らぶどろっぷ【元AV嬢の私小説】 -95ページ目

第258話 バースデイパーティ

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リュウヤの誕生日当日。


花屋に頼んで5万円のスタンド花を出した。


ホストやホステスにとって誕生日の花の数は

ステータスを図るための物差しになっている。


静香と二人で美容院に出向き

髪の毛をアップスタイルにセットした。


その後、洋服を選びに丸井に行った。


私はJ&Rのノースリーブワンピースを

静香はノーベスパジオのカクテルドレスを新調した。


「今日は静香も主役なんだから

一番目立つ格好で行かなきゃダメだよ」


私が薦めて

二の腕まである白のシルクの手袋を買った。


袖口から中指の指先にかけて

一直線に大きなラインストーンが並んでいるもので

すごく可愛い手袋だった。


試着を終えた静香は

お姫様のような様相で「恥ずかしいかも…」と囁いた。


「じゃ、譲ってくれる? 超可愛いよー」

私が言うと

「それはダメ。 やっぱり私が着ける!」

と静香は拗ねたように言った。


買い物が終わってから

静香のウィークリーマンションに行った。


元々の家具である質素なテーブルの上に

ブルガリの紙袋が置かれていた。


「まりも、私、今日のために本当に頑張ったんだ…。

特大の打ち上げ花火をあげてみせる。 見届けてね」


静香が愛しそうに紙袋を撫でた。





「もう見ていられない。 ごめん、私は静香とNEOには行かない」


静香がうちを出ていってから

ある晩、飲みに誘われて私はそう言った。


だけど静香は

「どうしても誕生日だけは一緒に来てもらいたい」

と頼み込んできたのだった。


だから今日が最後。


私はこの目で

静香の勇姿を見届ける。




区役所通りから店に向かって続く階段に

リュウヤ宛のスタンド花がズラっと立ち並んでいる。


一番下の目立つ場所に

階段を挟んで二つ静香からの花が飾られていた。


「ここの花屋はセンスいいから」と

ケイスケは花屋まで指示してきたというから私は呆れた。


「どう? この花、完璧でしょ?」


静香は唇を噛み

毅然と背筋を伸ばして

自分の贈った花を見詰めながら言った。


静香の花はたしかに一際目立つ。


ブルー系の花でまとまっていて

一つ10万円はかかっていそうな豪華さだった。


その隣に瑠菜と私からの花も並んでいた。


なるほど。


AV女優の名前が3つ並べば

これは目立つ。


区役所通りを歩く人は

みんな足を止めて花を眺めていた。


こうやってリュウヤの名前は

また有名になっていくのだろう。


店まで並んだスタンド花には

有名キャバクラ嬢や他店のカリスマホストなど

そうそうたる顔ぶれの名前が連なっていた。


「さすがだね」


私は圧倒されて言った。



店内は

青を基調としたバルーンの飾りつけがなされていた。


大人の遊園地さながらで
明るい華やかさを演出している。


静香と私のテーブルは

店の中央に用意されていた。


目の前には

シャンパングラスのタワーが2セット。


店のライトが乱反射して眩しかった。


すぐにケイスケがやってきてヘルプに付いた。


「今日の二人は一段と綺麗だね! 素敵だな~!


