・トゥルース』



登場人物

斎藤 純 (さいとうじゅん)   ♂

西条 陽子 (さいじょうようこ) ♀

藤城 美紀 (ふじしろみき)  ♀

草野 匠 (くさのたくみ)    ♂

高田 祐樹 (たかだひろき)  ♂

三上 明 (みかみあきら)   ♂

(一言キャラ)

大森さん (女)  ♀

男子a        ♂

店員         ♂♀

母          ♀



〈体育館裏〉

純     「あの、大森さん。俺とつき合って下さい!」

大森   「ごめんなさい。私好きな人がいるの。」

純     「え?」

大森   「じゃあ、私部活があるから。」

純     「え?ちょっと、あの、大森さん!・・・はあ。」

草野   「いやー、また駄目だったね。」

高田   「高校に入ってこれで8人目か。」

草野   「そろそろギネスものだな。」

高田   「こうなったら、いっそのこと伝説を作ろう。フラれまくり伝説を。」

純     「うるせえ!お前ら、どこに隠れてたんだよ!
      つーか、何でいつもそうやって人の告白を覗き見してんだよ!」

草野   「だって、こんな楽しいものを見逃しちゃもったいないから。なあ。」

高田   「ああ。これはもう、俺たちにとって一つのイベント、お祭りだからな。」

純     「くそー!何でこんなふざけた奴らがモテて、

      俺みたいなまっとうな人間がフラれ続けなきゃならないんだ。
      世の中間違ってる。この世に神はいないのか。」

草野   「何言ってるんだよ。原因はお前のルックスと性格だろ?」

純     「ぐ・・・。」

高田   「そう。ルックスも普通。性格も普通。でもその友達は、格好良くてユーモアもある。
      そりゃ誰だって俺たち選ぶわな。」


純     「何言ってんだよ。男は顔じゃない。心だ。
      俺はお前らみたいな、女なら誰にでも優しいナンパな奴とは違うんだ。」

高田   「はあ?お前こそ何言ってんだよ。

      その髪セットするのに、毎朝三十分かけてんの知ってんだぜ。」

純     「う・・・。」

草野   「それに、祐樹は確かに女ったらしだけど、俺は久美子一筋だぜ。」

高田   「何だよ、裏切りかよ、匠。俺はみんなに公平に愛を与えてるだけだぜ。」

草野   「お前のは、自分の欲望を与えてるだけだろ。」

高田   「欲望って・・・。」

純     「あー、もううるさい!いいか見てろよ。
      いつかお前らが度肝を抜かすような可愛い彼女を作って、

      俺が正しいことを証明してやるからな。」

草野   「はいはい、わかったわかった。」

高田   「度肝を抜くような奴じゃなくていいから、とりあえず彼女作ってみろよ、出来るもんならな。」

純     「うるせー、お前ら死ね。」

美紀   「あのー。」

純     「何だよ、うるさいな!え?あ、ご、ごめん。」

草野   「あれ?藤城さんじゃん。どうしたの?何か用?」

高田   「何々?俺に用かな?俺なら今フリーだよ。」

純     「馬鹿!学校のアイドル藤城さんが、お前みたいな女ったらしに用があるわけ無いだろ。」

高田   「何だと?じゃあ、一体誰に用だっての。」

草野   「まあまあ。で、藤城さん。何?」

美紀   「あの・・・、斎藤君にちょっと話があるんですけど、いいですか?」

純     「えー、俺に!」(三人同時に)
草野   「えー、純に!」(三人同時に)
高田   「えー、純に!」(三人同時に)

高田   「おい純、お前藤城さんに一体何したんだ。」

草野   「一緒に謝ってやるから、俺たちに正直に話してみろ。」

純     「ちょ、ちょっと待てよ。俺、藤城さんとは話したこともないよ。」

高田   「だろうな。」

草野   「お前にとって、最も遠い存在だからな。」

純     「うるせー。」

美紀   「あの・・・。」

草野   「あ、ごめんごめん。で、純に話って何かな?」

美紀   「出来れば、二人でお話ししたいんですけど・・・。」

三人   「えー!」


〈教室内〉 (ガヤ)

