ある作品を観たら、次はその脚本家や監督、役者の関わった別の作品を観たみたくなるものである。まるで数珠つなぎのように。
前回:映画「恋人たちの予感」

 

 

 

数珠つなぎ経緯
 

大人計画ができるまで』という松尾スズキさん著の本を読んでからというもの、大人計画への興味と憧れは果てがない。そして松尾さんは同じ福岡出身という勝手な親近感。本を読んで大人計画の歴史のようなもの垣間見て思ったのは「やっぱすげえ」という単純で面白くない感想。こんなんじゃ創り手として大成するわけないやと悲しくなりつつ、それでも目標にしたくなる。どんな種類でもいいから「面白い」を突き詰めて、実行に移す人。

そのくせ大人計画の作品を初めて見たのはつい先日。

 

 

だってチケット取れないんだもん。タイミング合わないんだもん。

そう思い続けて、今回もほぼ諦めモード。
キャストを見てみなよ、阿部サダヲさん麻生久美子さん皆川猿時さん谷原章介さんテレビでも大活躍の皆様方。そして猫背椿さん田村たがめさん等大人計画の手練れの面々と存在感あり過ぎるゲスト。

諦めていた・・・なのに前回と同様、今回もリセールチケットが舞い込んできた!!「イケる!!」即ポチリ。購入!やったー!!

意気揚々と、聖地本多劇場へ向かった。


あらすじ
 

3度目の再演とのことで、人気の作品(もしくは松尾さんのお気に入り)であることが窺える。

 

裏手に古い竹林が広がるとある田舎町のドライブイン。
経営者のアキオ(阿部サダヲ)は妹に対して、兄妹愛と括ってしまうにはあまりにも純粋な思いを抱いていた。妹マリエ(麻生久美子)は14年前、店にたまたま訪れた芸能マネージャー若松(谷原章介)にスカウトされ、東京でアイドルデビューするも結婚を機に引退。その後、夫の自殺など数々の経験を重ね、中学生の息子ユキヲ(田村たがめ)と共に地元に帰ってくる。
このカリフォルニアという名のドライブインには、腹違いの弟ケイスケ(小松和重)、アルバイトのエミコ(河合優実)が働いていた。そして兄妹の父親ショウゾウ(村杉蝉之介)、高校教師の大辻(皆川猿時)、アキオの恋人マリア(川上友里)、若松の妻クリコ(猫背椿)、クリコの不倫相手ヤマグチ(東野良平)などを巻き込み、複雑に時が流れだす・・・・・

引用:https://otonakeikaku.net/2022-drivein/

 

 

この作品は大人計画の中でも、ニッソーヒと呼ばれる『日本総合悲劇協会』と呼ばれる“悲劇”を基本としたプロデュース公演。その第一弾がこの「ドライブイン カリフォルニア」だった。コメディよりも悲劇寄りの作品だと思って心して臨んだ。

望んだ・・・

けど。


感想(ネタバレあり)
 

コメディー全開!!
笑いを取りに行きまくる貪欲な作品だった!
やっぱそうだよね!大人計画だもんね!!

もちろんストーリーにはずっと悲劇の代表である「死」が付きまとってはいるんだけど、全員が貪欲に全力でコメディを体現している。そのパワーと言ったら。。

阿部さんは何というか、うまい。当たり前のこと言ってすみません。全ての動きとセリフに無駄がない。舞台上に出てくるたびに惹きつけられる。でも欲を言えばもっと狂った役が見たかった。登場人物全員が変なヤツだったから、変さ具合が少ない方だったと思う。むしろまともに見えると言うか。それもある意味凄いんだけど。

一番大好きだったのは、猫背椿さん。映像で見るのとは違って、振り切れ方がもう、全神経まで行き届いていて、一挙手一投足が面白かった。もちろん役の面白さあってのことだけど、肉体と顔面の使い方が恐るべしで、多くの笑いを担っていたポジション。

(ここからネタバレ)

皆川猿時さんのパワーえぐかった。キャストの中では一番最後に舞台に登場するんだけど、その待っていた分を全部吐き出しているような、尋常じゃないエネルギーを放出していた。特に紙芝居のくだり。本当に笑った。あの芸、何?(笑) ツッコんでいる阿部さん、多分アドリブだった。うるさすぎてキャストの皆さんも笑っていたと思うな。

阿部さん演じるアキオの死んだ父親が実は床下で暮らしているのだけど、それはつかこうへいの「出発」のオマージュかなと思ってニヤけた。呪われた家系というのも近しい。

たぶんもっといろんな分かる人には分かる笑いやエピソードがあるんだろうけど、全部を拾えない自分が悔しい。時事ネタもふんだんに織り込まれていて、そこも笑ったなぁ。ちょっと聞き取れないのもあったけど。。。

演出も面白かった。壁が透けるのはどうやってるんだろう?紗幕かな?
あと動くスロープ(?)が一回しか使われなかったのは贅沢だった。

これはどの舞台を観ても思うんだけど、暗転の時うっすら見える蓄光テープがとても好き。これは役者たちの道しるべ。星明かりみたいに光っているから。

お芝居には気力と体力がいるってこと。どんなベテランでも、中堅でも、ベテランでも、老若男女問わず、舞台に立つ以上は、全身全霊である。
初歩的なことだけれど、今をときめく皆さんが体現して下さっているのだから、わたしはもっともっとやらなければいけないと、頭と心で感じさせてもらった。

甘い自分に鞭打って、今日も稽古へ向かいます。


次の作品
 

未定。