皆さんもご存じのとおり、性同一障害特例法のトランスジェンダーの性別変更について、生殖機能喪失手術を要件とする部分が最高裁大法廷によって違憲であるとの判断が下されました。判事15人全員一致での決定、そして最高裁が法令を違憲とするのはわずか12件目というのは重いものがあり、当事者としては現状改善への一歩として大いに歓迎したいと思います。
ただこの決定はまだまだ通過点。もう一つの争点であった外観変更要件については判断せず、少なくとも当面維持されることに。(15人中3人の判事は外観要件も違憲との判断です。) 多くのトランスジェンダーにとって手術なしで外観要件を満たすことは不可能なので、戸籍の性別変更に「強度の身体的侵襲である手術」が必要であることには変わりはありません。外観要件判断せずの12人の判事は浴場入場ルールと絡められたくないのが理由なのではと勘ぐっていますが、浴場入場ルールは戸籍の性別とは別問題ということを明記した上できっちりこちらも違憲との判断をしてほしかったですね。
そして今回の判断範囲ではありませんが、私はその他の要件、特に婚姻関係がないことと未成年の子供がいないことも全く不必要な、過度にハードルの高い条件だと思っています。婚姻関係については同性婚が合法化されるまでは動けないのかもしれませんが、米国では同性婚合法化前でも既に結婚している場合は婚姻関係を継続したままでの性別変更が認められていました。そもそも未だに日本で同性婚が合法化されてないというのは恥の一言に尽きますが。
未成年の子供については生殖機能喪失要件と同じで、根本には性別移行をしたら親になってはいけない、子供を持ってはいけない、という意識が社会に根強くあるからというのが私の印象です。日本では同性婚のカップルに対しても同様の考え方をする人が多いように見受けられます。でもなぜ?両親が同性だと子供が情緒面で「正しく」育たない?生物学的男性の母親がいると子供が「混乱」する?
私は両親がシス・ヘテロでないと子供の教育、成長に悪影響があるなんてことは断じてないと思っています。親、学校は子供の成長に大きな影響がありますが、両親がシス・ヘテロかどうかで良し悪しが決まるものではありません。私の怒りが収まらないのはこの「両親がシス・ヘテロでなければならない」という考えの裏に「子供が親に影響されてLGBTQに育ってしまったらどうする?」という問いが透けて見えるからです。
強調しておきたいのは――以前にも似たようなことを述べたような気がしますが――
1.親・学校の教育・影響で子供がLGBTQに「育つ」わけではないということ
2.LGBTQであることは悪い(ネガティブな)ことではないということ
の二点。
でもほんと、「子供が親に影響されてLGBTQに育ってしまう」なんてことを言っている人達って自分がシス・ヘテロに「育った」のは「親や教育のおかげ」なんて思ってるんでしょうか。LGBTQであることはよくないことだ、と思っているんでしょうか。自分がシス・ヘテロに「生まれてきた、選択肢がなかった」という意識があるならばなぜシス・ヘテロに生まれてこなかった人達を否定するのでしょうか。
生物学的男性の母親がいても子供は「混乱」しません。混乱しているのはそうであってはならないと昔のままの間違った考えに頑なにしがみついている大人の方です。これからの世代がシス・ヘテロ・バイナリー至上主義の大人に育たないよう教育をしっかりしていかなくてはなりませんね。