陽子   「おはよー、純。匠に祐樹もおはよー。・・・あれ?みんな、どうしたの?」

高田   「悪夢だ・・・。」

陽子   「え?」

草野   「何かの間違いだ・・・。」

陽子   「ど、どうしたのよ二人とも、暗い顔して。ちょっと純、何があったの?」

純     「エヘ、エヘヘヘヘ。」

陽子   「じゅ、純もおかしい。気持ち悪いほどニヤけちゃって、顔がとろけてる・・・。」

純     「エヘ、エヘヘヘヘ。藤城さん。」

陽子   「ねえねえ、みんな一体どうしたのよ。何があったの?」

高田   「純に彼女が出来た・・・。」

陽子   「え?嘘!ホントに?誰々?この前言ってた大森さん?」

草野   「いや・・・。」

陽子   「え、じゃあ、えーとえーと。んー、わかんない。ねえ、相手は一体誰よ?」

純     「藤城さん・・・。」(答えてるんじゃなく、ぼーっと)

陽子   「え、藤城さん・・・て、えー!

      藤城さんて、うちの学校のアイドル的存在の、あの藤城さんのこと?」

二人   「うん。」

陽子   「ちょっと、どうしちゃったのよ純。一体どんな手違いでそんな事になったの?」

純     「フッフッフ・・・。」

陽子   「純?」

純     「はーっはっはっはー。ついに、ついに俺の時代がやって来たー!フラれ続けること8回。
      ひどい断られ方をした時もあった。しかーし、ついに俺にも彼女が出来る日が来たのだ。
      それも、相手はあの藤城さん。やっぱり俺は正しかったんだー。」

陽子   「やばい・・・。あまりに嬉しすぎて、壊れちゃったみたい。」

純     「何とでも言え。今の俺は無敵だ。」

陽子   「ねえねえ、でもどうやって告白したの?藤城さんに告白した男子は数知れないけど、
      みんな断られてるじゃん。純なんか普通の子にだって相手にされないのに、
      一体どんな手を使ったの?」

高田   「それが、こいつ告白したわけじゃないんだ。」

陽子   「え?」

草野   「向こうから告白されたんだ。」

陽子   「えー!」

  (回想)

美紀   「あの、斎藤君。い、今、つき合ってる人はいますか?」

純     「え?い、いないいない、全然いないよ。今もフラれたばかりだもん。」

美紀   「そう、良かった・・・。」

純     「え?良かったって・・・。」

美紀   「あの・・・、もし良かったら・・・、私とつき合ってもらえませんか?」

純     「えー!」

  (回想終わり)

草野   「・・・と言うことらしい。」

純     「まあ、本当にいい男は、本当にいい女にだけ分かるってやつ?」

陽子   「うそ・・・、信じられない・・・。純と藤城さんがつき合うってだけで
      天地がひっくり返りそうなのに、藤城さんの方からなんて・・・。」

草野   「うん・・・。」

高田   「しっかし、あの藤城さんがゲテモノ好きだったとはな。」

純     「おい、誰がゲテモノだって。」

二人   「お前。」(同時に)
陽子   「あんた。」(同時に)

