昨日の続きです

https://ameblo.jp/maria-bs2018/entry-12747870080.html 




男性との会話は続きます。

知らない人と話すことが嫌いではない私。そんな私が誰でもいいから話したい、という男性に巡りあったのはやっぱり何か「縁」とかそういう大きな力があったのかな
、と思ったりした。

男性にして見れば若い女性に声をかけるわけにもいかず、本当に困っていたんだと思います。


犬「わたしね、小柄でしょ?」

男性は小太りだったけど確かに背は高くない人でした。

犬「それでなんでしょうかね。大柄の男の人が側にたたれるだけで苦しくなるんです。特に電車のドアの近くに立たれると『とうせんぼ』されている気になってしまって。自分を閉じ込めている気になってしまって。怖くて怖くて」


ニコニコ「そうなんですか。」

犬「だからね、ホームに男性が立って電車を待っていたら、あわてて自分は降りるんです。だから各駅の電車じゃないとダメで。いつでも降りられる、って思わないと無理なんですよ。」

ニコニコ「え?じゃあ、新幹線は?」

犬「各駅です。本当は乗りたくないけど、親戚に不幸があったんです。だからどうしても行くしかなくて。」


あー、それは大変。

犬「…震災以来なんですよ。この症状。」

ニコニコ「…そうですか。」

犬「特にね、閉じ込められたとか被害にあったわけでもないのに、情けないですよ。」

ニコニコ「いいえ、あの震災、誰の心も多かれ少なかれみんな傷つきましたよ。」

犬「…はい。そうですよね。」


誰しも、自分ではどうにもならない大きな力に圧倒され打ちのめされた。今でも東北の被災地の人間は「震災」をひとつの大きな区切りとしている。普通の会話のなかに
「それって震災前?」だとか
「震災の後すぐだったから11年前?」だとか何かとあの日を境目として物事を考える。




その時、とある駅のホームをみて、男性の顔が明らかにひきつった。

ホームには若い男性を含むたくさんの人が電車を待っていた。
私は何も見えないふりをして話しかける。

ニコニコ「ダウンタウンの松本人志さんも、番組のどっきりで浜田さんを脅かそうとして土の中に潜んで隠れていたときから閉所が苦手なそうですよ。」

犬「え、そうなんですか?」

ニコニコ「はい。あんなマッチョな人でもそうなんですね。でも、考えてみれば、『怖いものなんにもない』って人の方が怖くないですか?て、いうか、そんな人いるわけないですよね。」

犬「…え?あぁ。そうですねぇ。…そうか。そうかも。」

そう話している間にホームから多くの人が電車に乗り込んできた。ドアが閉まった。私のとなり席にも中年の女性が座った。ああ、大きな男性じゃなくて良かったと○○さんのことを思った。

犬「あ…。駅、出発しましたね。」

ニコニコ「そうですね。」


犬「…あなたがいなかったら間違いなく降りてました。そしてまたどうしたらいいかわからなくなってました。あなたがいたからこうしていられます。」

ニコニコ「お役に立てたなら良かったです。私も楽しかったです。」

犬「あなたの笑顔に助けられました。なんとか東京までいけると思います。各駅で乗っていくし、お酒の力も借りることになりますけど」



ただ、ここで。いよいよ私が降りる駅が近づいてきた。

男性は明らかに不安そうだ。

なんとかしてあげたいけど。でも私が予定を変更してまで彼に付き合うことは違うと思った。

でも。きっと、きっと。見知らぬ彼を助けてくれる人はいるはず。

そう思った私は、さっきの駅から乗り込み、私の隣に腰をおろした女性に声を掛けた。

ニコニコ「すみません。終点まで乗っていかれますか?」

話しかけられた女性は驚いたように私をみて。それでも私のことをすぐさま観察して

ニコニコ「はい。終点まで。」

ニコニコ「急にこんなことを言って申し訳ないんですけど。この男性、訳あって電車か怖いそうなんです。それで、私は次の駅で降りなければいけないんですが、終点までこの方が不安になったときに話を聞いてあげてくれませんか?」

女性は黙って私を見つめ、男性をじっとみて。

ニコニコ「二人は偶然に会ったの?」と聞いた

犬「はい。A駅で偶然ホームで。私がお願いしたんです。途中まででいいので、って。」

ニコニコ「わかりました。いいですよ。」

マスクをしていたけどその目はキラキラしていて。

なんというのか、まっすぐな好奇心と暖かい気持ちが表れていた。

ものすごい気さくに
ニコニコ「どこまで?え?東京?大丈夫?あー、各駅で?へぇ、震災からなの。」

と全然臆することなく、遠慮もなく、男性に話しかけた。

犬「はい。本当に情けなくて。笑ってください」

ニコニコ「笑わないわよ。おかしくないもの。大変だとは思うけど」


ああ、このひと、私と同じこと言ってる。
きっとこの人なら大丈夫。


私の降車駅に電車は入る。
ニコニコ「それじゃあ、私は、ここで。貴女にバトンを渡します。○○さん、お元気で。さようなら。」

犬「ありがとうございました!」


私は雨のホームに降りて。振り返らずに改札に向かった。


私がこうして知らない男性と話をしようと思ったのも、初対面の女性に助けを願ったのも。

考えてみればこのブログで名も顔も知らない人たちに沢山助けられた経験があったから。

手を伸ばせば、助けてくれるひとがいる心強さを知ったから。


そしてブログに書いた。

すると同じような気持ちになったことがある、という人からコメントをいただいた。

私自身は全くもってこういった症状に知識も経験もない。

私のしたことが正しかったのかどうかすらわからない。

でもね。特定の神様を信仰しているわけでない私にも、きっと見守ってくれている人や物や思いはあると思うのだ。

世の中いい人ばかりじゃないってことはわかっているけど、悪い人ばっかりじゃないってことは「知っている」。

だって私が悩んだり辛かったり逆に嬉しかったりしたときに

「大丈夫だよ」
「心配ないよ」
「同感だよ」
「私も悔しい」「嬉しい」「悲しい」って言ってくれたり、どうしようもないくだらない思いに本気で一緒に考えてくれる人がいっぱいいるってブログを通して知ったから。

だからね。コメントであの○○さんという人が「mariaさんのおかげで救われたんだよ」って言ってくれるけど
それはさ、私だけじゃないんだよ。

私の心の大事な部分にはいつもこのブログで知り合った人たちの大きい、優しい思いがあって。それが私の背中を押してくれたんだと思う。

だってね。コメントやメッセージをくれたり、いいねのボタンを押してくれたり一緒に考えながら読んでくれたみなさん。きっとこの男性に

「無事に目的地にたどり着けますように」
「無事に帰ってこれますように」
「旅の途中で助けを求め、助けをえられますように」

って願ってくれたに違いないから。

渡る世間に鬼はいるかもしれないけど、鬼ばかりではないって思う。

うん。きっとね。


雨の日の数十分間の出来事。


用事を済ませて、外に出てみたら信じられないくらい晴れ渡っていた。

道路に出たら馴染みのある車が止まっていて。
夫が迎えに来てくれていた。

小走りで車に乗り込み、この話をした。

夫はどう思ったかな?特に感想は言わなかったし聞かなかった。


今週も穏やかに過ごせますように。