“やましい葬儀屋”。
そう、のっけから歌われる楽曲があり、
僕はそれがかかるのを待っていた。
しばし桜を眺め、それからひと仕事をしたのち、
このまま自宅に帰るのは勿体ない気がする。
そう思い、途中のブックオフを覗いた。
真っ直ぐ帰ればいいものを…。
しかし、グダグダ感タップリの時に限って、不思議と引きが強いということもある。
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無印良品の著書が目に留まった。
時々無印良品を覗くと、小さな冊子を目にする。
実は、その印刷物を手に取っては、持ち帰ってきた。
決して、“すべて”というわけではないけれど。
これは、それを1冊まとめたものだと思う。
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それを含め、店内を見出してすぐに3冊を手にしていた。
すでに収穫の多い日だった。
後は、単行本を見て、帰ろうか。
そう、思った瞬間、遠くの方でボブディランの音楽が聴こえてきた。
離れていても、すぐにわかった。
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『ホームシックブルース』じゃあないか!
春らしく晴れた土曜日の昼前。
耳障りの良い音楽を割くように、それは聞こえてきた。
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そのコーナーに行ってみる。
どうやら古いレコード 取り扱うコーナーができたらしい。
ベスト盤を流しているんだな、とピンと来た。
『ミスター・タンブリン』、『ホームシック・ ブルース 』、『やせっぽっちのバラッド』が耳に入っていたからだ。
それらは、同じアルバムに収録されてはいない。
『ジャスト・ライク・ア・ウーマン』が終わり、次に『ライク・ア・ローリングストーン』がかかった。
そろそろ『 I want you』がかかるかも知れない。
かかるに違いない、そう思いはじめていた。
『 I want you』 は、これまで数え切れないほど聴いてきたけれど、一体何が歌われているのか、さっぱりわからない。
何しろ、出だしから“ “やましい葬儀屋”という歌詞が歌われるし、“酔っ払いの議員”という歌詞が出てくる。
それらは、前後の歌詞とはつながりがなく、
まるで言葉を切り貼りしたかのように思えるのだ。
だから、そこだけみてもわからないし、全体的にもつながりがないように思えるのだ。
僕は、ある時を境に意味を探ることを諦めた。
しかし、繰り返し歌われる“ want you”だけは、わかる。
ディランが吹いている ハーモニカも素晴らしい。
何と言うか…本気で吹いてるなという感じがする。
ディランの“ I want you”と、ハーモニカの音色だけで僕は満たされてしまうところがある。
まるで、“I want you”以外のことは、みんなお呼びじゃあないんだよ。そんな風にも響いてくる。
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荒々しく、たたきつけるかのような一曲が始まった。
『我が道をゆく』だ。
土曜日の昼下がり、どんな店であろうが、こういう曲はかけないんじゃないだろうか。
それほどに荒々しいのだ。
それほどに荒々しいのだ。
時が経てば分かるのさ
誰が倒れ 誰が残ったか
時が経てば分かるのさ
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待てども『 I want you』はかからない。
しかし、それで手を打つことにした。
店を後にしたのだった。
店を後にしたのだった。