純     「くっ、ふん。勝手に言ってろ。何を言っても、今の俺には負け惜しみにしか聞こえないもんね。」

高田   「何ぃ、純のくせに生意気な。」

陽子   「まあまあ、いいじゃない。少しくらい夢見させてあげたって。

      どうせすぐ純の情けなさに気付くわよ。」

純     「ギク。」

高田   「ああ、そういやそうだったな。こいつ、女とつき合ったこと無いもんな。」

純     「ギクギク。」

草野   「二人っきりになったら、何も話せなかったりして。」

純     「ギクギクギク。」

陽子   「まあ、せいぜい夢が長続きするように頑張んなさい。じゃあ。」

純     「ちょ、ちょっと待った、陽子。」

陽子   「何よ。」

純     「なあ、協力してくれよ。」

陽子   「協力?何を。」

純     「だから、女の子とのつき合い方を教えてくれよ。」

陽子   「はあ?何であたしがそんなこと。」

純     「何言ってんの。俺とお前の仲じゃんか。」

陽子   「どんな仲よ。」

純     「家が近い。」

陽子   「それだけじゃない。」

純     「バカ、そういうのを世間じゃ幼なじみって言うんだよ。」

陽子   「ム、どうせあたしはバカですよ。」

純     「あ、いや、違うって。」

陽子   「それに純には、女の子の扱いの上手な友達がいるじゃない。」

高田   「そうだぜ純。俺達に任せりゃ大丈夫だ。」

草野   「お前をいっぱしの男にしてやる。」

純     「駄目だよ。こいつらは俺のことからかって真面目に教えてくれないって。」

高田   「そんな事無いって。そりゃ、お前ごときが藤城とつき合うってのは納得いかないが。」

草野   「そうそう。今の俺達は、純の親みたいな心境だ。」

純     「いいから、お前ら黙ってろ。やっぱり、女の事は女に聞くのが一番だしさ。」

陽子   「うーん、でも、あたしも今はそれどころじゃ・・・。」

純     「な、頼むよ!お願い!」

陽子   「・・・もう、しょうがないなあ。ちょっとだけだよ。あたしも色々と忙しいし。」

純     「よっしゃー!ありがと、陽子様。愛してるよ。」

陽子   「純なんかに愛してもらいたくないから。」

純     「よーし、頑張るぞー。」

陽子   「あーあ、張り切っちゃって。」

草野   「いつまで持つと思う?」

高田   「ま、一ヶ月ってとこかな。」

草野   「そんなとこだろ。」

男子a  「おーい斎藤、藤城さんが呼んでるぞ。」

純     「え?藤城さんが?はいはーい、今行きまーす。」

  (シーン変わるまで、バックで純と美紀の会話)

高田   「ったく、舞い上がっちゃって。」

陽子   「ふーん、本当に本当だったんだ。」

草野   「うん。だからさ、面倒だと思うけど、協力してやってよ。俺達も手伝うからさ。」

陽子   「うん・・・。」


〈道路〉 (SE 車の通る音など)

美紀   「面白かったねー。」

純     「うん。特にラストのどんでん返しがね。まさか主人公が守ってた少女が犯人だったなんて。
      俺、ずっとあの嫌な刑事が犯人だと思ってた。」

美紀   「うん私も。まさかあの子が二重人格だったなんて。私、サスペンスものって結構好きなの。」

純     「そうなんだ。良かった。」

  (回想)

陽子   「いい?初デートはね、あまり自分の趣味に走らない方が良いわ。

      いくら好きな人でも、初めてのデートから全く自分の興味の無いとこに連れて行かれると、

      女の子は引いちゃうものなの。」

純     「ふむ、なるほど。」

陽子   「純の事だから、サッカーでもとか思ってたんじゃないの?」

純     「ギク。・・・そんな事無いよ。」

陽子   「はっきり言って好きでもないスポーツ観戦なんて最悪。つまんないわ、
      彼は一人で楽しんでるわで、二度とデートに行きたくなくなるから。」

純     「ま、マジで・・・。」

陽子   「そうよ。だから最初は買い物とか映画とか無難なとこに行って、
      少しずつ相手の興味のあるものの話を聞き出すの。
      それから、徐々にお互いの趣味の所へ行くようにするのがいいわ。」

純     「映画か・・・。」

陽子   「映画もホラーは好き嫌いがあるから駄目。ラブロマンスも最初は駄目ね。
      ファミリー向けのコメディタッチのものか、後はサスペンスものが無難かな。」

純     「サスペンスか・・・。ねえ、今、何かいいのやってない?」

陽子   「え?それくらい自分で探しなさいよ。」

純     「頼むよ。俺、映画なんて全然観ないからわかんねんだよ。」

陽子   「・・・もう、しょうがないなあ。そうねえ、今なら『カラー・オブ・ヒットマン』なんかいいんじゃない?」

純     「『カラー・オブ・ヒットマン』か・・・。よし、わかった。ありがとな、陽子」

(回想終わり)

純モノ  「陽子、マジありがとよー。お前の選択はバッチリだったぜ。」(ささやき)

美紀   「ねえ斎藤君、どこかお店に入って何か飲も。私ちょっと喉が渇いちゃった。」

純     「え?ああ、OK。じゃ、そこの喫茶店にでも入ろうか。」

美紀   「うん。」


〈喫茶店内〉 (入り口のベル。カランカラン)

店員   「いらっしゃいませ。お好きな席にどうぞ。」

純     「あ、あそこの窓際が空いてる。あそこに座ろう。」

美紀   「うん。」

  (SE 机を叩くような音)

