らぶどろっぷ【元AV嬢の私小説】 -77ページ目

第275話 狂気

携帯からの目次を作りました



「人に話すのははじめてだ……」


そう言ってから

俊ちゃんはポツリポツリと話しだした。


父親から受けた理不尽な暴力。

母親の愛情に飢えていたこと。

幼少期の様々なトラウマ。


家族内での力関係

あるいは

家族全体がつくりだす感情空間の歪み。


俊ちゃんは

家族の話しをするとき

とくに表情が硬かった。


自分の苦痛な体験を思い出すのは辛いことだけれど

人に話すことによって

置き去りにされていた記憶と向かい合うことができる。


そう信じて

静かに俊ちゃんの言葉に耳を傾けた。


過去の中で泣き叫けび

助けを求めている子供の姿が

私にはまざまざと見えるようだった。


子供の頃の俊ちゃんを

一緒に抱擁してあげたい。


私と俊ちゃんの

「耐え難いさみしさ」が共鳴しあい

胸がどんどん圧迫されていく。


不思議なその感覚は

『双子の魂』の証明としか思えなかった。




俊ちゃんの心の闇は

恐ろしく深く果てしない。


人それぞれ

誰しも心の闇は持っているものだろうけれど

俊ちゃんのそれは通常のものとは質が違うと感じた。


そこに

足を踏み入れた私は

不気味な恐怖感に怯みながらも

その先にあるものが見てみたくて

暗闇の中を一歩一歩手探りで進んでいくのだった。


俊ちゃんの話はやっぱり普通じゃない。

常軌を逸していると思われるサインが見え隠れしている。


放火した犯人は俊ちゃんだったのかもしれない。

話しているうちに私はそう感じてしまった。


ご両親も実の親ではなくて

もしかしたら俊ちゃんは養子だったのではないだろうか。


それは完全に私の想像で

バカな思い込みなのかもしれないけれど。


だけど私は

世間一般の常識といった物差しで

俊ちゃんを測るようなまねはしたくなかった。


私だけは

俊ちゃんの理解者でいたい。


どうしたら彼を救えるだろう。

孤独の淵でたたずむ彼に手を差し伸べてあげたい。


―――天使になりたい―――




「おまえ天使なんだろ?」


俊ちゃんの言ったあの言葉は比喩なんかではなかった。

本当に私を天使だと思いこんでいたのだ。


彼の心は病んでいるのだろうか。


「ねぇ、 俊ちゃんてサイコなのかしらね?」


話しが一息ついたとき

悪戯な微笑みと共に冗談ぽく言った。


「サイコって何や?」


俊ちゃんは不思議そうに私の顔を覗き込んだ。


「うーん。 なんか聞けば聞くほど俊ちゃんて不思議なのよ。

謎が謎をよんでるっていうの? 混乱してきちゃった。

きっと深読みしすぎてるんだなぁ。 ねぇ、ちょっとHでもして気分転換しよ♪」


私は自分勝手に

また俊ちゃんをベッドに誘った。


俊ちゃんに抱かれていると

心も身体もピッタリと一致している安堵感で

ドロドロに溶けてしまいそうになる。


「ずっと繋がっていたいわ

このまま一人の人間になれちゃえばいいのに」


漏れる吐息にあわせて私は言った。




俊ちゃんがシャワーを浴びている間に

私はまたスピードを吸い一人で考えこんでいた。


俊ちゃんは

私のように競争心や自己主張が強くない。


自分を押し殺し

他人への思いやりに溢れている。


私の我侭は大概きいてくれる。 

いつだってすごく優しい。


お店で見た俊ちゃんは

とてもハンサムで凛々しく

スーツがよく似合うホストだった。


「やっぱりわからないなぁ」

独り言を呟いた。


普段見ている俊ちゃんと

今しがた聞いた話の俊ちゃんが繋がらないのだ。


山道でのレイプの話や

自分でやったという痛々しい七つの根性焼き。


どう筋道だてて考えてみても

私の知る俊ちゃんとは連続性がない気がする。


俊ちゃんの中には別人格がいる。

そう考えてしまった方がよっぽど辻褄があう。


圧倒的な葛藤と抑圧が

時として爆発的な衝動性を生みだすのかもしれない。


新幹線に飛び乗ってしまったのも

きっと彼の中に潜む衝動性の発露だったのだ。


―――俊ちゃんは危ないかも―――


遊ばれるだとか

いいかげんに扱われるといった心配ではなくて

もっと根源的な恐怖心を煽られる。


しかしそれが

私にはゾクゾクするほど魅力的なことに気がつく。


ああ!

私は俊ちゃんの闇に足を捕られている。


『深淵を覗き込むときは気をつけなければならない。

その時、むこうも大きな口を開けてこちらを覗きこんでいるものなのだ』


ニーチェの言葉を思い出して

思わず身震いした。


だけどもう戻れない。

引き返すつもりは毛頭ない。



下半身にバスタオルを撒いて

俊ちゃんが戻ってきた。


「私は……

俊ちゃんの天使だから。

そこから俊ちゃんを救い出してあげる。

でもね……

もしも私が失敗したら……

その時は俊ちゃん

私を殺して。」


私の中の誰かが言った。


自分で酷く驚いた。


だけど俊ちゃんは

何事もなかったかのように

「うん」と微笑んだのだった。



んぁー!狂ってるなぁ。。。 俊ちゃんもおかしいけど私も完全におかしいわね。

狂気って連鎖するのかなって思う。むやみに人の心の闇を覗き込むのは危険なことです。

天使になりたいと願っている私は、とても建設的で「俊ちゃんを癒すことで自分も救われる」と思っている。

狂気に惹きつけられていく私は「自己破壊的な私の一部」なんだと思う。 自我が分裂すると狂うんだよね。

んー。 ようは「相手の本質」と「自己の投影」の境界線がわからなくなっていくのだ。 難解だねぇ^^;

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