
著者: 吉村 萬壱
タイトル: ハリガネムシ
第129回芥川賞受賞作
元来、芥川賞作品には好きな作品がない。どちらかといえば直木賞派である。・・・と思っていたのだが、気づいてみると「読まず嫌い」だったのかも知れないと思った。
そもそも、そんな私が芥川賞作品に興味を持つきっかけになったのは、やはり、昨年話題となった「蹴りたい背中」と「蛇にピアス」(いずれも第130回芥川賞受賞作)である。(といっても2冊を買ったわけではなく、2作品全文掲載された「文芸春秋」を買ったのだが・・・)こちらのレビューは別の機会にゆずるとして、本作。
悪い評価=エロい、グロい、トンデモ教師とキ○○イ女の変態恋愛話
良い評価=軽い筆致と読ませるストーリーテリング
花村萬月&馳星周愛好家の私としては、描写そのものには世間で言うほどの悪い印象はない。物語のグロテスクさをおどろおどろしくならぬように適度にいなしながら、主人公の教師とソープ嬢の「愛」を描いてゆく。ただ、花村や馳のように、そこからロマンや文学がかおるということはない。ある意味、たんたんとしているのだ。
教師とて一人の人間であり、ソープ嬢とて一人の人間。日常の中で自己の存在を確認できずにいた二人が、お互いの中にお互いの「自分」を確認する。
パラサイト=ハリガネムシ=宿主の死により自らもその姿をさらさざるを得なくなるという構図は見事。タイトルは、まさに言い得て妙である。でも、それだけ。登場人物になるどころか、物語世界に入り込めず、終始傍観者での読了となった。もっとも、それが著者の意図するところかもしれないが、このような教師(主人公も著者も高校教師である)がいるのもちょっとこわい。
本にも「R指定」があるなら、是非そうして欲しい。
芥川賞とはいえ、さすがに中学の図書館にはキツかろう。芥川賞作品だからと読まずに図書蔵書にすると、購買担当者はキツーイお叱りを受けるかも知れない。
ブラックな気分になりたいとき、滅入るような読後感を味わいたいときにはおススメの一冊だ。(実際にそんな気分を味わいたい人がいるかどうかは疑問だが・・・)
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