らぶどろっぷ【元AV嬢の私小説】 -76ページ目

第276話 最後の恋

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「レッスンが始まったら、かまってあげられないから。

一度仙台に帰りな。 仕事もあるでしょぅ」


寝付こうとしている俊ちゃんに向って

私は言った。


離れることは

少しもつらくなかった。


もちろんさみしさはあったけれど

今までの恋愛では味わったことのない

絶対的な安心感が私の中にはあった。


二人の赤い糸は

決して途切れることはないのだから。


過去の私が

恋愛中に常に感じていた不安は

『いつか見捨てられる』という恐怖心だったのだと悟った。


いくらその時はうまくいっていたとしても

いずれは失ってしまうかもしれない

未来に対する不安だったのだ。


人間は

現在のことではなく

未来に思いを馳せることで

不安を感じる生き物なのだ。


私は

俊ちゃんの気持ちを100%信じていられたし

何よりも自分の気持ちに自信があり

そして運命を確信していた。


これが最後の恋。


二人は出会えたのだから

もう何も怖いことはない。


理屈ではなくて

全身でそのことを知っていたから

私はとても強かった。


だけど

俊ちゃんは違った。


少し前の私と同じく

物理的に離れることに激しい抵抗を示した。


「やんだ……」


俊ちゃんは

足を絡め私にしがみついた。


きっと俊ちゃんだって

理屈ではわかっているけれど

感情が追いついてこないのだ。


身を切られるようなさみしさから

どうにか逃げだしたくて

子供みたいな我侭を言っている。


だけど私には

その気持ちが痛いほどよくわかった。


抑えきれない感情は

自分ではどうすることも出来ない。


いくら正論を言われても

人は頭ではなく心で生きているのだから。


私は俊ちゃんに

以前の自分を重ね合わせ

感情移入していた。


「大丈夫よ。 信じて。

今はつらくても勇気を出して。

一人になれば、なおさらわかるはず。

私の居場所は俊ちゃんの腕の中だけ。

ちゃんと戻るわ。 ね?」


愛しい俊ちゃんに

そしてあの頃の私に向って

真心をこめて丁寧に説得を重ねた。


そして

俊ちゃんは仙台へ帰って行った。


きっと

俊ちゃんも強くなれる。


一緒にいるときよりも

離れているときにこそ

お互いの存在価値を確認できるはずだから。



翌日から

浅草ロック座のレッスンが始まった。


5日間毎日8時間のレッスンがあり

初日の前日は

深夜から早朝にかけての通し稽古になっている。


トリは仙台で一緒だった瀬奈姐さんだ。


スタジオに入ると

最初に瀬奈姐さんに挨拶をした。


あいかわらずピリピリしたオーラで

私は軽く萎縮した。


レッスンからこれでは先が思いやられるなぁ

と肩を落としたけれど

幸せいっぱいの私はさして気にはならなかった。


今回の私の出し物は

曲はミッションインポッシブルのテーマで

パンツスーツにソフト帽をかぶり

ピストルを持って踊るものだった。


サイドに外人の男性ダンサーが2人

バックダンサーには

女性外人ダンサーが4人。


計6人の背の高い外人に囲まれて

踊ることになる。


すごく格好いい演出で

今までのブリッコ路線とは思い切りイメチェンを図っている。


「不二子のイメージよ! もっとクールに!」


先生から

厳しい指示が飛んだ。


レッスンは過酷だったけれど

一番踊りの下手な私は

人よりもうんと努力をしないとついていけなかった。


いよいよ通し稽古の日がやってきた。


明日は

華の浅草ロック座の初舞台だと思うと

背筋がピンと伸びる思いだった。


楽屋は

大部屋と3人部屋があり

私は3人部屋の方に案内された。


仙台で一緒だった桜姐さんと

初顔合わせの奈津子姐さんが同部屋だった。


「よろしくお願いします」


二人の姐さんに挨拶をすませて

稽古の準備を始めた。


桜姐さんは

ロック座では超大御所の看板踊り子。


明るく少しヤンチャなかんじがする人で

私は好感を持っていた。


先に奈津子姐さんが

ステージに降りていくと

桜姐さんに唐突に言われた。


「あんた、やるんだってね! 花梨から聞いてるよ」


ギクっとした。


花梨姐さんは

博多ロック座で私が歯痛で苦しんでいたとき

スピードを分けてくれたあの姐さんだ。


私が返事を躊躇していると

桜姐さんは続けた。


「私もエキスパートだからね。

仙台のときは大部屋だったから出来なかったけど

今回は個室だし奈津子が出の間に一緒にやろう」


そう言ってニヤリと笑った。


「あ…… はい!」


私は愛想笑いをしながら

やっぱり

この業界にはドラッグが蔓延しているんだなぁ

とつくづく思った。


そういうことなら

気兼ねなく楽屋でスピードが出来る。


心の中で「ラッキー!」と喜んだ。


桜姐さんは

ドラッグをしている仲間意識からか

親身にいろいろと世話をやいてくれた。


だけど

私はまだわかっていなかった。


この浅草公演の間に

完全なる覚醒剤依存症になってしまうことを。


地獄がすぐそばまで迫ってきていることを。



運命の恋、ドラッグ、共に架橋に入っていきます。 かなりカオスになるかもしれないけど

頑張ってついてきてねー! 子供の春休み終わったから更新がんばります^^

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