第091話 姐さん
顔面蒼白になり
背筋が凍りつく。
ついさっき
あんなパパを見たばかりだからか
恐怖心でいっぱいになり
足が竦んで動く事が出来ない。
『ヤクザに売り飛ばされる!?』
まさか自分がそんな立場になるだなんて
夢にも思いはしなかった。
『逃げなくちゃ!』
「ん? どうした? そんな顔して。まさか本気にしたのか? はっはっは」
パパが笑いながら顔を覗きこむ。
「い…嫌だぁ!パパったら。もぉ~」
私はパパの肩のあたりを小突いて
取り繕った笑顔を浮かべたけれど
心臓のドキドキはしばらく収まらなかった。
一度持った恐怖心はそう簡単に消えるものではない。
あんなパパを出来る事なら見たくはなかった。
そのくらい
あの時のパパは怖かった。
パパに連れられ部屋に入ると
玄関には女物の靴がいくつも乱雑に脱ぎ捨てられている。
中から
「ごわさす!」
という男達の声と
「おはようございま~す。」
という女達の声が同時に聞こえてくる。
部屋に入るなりパパも
「ごわさす!!」
と挨拶をしている。
どうやらパパよりも偉い人がいるらしい。
部屋は二つあり
左側の部屋には
女の子が10人程いるようだ。
右側の部屋には
裏ビデオの事務所と同じ様に
安っぽいちゃぶ台があり
電話が5台おかれている。
その正面に女が
両脇に男が二人座っている。
男二人は電話番だろう。
正面に座る五十代と思われる女が
ここのボスである事はすぐにわかった。
「挨拶しろ。本家のオヤジの姐さんだ。」
パパにそう言われ、私は緊張しながら
「はじめまして。まりもです。」
と礼儀正しく挨拶をする。
「松浦、おまえは本当に若い女が好きやな~。」
そう言う姐さんに
パパは頭を掻きながらとぼけている。
「まりもちゃん、私に顔通しされたからには
正真正銘、松浦の女や。
身内も同然やからな、楽にしとき。」
そのセリフはまさしく『極妻』みたいで
憧れの岩下志麻や三田佳子と重なり
私は感激してしまった。
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