実家を訪れて数日後


イライラと混乱で消耗した兄からの電話がありました


「助けてくれ!お母さんの言ってることが分からない!今なら電話に出てくれると思うから話を聞いて俺に通訳してくれ」



「え?ちょっと、何よ?通訳って……てかどんなふうに言われたの?」



「よくわからないんだよ。「100倍だか1000倍に薄める液体をペットボトルの底に入れて編み物をしたい」「お友達に頼まれた」「うちにあるはずだから持ってきて」って言われた。」



何だその指令。




地獄のような伝言ゲームに巻き込まれた私です




さて、皆さんこのクイズに答えわかりますか?


分かるわけないよね。爆笑



仕方なく母に電話をしました。


あ、出た!珍しい!携帯電話に出られるようになったんだな。



「お母さん、お兄ちゃんとの会話が成り立たないと聞いたので中継に入ります」


「よかったわ!あの子(兄)全然通じなくてすぐ短気起こして『そんなのわからねえ!』って怒鳴るのよ」


「あー、そうなんだ真顔


どっちもどっちなんだろうな、これ。


「で?お母さんは何が欲しいの?」


「薄めて使うお花に使う液体」


ほほぉ……なるほど。


「それは家の中にあるの?買ってくるの?」


「家にあるの。2000くらいのを買ったの」


「2000の単位は何かな?ミリリットル?それとも価格の2000円?」


「リットルじゃないの。それを薄めるの。何かの瓶に入れて持ってきてほしいの」


「ふむふむ。持って行って大丈夫なものなのか分からないから聞くけど、それはなにに使うの?」


「お花を植え替えたいの」


おお!新しい情報が!


「お母さんがお花を植え替えたいのね?それはどこからどこへ植え替えたいの?」


「私じゃないわよ」


「ん?お母さんは植え替えしないの?」


「だって、母の日に〇〇(弟)が数カ月持つお花を切ったのを持ってきてくれるって言ってたから私は要らないの」


「ほう……あ、プリザーブドフラワーみたいなのかな?お水あげたりしなくていいものね?」


「そう!それをこの施設の私のテーブルに置くから私は要らないの。お友達は施設の花壇から分けてもらうの」


よし!どうやら母は施設に入居しているお友達のために「謎の液体」を求めているらしいよ!



「そうなんだ。なにに入れて植え替えした花を花壇から持ってくるの?」


「それがね!ペットボトル切ったみたいなものに入れてくるだけなのよ!お薬とかいるわけでもなく!だから私、薬なら家にあるから持ってきてもらうわ、って言ってあげたの」


「………ああ!なるほど、お母さんがもって来てもらいたいものは…………お花の栄養剤ね?」


「そう!それ!」


「お家のベランダとか家の中にあるのね?薄めて使う栄養剤が」


「そうなのよ!そう言っているのにあの子(兄)全然わかってくれないの!」


「そうねぇ……お母さん。薄めて使う栄養剤はさ、なかなか持って行きづらいとおもうのよ。だからね、思うんだけど、例えば100円ショップとかで、机に置ける小さい植木鉢🪴と下皿買って、ついでに栄養剤もバラで売ってるだろうから買ってきてもらったら?で、セットにしてお友達にプレゼントしたら?」


「それいいわね!500円くらいで買える?」


「買えるよ」


「よかった!じゃあ、それお願いしといて」


「わかった……それとさ、ペットボトルがどうこう言ってたけど、それは同じ話?別の話?」


「ペットボトル?ああ!毛糸で編みたいのよ」



ほら!一難去ってまた一難!次なる謎解きの問題が現れましたよ!


「毛糸で編む……のね?」


「そう!TVで〇〇さんがシマシマの毛糸の持ってたじゃない?ああいうの欲しいの。でもそのまま編んだら倒れるでしょ?だから家にあるビロードみたいな手触りの底を持ってきてほしいの」


通じました?わかった方は高齢者とのお喋り理解検定2級を差し上げます。


因みに施設の担当者の方からは

「お母さんが何を言ってるのか分からない」と言われております。


しかしながら私は長年「八兵衛の長男の嫁」を続けており、わけのわからない話の通訳を勤めているのでその手の話は理解できるのです。

……正直こんなスキル要らないチュー


「わかった。つまりお母さんはペットボトルカバーを作りたいのね?毛糸で」


「そうよ」


「で、そのまま平べったく編んじゃったら、ペットボトルは転んじゃうから、自立する形にしたくて底の部分、コースターみたいなものを入れて編み込みたいのね?」


「そうなの!雑貨屋さんでその底の部分を5枚くらい買って、手芸の箱に入れてるの!『キャシー中島のキルト』とかのと一緒にしてると思うのよ」


もうこの際キャシー中島のキルトとかいうワードには引っ張られてはダメに違いない。


母の手芸の箱(5個くらいある)を調べてコースター的なものを兄に見つけてもらうしかないらしい


「お母さん。お兄ちゃんに話が通じないのはお母さんがいっぺんに複数の話を飛び飛びに話すからよ。お兄ちゃんは、お母さんがペットボトルの底に謎の液体を詰めて持ってきてほしい、って受け取ったわよ」


「ええええ?なんで?なんであの子は理解できないの?」


「………それはね、伝える人も聞く人も違う方向に向かって話しているから。人に説明する時には誰がどんな目的でどんな物を欲しがっているかちゃんと、伝えなきゃ駄目。今回はお母さんが持ってきてもらいたいものを複数いっぺんにしゃべってたの。聞いている人はお母さんが欲しいものが複数あるとは思わないの。まず一つ。持ってきてもらいたいものを理解してもらってから、『次に』ってしないと駄目よ」


「面倒くさいわねぇ。理解できないかしら」


超能力ないからね




母の話を今度は兄にした。

「………え?そんな意味だったの?………すまんね、理解しました。次の時持ってくよ。……きっとまた通訳頼むと思う」




母の話の謎解きならば私はQuizKnockにも負けない気がする


それもこれも八兵衛の特訓のおかげだよね………って感謝するわけではないからな!



今日もよい1日を