らぶどろっぷ【元AV嬢の私小説】 -321ページ目

第041話 ドロップアウト

あの熱帯夜の家出から
2ヶ月が過ぎようとしていた。


季節は一つだけ巡り

世の中は秋の気配に満ちている。


寮の前は銀杏並木になっていて

私と美咲は出勤時の夕暮れ

綺麗な黄色の絨毯の上を歩いて店に向かった。


「日が短くなったねぇ。」

美咲がポツリと言った。


「なんかうちら夏らしい事しなかったね。」

「夏らしい事ってたとえば~?」


「うーん。海もプールも行かなかったし。

カキ氷もスイカも食べてないも~ん。」


「どれもたるぃし・・・。ディスコとショッピングだけでいいやぁ~。」

「でた!美咲は本当極端だよね。あはは」


「まりもは海とかプール行きたかったの?」

「うーん・・・別に行きたくないかも。」


「でっしょ~~。きゃはは」

「あははは」


私達は秋の感傷に浸る事はなく

いつもの様に

何がおかしいのかわからない話で

笑い転げながら店まで歩いた。


『2ヶ月かぁ』

私はネオンと男達の中で生きた

この2ヶ月の事を思いだしていた。


初めはあんなに刺激的だった夜のネオンも

今では日常の背景でしかない。


時間の流れは
家にいた頃とは比べ物にならないくらい早く
もう何年も歌舞伎町にいるように感じる。

たった2ヶ月で
私はずいぶんと変わってしまった。


家にいた時も
『不良』だ『問題児』だ『トラブルメーカー』だと
言われ続けていたけれど
普通という枠の境界線くらいには

ギリギリ留まっていた様に思えた。


今の私は完全に
『普通』からはドロップアウトしてしまった。

そう感じて小さなため息をついた。


もうあの場所には戻れない。
見なくていいものを見すぎた。


『知らないって幸せな事なんだ。』


17歳で私はそう悟った。


銀杏


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