パーティが一番盛り上がる時に

ここの席につくように手筈は整えてあるからね。

そのときに時計を渡すんだよ! いや~喜ぶだろうな~! 楽しみだね!」


ケイスケは満面の笑みで

今日の段取りの説明を始めた。


調子のいいやつ。 ムカつく。


リュウヤは店の左端からテーブルを回っていき

ちょうど中盤のハッピーバースデイの歌を歌い終わるクライマックス時に

このテーブルにつくようになっているらしい。


私は左から順にテーブルを目で追っていった。


一番最後の席で目が留まった。


すごく綺麗な女の子が一人で来ていた。

色白でスラっと背が高い。白百合みたいな人。


他のお客さんとは明らかに雰囲気が違った。


「静香、あの席の子、見たことある?」


「ううん、ない」


静香は興味なさそうだったけれど

私はきっとあの子がリュウヤの本命に違いないと直感した。



リュウヤの誕生日は盛大に執り行われた。


ブーブクリコがシャンパンタワーに注がれ

全ての客とホスト達に振舞われた。


静香の血肉は

あっというまにみんなの腹の中に流れ込んだ。


結局、万札の首飾りと扇子はなかったものの

その他のことは全て静香の財布から賄われることになっていた。


ケイスケがバースデイソングを歌い

拍手喝采を浴びながらリュウヤが私達のテーブルにやってきた。


見ているこっちがテンパってしまうくらい

静香はいっぱいいっぱいの様子だった。


リュウヤの腕に

バングルタイプのブルガリの時計を

自分の手でガチャンとはめてあげる。


「リュウヤ君、おめでとう!」


静香は切なそうに語尾を震わせる。


私はリュウヤの横顔を盗み見る。


冷たくて繊細で美しい。


驚いた様子はなかった。

ただ120万の時計をしっかり確認していた。


リュウヤは他の客の手前もあってか

「ありがとう」と口元だけで微笑んで

さりげなく静香の膝の上に手を置いた。


静香が涙ぐんでしまい

ケイスケが場を盛り上げようと

わざとらしく囃し立てた。


途中から瑠菜も合流して

3人で景気良くドンペリを何本も抜いた。


私はめずらしくトイレで2度吐いた。


完全に酔っ払っていた。


トイレの前でおしぼりを持って待っていてくれたトモに

「悔しい、トモ、私、悔しいよ!」と思わず泣きついた。


堪え切れなかった。


トモが慌てて私を店の外に連れ出した。


「まりもの気持ちはよくわかるよ。

でも今日は泣いたらダメだよ。 静香ちゃんのためにさ。

この日のために静香ちゃんは頑張ったんでしょ?」


トモが優しく頭を撫でる。


だけど

私はリュウヤとケイスケのことが憎くてしかたなかった。


「でも、静香は! そういう子じゃないんだよ。

あの子、このままじゃ、どうなっちゃうの? 酷いよ。 トモ、どうにかしてよっ!」


私は泣きながら懇願した。


「まりも、残念だけど

静香ちゃんは自分の意思でお金を使っているんだよ。

俺から見ててもたしかに心配な状態ではあるよ。

だけどさ、本人が気がつくしかないんだ。 わかるでしょう?

それより、俺はまりもの方が心配だよ…。 かなりまいってるみたいじゃん。

今日、一緒に帰ろうか?」


トモがホストになってから

誘われたのは初めてのことだった。


私は手を伸ばし

トモのジャケットの袖を掴んだ。


そのまま非常階段に出てキスをした。


「トモ、私、先に帰るよ。 店からバッグ持ってきて」


トモのジャケットに顔を埋めながら私は言った。


「静香ちゃんと瑠菜ちゃんに何も言わないまま帰るの?」


「うん。 もういい。 

最後まで一緒にいて静香の会計見たら気が狂いそうだし。

私は具合悪くなって先に帰ったって伝えて」


「たしかに会計はハンパじゃなさそうだ。

わかった。 持ってくるから、ここで待ってて」


冷たい夜風が濡れた頬を拭った。


トモがタクシーに乗せてくれる。


「本当に一人で大丈夫?

今日、店が終わったら電話するからさ」


トモが心配そうに私の顔を覗き込む。


「ねぇ……トモ

大事なものってどうして失われてしまうの?

失われてばかりの日々を生きていく意味ってなんなの?

どうして人は生きていかなきゃいけないの?

トモはどうしてホストなんてやってるの? 

お金や力を手に入れたからって、そんなものじゃ空白は埋まらないよ」


よくわからないことを口走った。


「ごめん、トモにこんなこと言ってもしょうがないのにね」


トモはもう一度キスをしてくれた。


「おやすみ」





それから数ヵ月後

静香と瑠菜は吉原の高級ソープで働くようになった。


二人は喜んで地獄へ降りて行った。

それが「愛」だと哀しく微笑みながら。



んー。 この章はここで終わりにしようかな。

挨拶文でホストについてガッツリ書こうかなって思ってる。 あー、切なかった。

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