らぶどろっぷ【元AV嬢の私小説】 -70ページ目

第281話 身体の異変

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俊ちゃんは

約束どおり毎週日曜日に逢いにきてくれた。

土曜日の

ホストクラブの営業が終わると

そのまま店で少しの仮眠をとり

仙台発の始発の新幹線で東京へやってくる。

そして

私の仕事が始まるまで

束の間の時間を一緒に過ごす。

俊ちゃんは

必ずロック座の舞台を見て

客席から花束をプレゼントしてくれる。

自分のものになった途端

彼女に手を抜く男の子は多いけれど

俊ちゃんは出逢った頃のまま全然変わらない。

いつだって

惜しみなく愛情を示してくれる。

私は本当に幸せだった。


浅草公演の楽日。

その日は朝から体調がすぐれなかった。

この一ヶ月間

ほとんど食事を取らず

ろくすっぽ眠っていなかった。

スピードさえ吸っていれば

疲れを感じることがなかったからだ。

肉体的な疲れは

スピードで誤魔化してきたけれど

精神的なストレスは日増しに募っていった。

浅草ロック座の初舞台という重圧もさることながら

最大の理由はやはりスピードだったと思う。

『バレていないだろうか』


その不安と疑心から

必要以上に人目を気にするようになっていた。

他人の視線に対して

一度自意識過剰になると

逆に普通に振舞うことが難しくなる。


瞬きが増えたり

多弁になったりと

いわゆる挙動不審気味になってゆく。

不安になると

それを打ち消したくて

煽るようにスピードを吸う日々だった。


いつのまにか悪循環は始まっていたのだ。

一ヶ月の公演は長かった。


「今日で終わる」という思いから

緊張の糸が途切れて

急に身体に反動が出たのかもしれない。


口紅や頬紅を色濃く差して顔色の悪さを隠した。


具合の悪さに打ち勝とうと

いつも以上にスピードを吸った。

最終フィナーレの前には

眩暈と吐き気で

立っているのもようやくといった状態だった。

「これはヤバイ」

と自分でも感じていた。

とにかく

このフィナーレさえ終われば

全てから開放される。

冷や汗を拭って舞台に立ったが

踊りながら足が縺れて慌てた。

踊り子の名前が順番に読み上げられる。

私の名前が呼ばれ

ステージの中央で拍手を浴びながら

耳鳴りがして気を失いそうになった。

最後に瀬奈姐さんの名前が呼ばれ

一段と大きな拍手が鳴り響いた。

最後まで笑顔は絶やさなかったけれど

暗幕が下りたと同時に私はステージ上に倒れてしまった。

鼓動が恐ろしく早く

手足が冷たく痺れて

全く動くことが出来なかった。

男性スタッフに抱きかかえられて

楽屋に運ばれた。


口の中が渇いて

手足の感覚はなくなり

全身から力が抜け落ちていった。

救急車を呼ぶという声が聞こえて

私は息も絶え絶えに「大丈夫です」と制止した。

具合の悪さは尋常ではなく

真剣に危ない状態だということはわかっていたけれど

病院だけはまずいと思った。

言うまでもなく

血液検査を恐れていたのだ。

浅い呼吸を繰り返しながら

何度も薄れてゆく意識の中で

桜姐さんが毛布をかけてくれたのがわかった。


「桜姐さん…… 私死ぬんですか……」


スピードが致死量に達していたのか

もしくは何か不純物でも混ざっていたのか

頭の中で理由を考えながら尋ねた。


「今からあんたのとこのジイヤが向かえにくるって。 もう少し頑張りな」


桜姐さんは

ずっと私の傍についてくれていたようだった。



ジイヤが到着して

私をおんぶしてロック座から連れ出した。

「大丈夫?」 「おつかれさま!」 「ゆっくり休んでね!」

出待ちをしていたファンが大勢いたようだけれど

返事をする余裕はなかった。

そのままジイヤの車に乗り

後部座席につっぷしたまま嘔吐を繰り返した。

「病院に行くぞ」


ジイヤがアクセルを踏み込んだ。


「シャブやってるの…… だから だめ」


私は正直に言った。


ドラッグをしていると

何かあったときに病院にも行けないんだという現実を突きつけられ

恐ろしさと情けなさで止め処なく涙が零れた。


このまま死んでしまっても何の不思議もないと思った。


私は始めて

ドラッグの怖さが身に沁みていた。


本当に死ぬとこでした。 

覚醒剤の怖さはいろいろあるんだけどこの時は本当に危なかったと思う。 身体的にね。

この1ヶ月でかなり量いっちゃってたんだろうな。 真剣に死ぬ寸前だったと思う。

ドラッグやってると自分が困った時に病院&警察には行けなくなるんだよね。 リスキー。 

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