三上   「うるせーな。しょーがねえだろ、約束しちまったんだから。」

美紀   「ねえ、あれ・・・。」

純     「陽子・・・。」

陽子   「だって、その日はずっと前から私とディズニーランドに行くって・・・。」

三上   「だから今日、こうして会ってんじゃねえか。」

陽子   「そんな・・・。今日だって二ヶ月ぶりのデートなのよ。」

三上   「大体、遊園地だとかそういう人の多いとこは、俺苦手なんだよ。」

陽子   「じゃあ、何で約束なんかしたのよ。私、ずっと楽しみにしてたんだから。」

三上   「俺は約束なんかした覚えはないぜ。お前が勝手に決めたんだろ。」

陽子   「勝手にって・・・そんな。」

三上   「じゃあ俺、約束あるから行くわ。」

陽子   「え?ちょ、ちょっと・・・。」

三上   「じゃあな。」

  三上いなくなる(カランカラン)

陽子   「明、明(追いかける感じ)。あ、・・・・・・純。」

純    「陽子・・・、あの・・・。あ、おい。」

  陽子いなくなる。(カランカラン)

純     「・・・・・・。」

美紀   「いいの?」

純     「え?」

美紀   「だって、その・・・。」

純     「あ、いや、あいつとはただの幼なじみってだけで・・・。

      恋愛事には干渉したくないし、それに・・・。」

美紀   「それに?」

純     「今のあいつになんて声掛けていいか、俺には分かんないよ。」

美紀   「そうだね・・・。じゃあ座ろ。店員さんも困ってるみたいだし。」

純     「え?ああ、すいません。」

美紀   「私、アイスミルクティー。」

純     「あ、俺アイスコーヒー。」

店員   「かしこまりました。少々お待ち下さい。」


〈喫茶店内〉(SE 氷をかき回す音)

美紀   「でね、数学の吉田先生ったらね、

      自分で書いたエックスをかけ算の記号と間違えて答え出してね。
      全然気付いてないの。ほら、あの先生、すごく字汚いじゃない。」

純     「・・・うん。」

美紀   「みんな吹き出しそうなのを我慢してたら、吉田先生、

      『どうした、お前ら。腹でも痛いのか』って。」

純     「・・・うん。」

美紀   「・・・ねえ、斎藤君、聞いてる?」

純     「・・・うん。・・・え?ご、ごめん。何?」

美紀   「もういい。出よ。」

純     「あ、本当にごめん。ちゃんと聞くからさ。機嫌直してよ、お願い。」

美紀   「ううん。怒ってなんか無いから。
      でも、西条さんのあんな所見ちゃったら、心配で楽しめないでしょ。」

純     「・・・ごめん。」

美紀   「だから、今日はとりあえず帰ろ。で、西条さんを元気づけてあげて。」

純     「藤城さん・・・。」

美紀   「でもその代わり、今度のデートは斎藤君のおごりね。

      たっぷりおごってもらうから覚悟しててね。」

純     「うん、分かった。・・・ありがとう。」

美紀   「うん。じゃあね。」


〈陽子の家〉 (携帯の着信音)

陽子   「・・・もしもし。」

純     「・・・陽子か?」

陽子   「純・・・。」

純     「あの、さっき・・・。」

陽子   「あーあ、一番見られたくない奴に、一番見られたくないとこ見られちゃった。
      偉そうに言ってて自分がこれじゃあね。」

純     「陽子・・・。」

陽子   「・・・最近ね、あたし達ちょっと上手くいってなくてさ。
      あの人三年だから今年受験でしょ。だから会うの控えようって・・・。」

純     「・・・うん。」

陽子   「でも、あたしと会うのを控えた代わりに、他の子と会ってるらしくて・・・。」

純     「え?何だよ、それ。」

陽子   「別に確かめた訳じゃないの。ただ・・・、
      あの人が他の女の子と楽しそうに歩いてるのを見たって久美子が言ってた・・・。」

純     「本当かよ!それじゃあ二股じゃんか!」

陽子   「うん・・・。でも、予備校の友達かもしれないし、見間違いかもしれないし・・・。」

純     「・・・わかった。俺が確かめてやる。」

陽子   「え?いいよ。そんな事しなくて。あたしは大丈夫だから。」

純     「何言ってんだよ!お前がこんなに悩んでんのに黙って見てられるか。
      ・・・それに、お前には色々世話になってるしな。」

陽子   「純・・・。」

純     「安心しろ。お前が選んだ男だぜ。きっと何かの間違いだって。
      ・・・でも、もしお前を泣かすようだったら、ぶっ飛ばしてやる。」

陽子   「え?ちょっと、純?」

純     「じゃあな、陽子。今日はとりあえず早く寝ろよ。」

陽子   「ちょっと待ってよ!純!」

 (SE プープープー 電話の切れる音)

