『教育委員会は、主人公のような講師を即刻採用せよ』
【おすすめポイント】
①どんな学校でも仕事を十分にこなす「スーパー講師」の活躍
・生来の仕事嫌いで教師という仕事も好きじゃないと言う主人公だが、殺人を含む校内での事件を解決するだけなく、児童のいじめ等の問題も解決してしまう。もはや、本採用待ったなしである。もちろん、本人は辞退するだろうが…。
②各短編にある主人公の締めのメッセージが心に刺さる
・「なあみんな、人間ってのは弱いもんなんだよ。で、教師だって人間なんだ。おれだって弱い。おまえらだって弱い。弱い者同士、助け合って生きていかなきゃ、誰も幸せになんてなれないんだ」(第3章「10×5+5+1」より)ってセリフが一番共感できて、好きかな。
・ここ数年感じていることだけど、担任する子どもにどの程度自己開示できるかが大切だと思う。教師の失敗談とかも話して、子ども達に「同じような失敗をしないでほしい」と言っている。まあ、私自身がうっかり八兵衛のような、ゆるキャラのような風貌だから効果があるのかもしれないが…。
・「先生も人間だから失敗もする。失敗したら心から謝る。」と自分も実践しているし、子ども達にも伝えている。
③短編集になっていて、読書が苦手でも読みやすい
・私も読書を得意としていないが、1つの章で1つの事件が解決する構成になっていて読みやすい。(1章30~40ページ程度)小学校を舞台にしているのもあって、小学校高学年でも理解できそうなトリックが多い。
・ちょっとしたことだが、各章で舞台になる学校名にネタが仕込まれている。
【雑談】
・「非常勤」だと思っていたけど、本のタイトルは「非情勤」なんだよね。タイトルだけ見ると、非情でロボットみたいな講師を想像したけど、読み進めると全然違う。主人公はミステリ作家を目指していて、教師の仕事が本命ではないというだけで、きちんと仕事をしている。子ども達の問題にも向き合っている。
私が採用された時は、クラスも授業も校務分掌の仕事もどれも上手くいかず、勤務時間が長くなり、学校と家の往復しかしていなかった。「このまま毎年上手くいかなかったら辞めるしかないかな」と不安に思っていた。「人生=学校」みたいになっていた。そんな自分を振り返ると、主人公の「学校だけが全てない」という主人公の考え方にもっと早く触れたかった。
・今は講師不足で産休などに入る先生がいると、代わりの講師がいなくて欠員の状態になる。私の勤務校も欠員の状態であった。
小説ではあるが、配属される学校で見事に仕事をこなせる主人公に嫉妬してしまう。また、勤務校の話になるが、勤務校の若手の先生もよく気が付き、クラスも上手くまとめていて、自分の初任者時代とはえらい違いで嫉妬してしまいそうである。「〇〇先生の教室きれいだね」「若いのに授業の進度が追い付いててすごい」などプラスの声かけをしている。若手の先生に気持ちよく仕事をしてもらいたいから。若いのに仕事ができるステキな先生が辞めたら学校教育の損害だし。
私自身の教職人生を振り返ると数多くの失敗をしてきたからこそここ数年は「昔と同じ失敗をしたくない」と思って行動している。「それもありか」と自分を納得させる。それでも失敗あるけど…。
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