カレーライスと殺人未遂 | 是日々神経衰弱なり

カレー

それはおそらく全世界の半分くらいの人は口に、あるいは耳にしたことがあるポピュラーな食べもの。

祖先にカレーやらピロシキやら餃子やらキムチやらの血をもつわたくしですが、普通に日本で生まれて育ちましたから、カレーと言えばあの、日本カレーと呼ばれるものに一番親しみがあります。S&Bとかハウスとかね、親はまったく食べなかったけど、あたしはカレーと言えばあのカレーを連想します。

いわゆるカレーライス。

そして、どういうわけか、必ず脳か体が周期的にカレーを欲します。いったんカレーが食べたいとなると食べるまでカレーのことばかり考えてしまい、頭の中はカレーに占領されてしまう。

そう、口がカレーになってしまうのです。なにがなんでもカレーの日。

そんな昨日のこと、起き抜けに電話した相手はレーコでした。

わたしは開口一番に「レーコ、カレー!カレー食べたい!」と叫びました。レーコは、

「あらやだマリカさん、あたしも今日はカレーなのよ」

どういうわけか、彼女はいろいろタイミングがあう人で、たまたま昨日もお互いカレーの口になっていたよう。

で、有楽町のインディアンカレーへ。
近いのでタクシーを使って行くことに。

そして、あたしはレーコを迎えに行くため家の前でタクシーを拾いました。ところが、乗り込んだタクシーの運転席が、ものすごいバリケード。これはいったいどうしたものかと興味津々。

「運転手さん、どうしたのこれ、すごいバリケードじゃない。お金はらうときどーすんの?」とあたし。

「いやぁ、お客さん、わたしこのまえ女性客に刺されましてね、それでなんですよ…」

「えぇえ?刺されたんですか?なんで?タクシー強盗?」

「いやいや、お金は払ってくれました」

「じゃなんで?ケンカしたの?運転手さんいい人じゃないですか?」

「はい。わたしいい人ですよ。いい人でしょ?」

確かに。じゃなんで?意味がわからない。

としたところにレーコが乗車。銀座のクラブのオーナーママともなれば相手の顔色と空気が読めねば務まらない。


「あら、怪訝な顔してどしたの?」

「この運転手さん、乗っけた女に刺されたんだって。新聞にも出たらしいよ」

「その女性客ってどっから乗ってきたの?」

「銀座です。真夜中に一人で。泥酔に近かったです」

「えーーー‼︎ 」

「何歳くらい?」

「どこでどうして何で刺されたの?」

「刺されたのは、アイスピックです」

「アイスピックウゥゥ~」

レーコとあたしは同時に叫び顔を見合わせた。



つづく