Pronoun というのはいわゆる代名詞ですが、英語圏ではこれがトランスジェンダー、ノンバイナリーの人達にとって日本語の代名詞とはちょっと違った重みを持っています。というのも英語では代名詞を会話、文章で使う場合が日本語よりずっと多いにもかかわらず三人称単数で人を指す場合の選択肢は he あるいは she と性別がはっきりくっきり分かれているどちらかのみ。つまりある人について話をする場合、性別がはっきりしていないとコミュニケ―ションに支障をきたすということですね。

 

私達は普通他の人を目にしたら無意識に瞬時に性別を判断してそれに沿ったPronoun を使うわけですが、トランスジェンダーの場合はパス度が十分でないと間違ったPronoun を使われることが多くなり(ミスジェンダーされる、といいます)、これが実はかなりの苦痛なのです。トランス女性の場合だと he/his/him を使われる場合ですね。パス度を上げられない当人が悪い、と開き直る外見至上主義の残念な人達はおいといて、性自認はきちっと尊重する、できれば傷つけたくない、という人達にとって本人が望む代名詞を外見から推定するのが難しい場合はどうすればいい?

 

もちろん本人に訊けば万事解決ですが、いちいちそんなこと面倒、というのも当然理解できます。というわけでここ数年は自分を指す場合に積極的に使用してもらいたい代名詞を機会があるごとに表示することが広まってきています。メールの最後の名前の後に he/him と表示したり、ビデオ会議の名前の表示にも名前の後に she/her と表示したり。トレードショー、学会などの会議参加者や小売店の店員、イベントスタッフの名札にも名前と一緒にしっかり表示。若い世代のSNSプロフィール欄にもよく見かけます。

 

 

英語圏に旅行したり英語圏の人達とやり取りする機会がある人なら見たことある人は多いと思います。でも特筆すべきは、ミスジェンダーされる可能性のあるトランス、ノンバイナリーの人達より、シスヘテロの人達が率先してこれを実践していること。カミングアウト前の当事者が表示を躊躇するのは仕方ありませんが、埋没していたいトランスが「念のため」表示したために逆にトランスであることを疑われるなんてことがあっては逆効果。多数派の(ミスジェンダーされることは全くないであろう)シス・ヘテロの人達が表示することによって、「表示していることがトランス、ノンバイナリーであるということでは決してない」という認識を広がっている、ということです。当事者としては非常にありがたい動きです。

 

ところで、ノンバイナリーの場合の代名詞ですが、男女二択の he/him、 she/herだけではなく、本来は複数形の代名詞である they/them を使う人も増えてきています。 she/they という場合もよく目にしますが女性寄りのノンバイナリーかな、と推定もできます。複数形の代名詞they/them を単数である個人に使うのはトランス当事者である私もなかなか慣れないのですが、気を付けていこうと思っています。

 

私は米国北東部在住で夏に西海岸に帰省、というのがバターンですが、北東部も西海岸も米国では最もリベラルな地域です。なのでこういった希望する代名詞併記の人達、サービス業スタッフを日常普通に目にするのですが、保守的な南部――テキサス、フロリダ、ルイジアナなど――では珍しいのかもしれません。最近は南部各州のあまりに強硬な反トランス攻勢にがっくり、げんなりです。私はかなりの旅行好きなのですが、南部へは当面休暇で行くことはなさそうです。

 

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