陽子   「あ・・・。全くもう。ぶっ飛ばすって・・・、相手は空手部なのよ・・・。」


〈純の家〉

純     「陽子のやつ・・・、相当落ち込んでたな。三上のヤロー、何かむかつく感じの奴だったし、
      まんざら久美子の話ってのも間違いじゃないのかもしれないな。

      もしそうだったらあのヤロー・・・。」

 (SE 携帯の着信音)

純     「あれ?藤城さんだ。何だろ・・・。もしもし?」

美紀   「もしもし、斎藤君?藤城ですけど・・・。」

純     「どうしたの?何かあった?」

美紀   「うん・・・。ちょっと、西条さんの事で。」

純     「陽子の事?何?」

美紀   「うん・・・。あの、西条さんの彼って、三上先輩でしょ?三年の。」

純     「うん、そうだけど?」

美紀   「私、三上先輩が三年の遠藤先輩とつき合ってるって噂を聞いたから・・・。」

純     「本当?」

美紀   「うん。それで、帰ってから友達に電話して聞いてみたの。遠藤先輩と同じ部活の子に。
      そうしたらやっぱり、半年位前からつき合ってるって・・・。」

純     「あのヤロー、やっぱりあの話は本当だったのか。」

美紀   「斎藤君も知ってたの?」

純     「うん、俺も今聞いたばかりなんだけど。」

美紀   「西条さん、かわいそう・・・。」

純     「うん・・・。あ、ありがとう、藤城さん。」

美紀   「ううん、私は何も出来ないけど。」

純     「いや、十分役に立ったよ。じゃあ俺、これからちょっと用事があるから。」

美紀   「うん、わかった。じゃあね。」

純     「うん、じゃあ。」

 (SE プープープー)

純     「三上のヤロー、陽子を悲しませやがって。ぜってー許せねぇ!」

母     「純ー、ご飯よー。」(遠くから)

 (SE 部屋のドアを閉める音)

純     「悪ぃー母さん、俺ちょっと出かけてくるわ。」(遠く)

母     「え?ちょっと!ご飯どうすんの。」(遠く)

純    「帰ってから食べるから。」(遠く)

母     「ちょっと純!」(遠く)

 (SE 玄関のドアを閉める音)(遠く)


〈三上の家の前〉 (SE ピンポン)

三上   「はーい。」(家の中)

 (SE 玄関を開ける音)

純     「どうも。」

三上   「・・・どうも。」

純     「三上先輩ですよね。」

三上   「そうだけど?」

純     「ちょっと話がしたいんですけど、少しつき合ってもらえませんか?」

三上   「お前誰?」

純     「西条陽子の友達です。」

三上   「陽子の?何だよ。」

純     「先輩、三年の遠藤先輩とつき合ってるって本当ですか?」

三上   「・・・だとしたら?お前にゃ関係ないだろ。」

純     「てめぇー! (SE 殴る音)陽子の事なんだと思ってんだよ!
      あいつがどれだけ苦しんでるかわかってんのか?」

三上   「っくそ!痛ぇな!(SE 殴る音)てめぇにゃ関係ねえだろ!(SE 殴る音)
      それにあいつが勝手に惚れたんだ。俺はつき合ってやってたんだよ。(SE 殴る音)」

純     「何だと、てめぇ!お前みたいな奴の事、陽子は本気で・・・。」

三上   「ふん、知るかよ。(SE 殴る音)・・・そうだ。だったらお前にくれてやるよ。
      いい加減、うざくてしょうがねえしな。(SE 殴る音)」

純     「う、うぅ・・・。」

三上   「おら、さっさと帰れよ、てめぇ。人ん家の前で寝られたら邪魔なんだよ。」

純     「く、くそー!(SE 体当たりの音)」

三上   「うおっ!」


〈教室内〉 (ガヤ)

