小学3年生のフィンランド留学体験記 第七章 5月 12.僕は外国人クラスの通訳者 | フィンランドに1年住んでみる(在外研究)

フィンランドに1年住んでみる(在外研究)

~子連れフィンランド滞在記~
1年間家族でフィンランドに住みました(2022年10月〜2023年10月)。
準備からフィンランド生活について思ったこと、
感じたことを書き留めていきたいと思います!

 

登場人物

りくと:このお話の主人公。外国人クラスに通う。

エリオン:4年生のクラスメイト。転入して来たばかりのアルバニア人。

フランチェスコ:5年生のクラスメイト。イタリア人。

アラン:2年生のクラスメイト。一番の仲良し。クルド人。

ジェシアン:4年生のクラスメイト。アルバニア人。

ラウラ先生:語学を教えるスペシャリスト

ジェミフル:2年生のクラスメイト。トルコ人。

 

12.僕は外国人クラスの通訳者

 

 お泊り会の日から大人しく反応も薄かったエリオンはよく笑うようになって話しかけやすくなった。そして休み時間も一緒に遊ぶ回数が増えた。思ったより仲良くなりやすいかもしれない。早速今日もエリオンをサッカーに誘ってみた。エリオンは笑顔で「OK!」と言って僕についてきてくれた。フランチェスコ、アラン、ジェシアン、弟も加わっていつも通りサッカー場でサッカーをしているとラウラ先生が話しかけてきた。「外国人クラスはサッカー場を使っちゃダメなのよ。」そんなのおかしい!とすぐに反論したのはアランだった。ラウラ先生によると、サッカー場でサッカーがしたければ外国人クラスはフィンランド人クラスそれぞれの学年に混ざってやらなければならないらしい。なんて不公平なんだ。フィンランド人クラスの子がクラスメイトとサッカーしたいように、外国人クラスだってクラスメイトとサッカーがしたい。ラウラ先生、アランと僕で話していると、フランチェスコが僕の肩を叩いた。「りくと、先生は何て言っているの?」フランチェスコの横でエリオンも心配そうな顔をしている。僕は先生の言ったことを英語でフランチェスコとエリオンに説明した。2人とも驚いてショックを隠し切れないように「そりゃひどいよ。」とうなだれた。僕たちはサッカー場を出てPK戦ができそうな小さなスペースを見つけてそこで遊ぶことにした。みんな学校のルールに不満たらたらだった。

 ここで外国人クラスの男の子について整理してみよう。2年生のアランはクルド人でソルミ語を話す。そして、男の子の中でアランは圧倒的にフィンランド語ができる。僕はアランとフィンランド語でコミュニケーションが取れるけれど、ジェシアン、ジェミフル、フランチェスコ、エリオンはフィンランド語がまだ分からないため、みんなで話をする時は僕がアランと他の子の間に入って通訳をしている。アランが頑張って英語を勉強するか、他の男の子が頑張ってフィンランド語を勉強しないとお互いコミュニケーションを取るのは難しい。4年生のジェシアンとエリオンはアルバニア語、5年生のフランチェスコはアルバニア語とイタリア語を話す。2年生のジェミフルはトルコ語が母国語だ。ジェミフルとエリオンは英語も苦手だから僕でも難しい。エリオンはジェシアンとフランチェスコが英語をアルバニア語に訳してくれるのでまだ大丈夫だけど、ジェミフルはトルコ語だけしか話せないのでジェミフルとみんなをつなぐのは大変だ。僕はトルコ語を話す女の子たちとも仲が良いから、ジェミフルとコミュニケーションを取るのに困った時は女の子たちに助けてもらっている。ということで全員となんとなくコミュニケーションが取れるのは僕だけなのだ。男の子全員で話す時はいつも僕が会話の真ん中にいる。フィンランド語を英語に直したり、その反対をしたり、とにかくずっと話さなくてはいけないので大変だ。でも男の子全員が仲良くするためには重要な役割だとも思う。

 でも、昨日少し困ったことがあった。通訳に忙しくて全然サッカーができなかったのだ。最近プレスクールの子たちが小学生と同じ時間に外で遊ぶようになった。もうすぐプレスクールの子は1年生になるのでその準備なのかなと思う。フランチェスコと校庭でサッカーをしていたら、プレスクールの子が6人「一緒に遊ぼう!」と入って来た。フランチェスコはフィンランド語が話せない、プレスクールの子たちは英語があまり話せない。そこでまた僕は通訳の人になった。6人の元気でよく話すちびっこと、こちらもまたたくさん話すフランチェスコ。もうサッカーどころではない。ゴールキーパーをやりたがるプレスクールの男の子とフランチェスコの間を取り持つのが一番大変だった。サッカーがしたかったのに、その日は話すばかりで終始頭はフル回転。全くサッカーを楽しむことができなかった。