第265話 出会い
両手いっぱいの荷物を抱えてタクシーから降りる。
仙台ロック座は国分町の真ん中にあった。
一階がステージで
二階が楽屋になっているようだ。
急勾配の階段を上っていくと
玄関のタタキには女物の靴がいくつも散乱していた。
「おはようございます」
すでに慌しい初日の楽屋に足を踏み入れた。
楽屋は二十畳ほどの大部屋で
四方の壁をぐるりと囲むように鏡が埋め込まれている。
大部屋の楽屋は久しぶりだったので
やや気が重かったがしかたがない。
トリを勤める姐さんは
ロック座の看板で誰もが知っている有名な元AV女優だった。
年は三十歳くらいだが
しっかりかかったソーバージュと
切れ長でキツい目が印象的な美人だ。
全員の姐さんに挨拶をすませてから
自分の化粧前に荷物を広げる。
軽く洗面をすませメイクにはいる。
一通りの準備が終わると
化粧前に寝転がって読みかけの本を開いた。
ススキノからその足で仙台にやってきた私は
当然スピードを入手していない。
けれど
スピードをキメていなくても
本を読む集中力は衰えていなかった。
一度回路が出来上がってしまうと
脳自体がそれを覚えてしまうのかもしれない。
隣の姐さんが
私の頭上から覗き込み
「何読んでるの?」と尋ねてきた。
私は一度身をおこしてから
「聖なる予言っていう本ですよ」
と緑色の表紙を姐さんにむかって見せた。
「ふーん」
姐さんはさして興味もなさそうに
すぐに自分の化粧前に向き直りメイクの続きを始めた。
私はこの本がかなりおもしろくて
出の時間意外はずっと夢中で読み耽っていた。
本の続きが気になって
その日は楽屋泊まりではなくホテルを取ることにした。
大部屋の楽屋には消灯時間があるからしかたがない。
私はプラプラと一人で夜の国分町を歩いた。
ここに来た昼間とは比べ物にならないほどの人出で
すっかり街はその様相を変えていた。
道端にはキャバクラのビラがいっぱい落ちている。
セーラー服やナース服姿で客引きをしているホステスが
やたらと目にとまる。
仙台はコスプレブームなのだろうか。
ビルの隙間で煙草を吸っている黒服の男の子に
「ラブホテルってどのへんにあるかな?」と尋ねた。
USENが聞けるから
私は一人でラブホテルに泊まることが好きだった。
教えられたとおり
10分ほど歩いた場所にホテル街があり
その中で一番綺麗そうなところにチェックインした。
そのホテルが気にいって
翌日からも夜はそこに泊まるようになった。
初日から3日ほどがたち
その日最後の舞台に私は立っていた。
フリルのふんだんについた白のベッド着で
くるくる廻りながら盆の上に寝そべる。
仙台ロック座は
夜の九時を過ぎるとぐんと客数が増える。
この日も立ち見のお客さんがいっぱいいて
客席からは湯気が立ち込めてくるようだった。
ポーズをとる私をのせて
ピンク色のライトに包まれた盆はゆっくりと回転していく。
下着に手をかけたまま
お客さんの目を順番にみつめて優しく微笑みかける。
1人の男の子と目が合った。
なぜか不思議なかんじがして
しばらく目が離せなかった。
彼は
若くハンサムだった。
一人でストリップにくるようなタイプには見えなかったから
とても場違いに感じた。
だけど
私が違和感を覚えたのは
たぶん年齢や容姿のせいではない。
ストリップに来ている客は
ほとんどが無表情でステージを見詰めている。
彼には表情があった。
わずかに上気した頬や濡れた目の光を
ステージ上からでも確認できた。
でもそれは性的な興奮ではなく
例えば子供がヒーロー物のショーを見て
ワクワクしているかんじに近いものだった。
4歳や5歳の少年みたいに。
それが彼の第一印象。
私達の出会いだった。
飯島愛さん引退かぁ。 体調が思わしくないようなので心配です。ご自愛くださぃ。 おつかれさまでした。
らぶどろっぷは「永遠の夏」の始まりです。 彼との出会いは今でも鮮明によみがえってくるなぁ。
「聖なる予言」もとてもお薦めの本ですよ。 私はモロに影響うけましたw
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