第041話 ドロップアウト
あの熱帯夜の家出から
2ヶ月が過ぎようとしていた。
季節は一つだけ巡り
世の中は秋の気配に満ちている。
寮の前は銀杏並木になっていて
私と美咲は出勤時の夕暮れ
綺麗な黄色の絨毯の上を歩いて店に向かった。
「日が短くなったねぇ。」
美咲がポツリと言った。
「なんかうちら夏らしい事しなかったね。」
「夏らしい事ってたとえば~?」
「うーん。海もプールも行かなかったし。
カキ氷もスイカも食べてないも~ん。」
「どれもたるぃし・・・。ディスコとショッピングだけでいいやぁ~。」
「でた!美咲は本当極端だよね。あはは」
「まりもは海とかプール行きたかったの?」
「うーん・・・別に行きたくないかも。」
「でっしょ~~。きゃはは」
「あははは」
私達は秋の感傷に浸る事はなく
いつもの様に
何がおかしいのかわからない話で
笑い転げながら店まで歩いた。
『2ヶ月かぁ』
私はネオンと男達の中で生きた
この2ヶ月の事を思いだしていた。
初めはあんなに刺激的だった夜のネオンも
今では日常の背景でしかない。
時間の流れは
家にいた頃とは比べ物にならないくらい早く
もう何年も歌舞伎町にいるように感じる。
たった2ヶ月で
私はずいぶんと変わってしまった。
家にいた時も
『不良』だ『問題児』だ『トラブルメーカー』だと
言われ続けていたけれど
普通という枠の境界線くらいには
ギリギリ留まっていた様に思えた。
今の私は完全に
『普通』からはドロップアウトしてしまった。
そう感じて小さなため息をついた。
もうあの場所には戻れない。
見なくていいものを見すぎた。
『知らないって幸せな事なんだ。』
17歳で私はそう悟った。
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