草野   「よー、純。どうだった?昨日のデートは?」

高田   「手ぐらい握ったのか?なぁ、教えろよ。」

草野   「・・・おい、どうしたんだよ。何かやらかしちゃったのか?」

高田   「まさか、いきなり襲おうとして殴られたとか?」

草野   「おい、純・・・。うわっ、お前、何だよその顔は!」

純     「・・・ちょっとな。」

高田   「まさか、本当に初デートで・・・。」

純     「馬鹿、そんなわけねぇだろ!あ、いてて・・・。」

草野   「じゃあ、どうしたんだよ。お前、お岩さんみたいだぞ。」

高田   「うん。ただでさえ不細工な顔が、もう見れたもんじゃないぜ。」

純     「うるせーな。ほっといてくれよ。」

草野   「あーあ、こりゃ駄目だ。本当に何かあったんだな。」

高田   「ま、しょせん夢だったんだよ。藤城が相手なんて。」

陽子   「おはよー。」

草野   「お、陽子ちゃん、おはよ。」

高田   「おい陽子、聞いてくれよ。純の奴がさぁ・・・。」

純     「おい!」

陽子   「純!どうしたの、その顔!まさか、明に・・・。」

草野   「明?三上先輩と何かあったのか?」

陽子   「え?・・・ううん、別に。」

高田   「何だぁ?」

(SE 椅子から立つ音)

草野   「あ、おい純。どこ行くんだよ。」

高田   「おい、純ってば!・・・ったく、行っちまった。なぁ陽子、どういう事なんだ?」

陽子   「うん・・・。実は・・・。」


〈美紀の教室〉 (ガヤ)

純     「あの・・・、藤城さん、呼んでもらえるかな。」

美紀   「あ、斎藤君!(近寄って)どうしたの?その顔。」

純     「うん、ちょっと・・・。あの、藤城さん、今ちょっといいかな?」

美紀   「うん・・・。」


〈校舎裏〉

美紀   「・・・ねえ、話って何?」

純     「うん・・・。あのさ、藤城さん・・・。ごめん!俺、好きな人が出来たんだ!その・・・、藤城さんの事
      嫌いになったわけじゃない。っていうか、むしろ、俺には勿体ないって思ってる。
      ・・・だけど、どうしても駄目なんだ。俺、一番の人としかつき合えない・・・。」

美紀   「・・・西条さんね。」

純     「うん・・・。」

美紀   「・・・私ね、実は斎藤君と西条さんの二人のやりとりをずっと前から見てた。
      いつも二人でふざけ合って楽しそうで、その姿を見て斎藤君の事を好きになったの。
      私の事を好きって言ってくれる人は今まで何人かいたけど、

      なんかみんなよそよそしくって普通に接してくれないんだよね・・・。
      だから私、斎藤君と西条さんの関係がすごく羨ましかった。

      私もあんな風に普通に楽しくつき合ってみたかった・・・。
      それで私、斎藤君となら楽しく普通のお付き合いが出来るかなって思ったの。
      ・・・でも、私と斎藤君じゃ、あんな風にはなれないなって昨日わかっちゃった・・・。」

純     「藤城さん・・・。」

美紀   「斎藤君、西条さんを大事にしてあげて。私は大丈夫だから。

      ・・・西条さんには斎藤君が必要なの。」

純     「・・・うん、わかった。ありがとう。」

美紀   「うん・・・。でもね、これからも友達でいてくれる?私、西条さんとも友達になりたいし。」

純     「もちろん!彼女じゃなくなっても、おごりの約束まで無効になったわけじゃないから。」

美紀   「あ、そうだった。(笑)じゃあ、今度はみんなで遊びに行こ。」

純     「うん。・・・藤城さん、ありがとう。」

美紀   「うん・・・。じゃあ、頑張って。」

純     「うん、行ってくる。」

 (SE 走り去る音)


