らぶどろっぷ【元AV嬢の私小説】 -71ページ目

第280話 青い鳥

携帯からの目次を作りました


 


俊ちゃんと一緒にスピードを吸う。


シュゥゥというガスライターの音が

ホテルの部屋に響き渡る。


丸いガラスパイプの中を

白く繊細な煙がゆっくりと渦巻く。



あっというまに過ぎ去ってゆく時間を惜しむように

私達はベッドの上で愛を確かめ合う。


二人でいるだけで

どうしてこんなに胸がいっぱいになるんだろう。

いつも不思議に思う。


「不思議……」と

私はつい独り言をつぶやく。


その意味が伝わっているのか

俊ちゃんは何も言わずに肩を抱く手に力をこめる。


指先から愛情が伝わってくる。

電流みたいに体内に流れ込んでくるのを感じる。


私はますます不思議な気持ちになり

言葉にならない溜息を吐く。




「9月の仕事が終わったら、引退して仙台で暮らすわ。

ようやく段取りついたけど待ちきれないなぁ。 早く毎日一緒にいたい。」

 

私は言った。


「うん。 俺、頑張って働くから仙台さ来い。

俺がホストあがったら二人で花屋やるべ」


俊ちゃんが満面の笑みで言い

私もとびっきりの笑顔で頷いた。


今までの生活には何の未練もなかった。


華やかで高給なこの業界も

夜遊びの世界で築いたステイタスも

たくさんの男友達も。

全部いらない。


私は東京を捨てる。


それは今までの全てを見切ることだったけれど

この世界に

俊ちゃんと一緒にいることよりも魅力的なことなんて

何一つとしてあるとは思えなかったから

私は躊躇しなかった。


仙台で落ち着いたら

フラワーアレンジメントの資格を取ろうと決めた。


自分の未来が楽しみでたまらなかった。


「俊ちゃんに出会ってさ

過去の全てに意味を持たせることができたの。

今現在は俊ちゃんに触れて愛情を実感してる。

未来は夢と希望で溢れてるってかんじ!

これってすごいことだよね?

なんていうかなぁ…… 俊ちゃんって

私の過去から未来まで全部一環して幸せにしてくれちゃったのよ!」


私は自分の幸せの概念が変化したのを感じながら言った。


「よくわかんねーけど、俺も幸せだよ?」

俊ちゃんは首を傾げて笑った。


『結婚すればきっと幸せになれる』

『彼ならきっと私のことを幸せにしてくれるはずだ』


かつての私はそう思いながら恋愛してきた。


幸せはいつかの未来にあるはずのもので

決して身近なものではなかった。


何かの雑誌のインタビューで

「自分が幸せだったかどうかなんて、きっと死ぬときにしかわからない」

と言ったことがある。


そう、あの時の私はそう思っていた。

今のような幸せを実感したことがなかったから。


私は今までずっと

幸せという幻想を追い求めていただけだったのだ。


「愛」も「幸せ」もその本質を知らないうちは

その言葉はただの幻想でしかない。


私は青い鳥の童話を思い出した。


「ねぇ、チルチルとミチルの話知ってる?」

俊ちゃんに尋ねた。


「チルチルとミチル? なんだっけ?」


「幸せの青い鳥を探しに旅に出るの。 

チルチルとミチルってたぶん兄弟だったと思うんだけど。

全然見つからなくてさ、くたびれ果てて家に帰ってくるのよ。

そしたらなんと! 家の鳥かごの中に青い鳥がいたの!

家にいたときには気がつかなかったのね!」


私はやや興奮気味に言った。


「唐突に何なのや? 青い鳥がどうしたの?」


「ううん。 私も青い鳥を見つけたってことが言いたかったのー!」


私は思い切り俊ちゃんに抱きついた。


きっと俊ちゃんは

意味がわからなかったと思うけれど

私の抱擁をしっかりと受け止めてくれた。




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