《考察》 なぜ、作品展をするのか? | スケッチブックと旅をして

スケッチブックと旅をして

シンガポール、フィンランド、ドイツ、スペインのマヨルカ島などに住み、現在ギリシャのロドス島に住んでいます。スケッチブック、色鉛筆、水彩絵の具を持って、日々目に留まったものや旅先で心に残った風景を書き留めています。

一時帰国まであと1週間をきり、気忙しくなってきました。


帰国中に行う作品展に少しでも多くの作品を展示したい、とまだ絵を描いています。あぁ、パッキングもしなくては!ロドスの現代美術館に展示中の作品も東京での作品展に飾るべく、取りに行かなくては!



さて。ここで、なぜ一時帰国の準備にバタバタしながらも、作品展を開催したいのかについて考察したいと思います。


実は20代半ばに、30歳になるまでの目標を作っていて、そのうちの一つが「個展をする」でした。


当時は俳画を描いており、墨と筆を使って描いたアウトラインの中に、顔彩で着色していて、花や植物の絵を描いていました。


第一回目の作品展案内

6月だったので、紫陽花。



これは4回目の個展の案内。11月近くで、庭に鈴なりになっていた柚子を。



もともとは、友だちに「最近こんなの描いてるんだ、見て見てー」と作品をファイルに入れて見てもらっていたのですが、だんだん作品が増えてファイルも重くなり、持ち運ぶのが億劫になっていきました。


持ち歩くのをやめたら、「最近の作品はないの?」「作品を見られると思ったのに、ファイル持ってきてないのかー!残念。」と、会う友人・知人ががっかりしてくれるようになって。


そんな気持ちが嬉しく、どこか場所を借りて展示し、見に来てもらえたら楽しいんじゃない?と思うようになっていったのでした。ホームページやブログが少しずつ浸透しつつありながら、Facebookもインスタグラムも現れる前の、25年近く前の話です。


東京は小田急線の梅ヶ丘駅近くにあった、ζωή(ギリシャ語で「命」の意味。この頃からギリシャに縁があったのか??)というギャラリー喫茶の壁面を借りて、初めて作品展を行うことになりました。


カフェでコーヒーを飲んで、お話ししながら絵を見てもらえたら最高じゃない?しーんと静まり返ったいわゆるギャラリーで、絵だけを見てもらうなんて、私の方がどうしたらいいかわからないもの。カフェの壁面に自分の作品を1ヶ月展示できるというギャラリー喫茶は、私のニーズにぴったりでした。当時はフルタイムの仕事をしていたため、常に在廊は無理。カフェなら、いつも店主がいてくださる。


他にも、実家に近かったこと、予算的なことなど全ての条件が一致し、すぐに「ここがいい!」とギャラリー喫茶に作品を持ち込み、店主にご挨拶、日程を決めたのでした。。シアトル系コーヒー店が至る所に立つようになった時代でしたが、このギャラリー喫茶は、店主が一杯ずつ丁寧に淹れてくれるコーヒーの香り、店内に静かに流れるジャズ、大きな声で話す若者たちがあまり来ないような厳かな雰囲気も魅力的でした。


店主と事前に打ち合わせをしていた時、

「作品は売りません。」

と断言したのですが、その時に店主に言われた言葉こそが、今の私の原点になっている気がします。


「欲しいと言ってくださる方には、喜んで譲りなさい。でないと、あなた自身が新しい作品を作る原動力を持てなくなるよ。」


今思えば、かなりお安い賃料で、作品販売のコミッションがなければ、店主も商売上がったりだったのかもしれない…でもその時の私には、非常に衝撃的な言葉でした。確かに、個展をするという目標を達成した後のことは考えていなく、その後また作品を作り続ける気力があるのかも、想像がついていませんでした。


「はーい、わかりました。売ろうと思っても簡単に売れるものではないですよね。売れてしまったら、もう私の手元になくなるのは切ないなんて思うのは図々しかったかもしれません。とりあえず値段をテキトーにつけまーす!」と20代の素直だった私は店主に言って、作品展は始まりました。


朝から夕方までのオフィスワークを終えたら、喫茶店に向かう。そんな毎日の楽しかったこと!毎日が誕生日、もしくはお祭りのようで。絵をまじまじと見てもらうのが恥ずかしくても、友だちや知り合いが来てくれて、コーヒーやビールを飲みながら語り合って…知り合いが来ない日でも喫茶店の常連さんとビールを飲み、終電を逃しそうになったり。1ヶ月が終わる頃には、「また来年もやります!」と店主に約束していたのでした。


初めての作品展ということ、20代のOLが寝る間を惜しんで描いていることへの応援もあったか、ありがたいことに初回はほぼ完売になったのでした。


しかし。作品が売れれば、それは本当に嬉しいことだけれど、もし売れなかったとしても、次の年に全く同じ作品を展示するような作品展があるだろうか。あの、毎日が誕生日のような高揚感をまた味わいたい!でも、それには新しい作品を描かなくては。そりゃ、ゴッホだのマチスだの、巨匠なら、毎回同じ作品を展示しても、入場料をもらっても、たくさんの人が来てくれるでしょう…。でも、もし、私があの頃の作品を今も全て持っていて、毎年同じ作品を展示していたとしたら、いかに近しい友だちでも、いや、家族でも来てくれなくなることは間違いなし爆笑


そんなわけで。


作品展をすることで、

①作品作りの原動力を作れる

②友人、知人と再会、それに加えて、新しい出会いもある

③②のおかげなのですが、「毎日が誕生日」のような高揚感を味わえる

から、私は作品展をしたいのだろうなぁ。


もう一つ、絵を描いていて人に見ていただく機会がないのは(作品展をするかしないかはともかく、友人、知人にでも)、舞台のお稽古をしながら、実際に上演しないような感覚を持ってしまうのです。


色々と考察してしまいましたが、、


今住むロドス島には貸しギャラリーがほとんどなく(多分1箇所だけ)、、東京には私でも借りられるギャラリーがたくさんあって、本当に幸せだと感じています。




2024年718()21()

10:00-19:00 (最終日21日は17:00まで)


The Colours Meet the Aegean Sea

〜エーゲ海の島に暮らす〜


GALLERY IRO

東京都武蔵野市吉祥寺本町1-37-7-101


毎日在廊しております。お近くにお越しの際は、お立ち寄りいただければ幸いです。