登場人物
クリスティーナ:同い年のクラスメイト。ウクライナ人。同じアパートに住んでいる。
エンミ先生:担任
18.憧れの小さな先生
おそらくこれが僕のフィンランド滞在最後のフィンランド語のテストになるだろう。今日は曜日、月などのテストがあった。ほぼ記述だけのテストだったけれど、僕はまた100点を取った。クリスティーナは少し浮かない顔。点数良くなかったのかな?数字の省略を習った。エンミ先生は「それではお手本に、りくと言ってみて!」と僕を当てたので、できるだけ早口で1から10までの省略形を言った。息継ぎもしなかった。「おー!」とクラスメイトが盛り上がる。転入して来たばかりの時、僕はずっと先生と一対一で数字を勉強した。あの時は自分がここまでフィンランド語を話すことができるなんて想像もできなかった。今はエンミ先生の手伝いで自分もクラスメイトにフィンランド語を教えている。ついにあこがれの「小さな先生」になることができた。「小さな先生」とは先生にフィンランド語力が認められた人だけがなれる先生の助手だ。僕が転入して来たばかりの頃はアルティンが小さな先生として活躍していたっけ。懐かしいな。
夕方クリスティーナと一緒にアパートの1階で遊んだ。僕のアパートには最近ウクライナの人がたくさん引っ越してきて、1階のシェアルームはウクライナ人でいっぱいだった。そのうちの1人が「やあ、はじめまして。握手をしよう!」と僕に話しかけてきた。クリスティーナのお父さんの知り合いらしい。クリスティーナと僕は一緒にフィンランド語の勉強を始めた。僕がクリスティーナにフィンランド語を教えていると、ウクライナの男の人たちがニコニコしてこちらを見てきた。ウクライナ集団は僕たちが勉強するのをほほえましく思っているみたいだ。その中にはクリスティーナのお父さんもいた。クリスティーナのお父さんとは会えば必ず手を振りあって挨拶している。さっき握手した人ともそんな関係になるのかな。「クリスティーナ、僕はもうすぐ日本に帰るけど、僕がいなくても君が困らないようにフィンランド語勉強をサポートしたいんだ。」と翻訳機で見せると、クリスティーナは目に涙を浮かべて「ありがとう。」と言った。僕はクリスティーナが数字の省略形を覚えるのを手伝った。