〈教室内〉

純     「ハアハア・・・。」

草野   「お、何だ?純の奴帰ってきたぞ。」

高田   「おい聞いたぞ、純。お前まさか三上とやり合ったんじゃねーだろーな。」

草野   「無茶すんなよ。相手は空手二段の腕前だぜ。」

純     「陽子、ちょっと来てくれ。」

陽子   「え?ちょ、ちょっと!」

草野   「おい、どこ行くんだよ。純ってば!・・・何なんだよ。」

高田   「・・・あやしい。」

草野   「は?」

高田   「つけるぞ。」

草野   「え?おい!ったく・・。」


〈校舎裏〉

陽子   「ねえ、ちょっと純。もうホームルーム始まっちゃう。ねえ。」

純     「陽子・・・。三上の奴、やっぱり二股掛けてた・・・。」

陽子   「・・・その顔見ればわかるって。全く、無茶するんだから。」

純     「なあ、真面目に聞いてくれ。・・・陽子、俺とつき合ってくれ。」

陽子   「え・・・?ちょっと、何言ってんの。純は藤城さんとつき合ってんじゃない。」

純     「藤城さんとは別れてきた。」

陽子   「え!何言ってんの?冗談でしょ?」

純     「本当だ。今さっき別れてきた。」

陽子   「ど、どうして!何でそんな事したの!」

純     「何でって、俺は陽子の事が好きだからだよ。」

陽子   「だって、藤城さんは学校のアイドルなのに。」

純     「そうだな。」

陽子   「あんなに喜んでたじゃない。」

純     「うん。」

陽子   「あたしも協力したのに。」

純     「ごめん。」

陽子   「ごめんじゃない!早く藤城さんの所に行って謝って来て!
      さっきのは間違いだって。もう一度つき合って下さいって。」

純     「それは出来ない。」

陽子   「何で!」

純     「俺が好きなのは、陽子だから。」

陽子   「・・・もう、何なの。一体。」

純     「ま、いいじゃないか。」

陽子   「良くない!」

純     「藤城さんは学校のアイドルだぜ。所詮俺なんかじゃつり合わないって。」

陽子   「でも・・・。」

純     「俺は陽子と一緒にいたいんだ。」

陽子   「純・・・。」

高田   「いやー、参ったねー。」

純     「祐樹!」

草野   「いやー、ホント。」

純     「匠まで!」

高田   「まさか純がここまで男を上げるとは。」

純     「だからお前ら、何でいつもいるんだよ!」

高田   「まあまあ、細かい事はいいじゃないの。」

純     「良くない!」

草野   「どうすんの?純、本気だよ?はぐらかさずに、ちゃんと答えなきゃ。」

陽子   「・・・・・・。」

純     「陽子・・・。」

陽子   「・・・あたし、全然女の子っぽくないよ。」

純     「いいよ。」

陽子   「がさつだし我が儘だし、言う事全然聞かないよ。」

純     「そんなの昔から知ってるって。なんたって幼なじみだからな。」

陽子   「純・・・。」

純     「・・・つき合ってくれるか?」

陽子   「・・・うん。」

高田   「イエーイ!やったな、純!」

草野   「ま、これが一番らしいかな。」

純     「ありがとう、陽子。」

陽子   「ううん。」

高田   「いやー、しかし今日はめでたいなあ。このままサボって飲み行くか。」

草野   「んな訳いくか!・・・ん?つーか、今何時?」

 〈チャイムの音〉

純     「やべ!チャイムだ!」

陽子   「どうしよう。遅刻になっちゃう!」

純     「悪ぃ。俺のせいで陽子まで・・・。」

草野   「純。俺らに任せろ。」

純     「は?」

草野   「お前らはそのまま保健室に行け。先生には上手く言っといてやるから。」

陽子   「でも・・・。」

高田   「その顔なら疑われたりしないだろ。付き添いで陽子も保健室に行ったって言っといてやるよ。」

草野   「俺らからのささやかなプレゼントだ。」

純     「匠・・・。」

高田   「保健室でエッチな事すんじゃねぇぞ。」

純     「な、何言ってんだよ。」

草野   「じゃあ、また後でな。」

 (SE 走り去る音)

純     「・・・じゃあ、行こっか。」

陽子   「うん・・・。」

純     「あのさ・・・。」

陽子   「何?」

純     「・・・ううん。これからも、よろしくな。」

陽子   「・・・何それ?」

純     「ん・・・?何となくな。」

陽子   「ほら、行くよ。」

純     「おう。」


--完--