これは数年前、母の認知症が進んで施設入所を相談した時に兄から言われた言葉だ。
2019年の2月、母は膀胱癌と診断された。
膀胱癌の中でも上皮内癌と言って、深く浸潤するのではなく、膀胱の袋の壁に這うように広く浅く広がっていくタイプの癌だった。
なので今なら膀胱の中に内視鏡を入れ内側から削り取る手術が可能という事で(放っておくとその内浸潤性の癌になる)、入院して術前の検査を受ける事になった。
だが検査を進めていく内、膀胱癌とは別にもう一つ重篤な病気が見つかった。
『大動脈弁狭窄症』
心臓の出口の弁が開き難くなっており(母の場合血流が健康な人の2/3しか無かった)、放っておくと心不全や突然死の可能性もあるとの事。
それより…
手術実践ガイドラインにより、このままでは膀胱癌の手術が受けられないと言う。
要するに、『膀胱癌の治療をする前に心臓手術を受けてください』という事だ。
流石にこれには非常に迷った。
高齢の母を手術漬けにする事が果たして正解か…
もうこのまま何もせず自然に寿命が尽きるのを待った方がいいのではないか…。
迷いに迷ったが、やはりこれは母本人の考えを尊重しなくてはと思い聞いてみた。
酷な選択をさせる事に躊躇しながらも聞いてみるも意外や意外…
母は即決で手術を受けてもうちょっと長生きがしたい!と言う。
そして
『あんたが100歳まで生きてくれって言ったしね』
とも…💦
(いや、"人生100年と言うからお金は大切に持っておかないと"って話をしただけで『生きて』とは言ってないんだけど💦)
唖然としながらも反論はせずにおいた
母の意思を確認して、膀胱癌の手術の前に大動脈弁狭窄症の手術を受けることになり、兄に報告をした。
だが兄は反対した!
『もう歳も歳なんだからそんな大掛かりな事をしなくても…』
と…
それも一理あるし私も一旦はそう考えた。
がしかし、治るかもしれない治療方があってしかも、母はまだまだ100歳まで頑張る気満々なのだ。
その母に『受けるな』とは言えないだろう。
誰が母にそう言うのだ?
どうせ私に言わず気なのだろうが
いいとこ取り専門で面倒な役回りからは逃げる兄からは何を言われても腹が立つ
なのに、最終的な判断は私がするにしても、一応こいつに相談しなければならない事が理不尽に思えた。
結局、母の『100歳まで生きる』を尊重して
先ずは大動脈弁狭窄症の手術を受けることとなった。
全身麻酔で4時間程の手術だったが、急変に備え家族は常に待機が必要だった。
手術が終わってICUで面会をしたが、口からはもちろん至る所から管が伸びていて、正にスパゲティ状態で顔面蒼白の母を見ると、これが果たして正解だったかと疑問に思ったものだ。
兄の言った通りだったかもしれない。
母はそれくらい痛々しかった。
それでも術後は順調に回復して
1ヶ月もたたない間に退院となった。
その後傷が癒えるのを待って本来の膀胱癌の手術を受けたが、こちらは内視鏡で眼に見える癌は全て掻爬してもらって一週間で退院する事ができた。
だが…
その当たりから徐々に、いえ今から思うと一気に
母の言動がおかしくなっていったのである。
続きます。