らぶどろっぷ【元AV嬢の私小説】 -84ページ目

第268話 俊くん

携帯からの目次を作りました  



楽日が無事に終わり

姐さん達は明日からの段取りで

バタバタと忙しそうにしている。


私は5日間のオフの後レッスンに入り

8月はいよいよ浅草ロック座の盆公演に出演する。


俊君が最後の花束に選んでくれたのは

白いカラーとカサブランカの組み合わせで

花嫁さんが持つブーケみたいだった。


いい香りだなぁ


私は何度も匂いをかぎ

今夜のデートに思いを馳せた。


男の子に目が向くのは

自分でも驚くほど久しぶりのことだった。


待ち合わせは12時。

俊君がロック座の前まで迎えに来てくれることになっている。


恋のはじまり特有の緊張感で階段を下りる足が浮きだった。


「おまたせ~」


Aラインワンピースの裾をひるがえし

可愛いこぶった笑顔をつくった。


「ちゃんと時間通りに来いわ……」

俊君は不機嫌そうにさっさと先に歩き始めた。


私はこの展開に戸惑った。


実は

念入りに前髪のブロウをしていたら

10分ほど待ち合わせに遅れてしまったのだ。


「ごめんね? どこ行くの?」


彼の顔色を窺う。


「俺の知り合いがショットバーやってんのさ。 そこさ行くべ」


「うん」


彼はもう普通の顔に戻っていた。




「俊君、私ね、超うれしかったよー。 いつも綺麗な花束くれてさ。

毎日見にきてくれるから張り合いでたし。 仙台公演中すごく幸せだった」


乾杯のあと

私は真っ先にお礼を言った。


だけど

彼は私の話は聞き流して

「実はやぁ……。 俺、まりもちゃんに嘘ついてたことがあるのさぁ……」

と、言いにくいことを切り出すように口を開いた。


「ん?」


「うん……。 俺、ホストなのやぁ」


俊君は

心から申し訳なさそうな顔で言った。


やっぱりそうだったんだと思うと

私は逆にスッキリしてしまった。


「なぁんだ! 最初から言ってくれればよかったのに。

じゃ、話は早いわね。 今日も仕事なんでしょ? 同伴してあげる。

お礼にシャンパンでも何でも入れていいわよ」


私はクスクス笑った。


彼がホストなら相手に不足はない。

得意分野だとわかり俄然やる気が出たくらいだ。


俊君は

ばつが悪そうに黙ったまま

冷えたコロナビールを口に運んだ。


「そっかそっかぁ~!

でもさ、私なんかすぐに東京帰っちゃうのよ?

かなり効率悪い営業よね? あはは」


私は小首を傾げてちゃかした。


「そういうこと言うな!」

彼は声を荒げた。


私はまた戸惑ってしまった。


俊君は

私の想定とは違う反応を返してくる。


でもそれは

ホストとしてのテクニックではなさそうだ。


もしかしたら

すごく不器用なのかもしれない。


「ねぇ、俊君っていつもそんなに短気なの?

なんか驚いちゃうんだけど? あはは」


私は軽いかんじで彼の真意を探った。


「だってやぁ、そういう風に思われるのいやだったのね。

だから嘘ついちゃったのさ。 本当に営業とかじゃないんだ」


俊君は拗ねたように私を見る。


「わかったわよ」

私は肩をすくめた。


癇癪をおこしたり拗ねたりと

本気で子供みたいだと思った。


だけど

同じ子供っぽいのでも

ユウとは全然違う。


俊君はどこか男らしいし

抑圧的で影のあるタイプにみえた。


それからは

初めてのデートならではの質問合戦を楽しんだ。


俊君と私は同じ年だった。


歌舞伎町のホストみたいには垢抜けていないけれど

黒のスーツがよく似合っているし

体を少し絞って髪型や眉毛をどうにかすれば

見栄えはぐんと良くなる気がする。


「日曜日、一緒にジェットさ行くべぇ」


出勤の時間が差し迫ってくると

俊君はよっぽど湖に連れていきたいのか

しきりにその話題ばかりを持ち出した。


「でも東京に帰らないといけないのよ。 それに水着もないもん」


「買えばいいべー! 

みんな彼女と来るのに、俺だけいつも1人なのやぁ。 

まりもちゃん連れていきてぇんだ。

どうしても無理なの?」


「無理だよぉ」

私が困って言っても、俊君は

「やんだ! やんだー!」と駄々を捏ねる。


東北弁の抑揚が

なんだか可愛らしくて和んでしまう。


「やんだ!っておもしろいんだけど。 あははは」


私がついからかうと

俊君は頬を赤らめて不貞腐れてた。


ここまで感情がそのまま表情にのる大人を

私は今まで見たことがない。


顔を見ているだけで

心の中が透けてみえるようで

言葉なんて必要ないとすら思えた。


俊君の表情には

一点の曇りもない気がする。


そのことが

私の心をぐっと惹きつけている。


私はもう

自分の本来の表情がわからない。


どんなときでも

ポーカーフェイスでいられる自信がある。


だけどそれは

自分にすら嘘がつけているということだ。


「私、もう少し一緒にいたいからやっぱり同伴するよ。 

俊君のことかなり好きになっっちゃったみたい。」


私が素直に気持ちを告げると

俊君は蕩けるような笑顔で

思い切りデレデレになった。


俊君の笑顔をずっと見ていたいと思った。


最初から

私は彼のことが大好きだった。


不思議なくらいに。




なんかもう胸がいっぱいだよぉぉ・・・。 更新遅くなってごめんなさぃ。
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