第256話 勝負の行方
その晩も
静香と瑠菜は
二人揃ってNEOに行く約束をしていた。
リュウヤに逢えることがうれしいようで
静香は数分おきに携帯の着信を確かめている。
鏡を見る回数が増え
いろんな種類の溜息を吐く。
出かける前は
いよいよ気もそぞろで
お洒落に余念がない。
これが恋というものだ。
そこにいかにお金が絡んでいようとも。
「私、リュウヤ君に決死の覚悟でアプローチするつもり。
それでダメならきっぱり諦める。 その時はまりも慰めてね」
静香はそう言い残して出かけて行った。
京都から帰ってきたばかりで
体はとても疲れているのに
なかなか寝付くことが出来ず
ソファーでウトウトしながら朝を迎えた。
いつのまにか眠りに落ちていた私は
静香からの電話で目を覚ました。
「まりも! 今、ホテル!
リュウヤ君、シャワー浴びてるの!
すごい緊張しちゃう! あっ! また後で電話する!」
通話はすぐに切られた。
半覚醒のまどろみの中
「勝負は私の負けか」と思った。
考えるのが嫌で
ソファーからベッドに身を移し
そのまま布団にもぐりこんだ。
静香の次の電話で再び目を覚ました。
「まりもっ! 本当にインポだった!」
イチオクターブ高くなった声。
寝起きの私は
主語のない静香の言葉に一瞬混乱した。
「とにかく、詳しい話は帰ってからするね!」
静香は
また勝手に通話を切ってしまった。
さっきから
私は一言も発していない。
さすがに疲れたなと
大きな溜息を吐いた。
ホストクラブに連れていったという自責の念と
静香に対する強い思い入れから
どうしても振り回されてしまう。
ベッドから出て
エアコンのスイッチを入れた。
コーヒーを入れるためにお湯を沸かす。
歯を磨きながら
もしも最後までしていないのなら
静香が傷ついてなければいいけど
と心配になった。
勝負は判定に持ち込まれたかもしれない。
静香は想像を絶するハイテンションで帰ってきた。
完全に骨抜き状態で
「リュウヤ君かっこいい! かっこよすぎる!」
と頬をローズピンクに染めている。
私の体にまとわりつき
「こうやってね、 それからこうやってね」
とベッドの上での経緯を細かく実況しながら
ホテルでの反復をしてくる。
「ちょっと、ウザイからやめてって…」
思わず言った。
恋の渦中にいる人間は
こうも空気が読めなくなるものなのかと
思わずにはいられなかった。
静香は
ややトーンダウンしたものの
その後も興奮した口調で
リュウヤからの素晴らしい愛撫云々を
延々と語り聞かせてくれた。
だけど
いざという時になっても
リュウヤのディックの反応がイマイチで
静香が怒涛のスペシャルサービスを施したところ
「もう痛いからいいよ。 今日はやめよう」
と切り出されたのだと言う。
そんなのって最悪だ。
それって静香じゃその気にならなかったってことじゃないの?
とは当然言えるわけもなく
私は暗い気持ちになってしまった。
だけど静香にとっては
結末はさして問題ではないようだった。
リュウヤとベッドインしたという事実が
静香を宇宙の果てまで舞い上がらせている。
私からすれば
SEXしたとは言えないけれど
静香の中ではSEXしたも同然なのだ。
もはや私の忠告など
静香の耳に届くことはないだろう。
「じゃあ、誕生日はどうする? 時計買ってあげるんだ?」
胸を圧迫する憤りを
ぐっと押し殺して私は尋ねた。
「うん。 私ね、リュウヤ君の喜ぶ顔が見たい。
だからお金なんて惜しくないよ。
男ってなんだかんだ言っても尽くす女には弱いと思うの。
私ね、まりもを知ってからまりもになりたいと思ってた。
だけどやっぱりそれは無理なんだよ!
私は私のやり方でリュウヤ君に向き合おうと思う」
静香は
何かが吹っ切れたかのようにハキハキと言った。
「そう、 わかった」
悲しい顔で静香を見詰めた。
静香は
私の表情さえ捉えられないくらいに
リュウヤに夢中になっているようだった。
一つだけ約束をした。
誕生日プレゼントの時計はいいけれど
それ以外のことは他のお客さんにやってもらうこと。
静香が言いにくいのならば
私からケイスケに直接言ってあげるから
と打診した。
静香もそれには納得してくれた。
時計の120万円だけなら
静香の貯金が半分になるだけですむし
私たちの業界ではすぐに稼ぐことが出来る。
なるべく静香の意思を尊重しながら
軌道を逸しないように見守っていこうと決めた。
私の意見を押し通して
静香との仲が険悪になることだけは避けたかった。
静香との友情を大切にしたかった。
だけど
リュウヤとケイスケは次の手を打ってきた。
恋は盲目ですねー。 静香が今は幸せになっていてこの経験を笑い話に出来ているといいなぁ。
リュウヤは禁断の枕営業を仕掛けてきたわけだけど、普段は枕は絶対にしないホストだったと思う。
そういう噂は聞いたことないし、ただ、この時はやっぱり金額がでかかったからかなぁ・・・? うーむ
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