ヒカリエに行きたい -8ページ目

ヒカリエに行きたい

ラーメン食べたい

気になっている。

先ほどから、先刻から、一寸前から。

何がと言えば、前に並んでるやつの整髪料である。なんじゃこりゃ。なんでラーメン食うのに整髪料つけてるのけ?モテたいならこんなとこで男汁だしまくりなラーメンを食らおうとするなよ。何だよ。お前みたいなのがにんにくを増すこともなく、むしろにんにく抜きで注文するような弱輩なんではないのけ?けけけ?

俺はな、このラーメンを食べるために涙がちょちょ切れるほどの犠牲をしいてきたんだ。医者にメタボと診断され、女からは見向きもされず、店主のにんにく入れますかに瞬時に対応できる洞察力と瞬発力を養うためバッティングセンターに通い、ACのCMを何度も見てはどのキャラが一番ユルイのか比較検討してみたり、黒ウーロン茶を片時も離さず、家を出る前ににんにく対策に牛乳を飲んでみたり、そのせいでお腹がユルクなったり。このユルは前のキャラがユルいとかかっていることに注目していただきたいわけで。

それほどまでに色々と考えてきたわけで、女にモテたいなんてことは一度も思ってみたりなんかすることもなく、むしろ寄ってきた女はすべからく追い返してきたわけで、そんなお前みたいなツンツンとした髪型にしてみたいとなんかこれっぽっちも毛の先ほども足の小指の爪先ほども考えたことなんかないんだからねっ!


前に並んでいるヤツ、以降面倒なので「ヤツ」とだけ表記することにするが、そヤツは先ほどから携帯をずっと弄繰り回している。漢字変換にしてみるとこうなったが、ひらがなにすると、いじくりまわしているのである。なんやアンタ、やっぱりコレか。コレにメールでも挿入してやろうという腹積もりかこの野郎。己の腹には大豚をぶっこんで、己のコレにはアレをぶっこむつもりか。ふざけんな。コノヤロウ。マジでふざけんじゃねえよ。mjfzknzny。

こっちはなあ、身も心も財布も寒い中、こうやって唯一の希望として、暖かさを感じるために、ここに並んでいるんだよ。お前みたいな、狭い了見でのうのうと人生を楽しんでいるメリーゴーランド人生野郎は同じところをぐるぐるぐるぐるずっと回っていればいいんだよ。ここのラーメンを食う権利はなし!よって今すぐこの列から立ち去られい!と念じてみる。宝くじの3等が当たらないかなという気持ちで念じてみる。


「もし。あ、俺。実はさ、」んだよ、次は電話かよ。もう駄目だこりゃ。あたしゃもう駄目だ。限界だ。こんなヤツと同じ空気を吸いたくないし、こんなヤツと一緒の湯で茹でられた麺を食べたくない。

こりゃもうこいつが列から出ないとなると俺が出るしかないじゃない。だってしょうがないじゃない。和田さんもビックリだよ。驚嘆だよ。唖然だよ。寂寞しかないよ。

モテやさ男が、こんな、体臭がにんにくそのものに、なるような、店に、くるんじゃ、ね。


「さっき彼女にフラれたんだよね。」


五月の風は思いのほか優しくて、ざまあみろという気持ちにはなれなかった。

それは綺麗に整っていた彼の髪が少し乱れたせいもあるけれど、それ以上に俺の固く閉ざした引き出しの中の一張羅を引っ張り出されるような感覚に襲われたからだ。


誰だって自暴自棄になって、自分に暴力的になることはある。

先輩に怒られたり、やるべき事がうまくいかなかったり、思い通りにならないことがあったり、誰かに気分を害されたりする。

そんな時、すべての感情を腹の中にぐっと押し込むために、こうやって暴力的なラーメンを食べるのかもしれない。

実際、俺にとってはそういう儀式的な要素がある。今日だって、締め切り間近でどうしようもなくなって気晴らしに来ているのだ。世の中の不条理をただ黙ってぐっと腹の中に収める儀礼。食べるという所作は何かを取り込むことで活力を得るという行為そのものだ。医食同源という言葉もある。

その根源的な活動を虚飾で誤魔化したりするのは許せないことだ。食材となってくれた命への敬意が軽んじられるから、人が死んでしまうようなずさんな管理体制になってしまうのだ。

世の中は何も変わらないけれど、店主の真摯さをぐっと胃の中へ流し込んで、また自分の人生を歩き出す。そうやって生きてきた。んだと思う。たぶん。自信はないけど。

こヤツの背中は俺の背中そのものかもしれない。そんな風に感じられてしまった。一度そう思ってしまったらもう何も思うことはない。ただ、列が店の中へ消えていく様をじっと待つのみだ。あとどれくらいで店に入れるのだろうか。

ああ、店主よ、この凍える者たちに暖かさを与えたまえ。


「・・・なんだよね。でさ、今度いつ合コンできる?」

お前は帰れ!

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えー、読者がいるのかどうか定かではないですが、自分の中で面白くなってきているのでとりあえず今日も書けました。明日書けるかはわかりかねますけれども。

しかしながら、ラーメンに辿りつくまであと何日必要なんだかわかりません。

この「待つ」という行為自体が苦痛であるが故に生み出すイマジナリーの数々がカタチになっているという事実が待つという行為を昇華させられているんではないかと思うわけです。まあたった今の思いつきで適当ですけど。

ちなみに推敲せず、思いつくまま書いてますんで、完結した暁にはまた1から加筆修正をして推敲しようと思っています。いわばこれは原案というか、思いつきをそのまま出しているわけで、パンでいうところの生地であったり、ラーメンでいうところの仕込みであったりする部分です。なので、完成したらアメンバー限定で完成版を披露したいと考えていますので、どしどし登録お願いします。とか自分にプレッシャーをかけてみる。サボり癖がありますゆえに。どうぞ、発破をかけていただけますよう。

長い。


列が長い。


ラーメンを食べるのに、なぜ人は並ぶのだろう。


恐らく、これは社会の縮図である。欲しいものがあればすべてを投げ出して、全身全霊をもって捧げる。己を信じられないものが理想を卑下し、空を見上げることさえ忘れてしまう。だがしかし、この現状ではそんな考え自体は横に置かれる。本能の赴くままに並んでしまっているのだ。目的の為に手段を選ばないというが、手段そのものが目的に直結し、かつ、保障がされているのだから、こりゃ従わない手はない。努力が目に見える形で結果と結びつく。食欲に翻弄されているように思うが、自己を律しているとも言える。ビルゲイツなら食べたいラーメン屋を札束でものにしたりできるわけで、そういう特殊な人間以外は列を待つのがおしなべて目的を達成するための手段なのだ。もっとも、ビルゲイツがフィレオフィッシュが好きでモーニングメニューになかった際「朝からフィレオを食べるために買収でもするか!」といったジョークとこの話はいささか関係ない。


もっと三大欲求に訴えかける教育があればきっと子ども達も教育に対して真摯になろうというものだ。そんな事を頭の隅でちらちら考えながら、もっぱら気にしているのは店から出てくる客の、してやったぞ、という表情と、牛歩の中のキング的な列の進み具合と、昨夜からずっと暗誦している店内コールだ。

ここで店内コールについて説明する。

店内コールとは、店内において自分が望むトッピングを店主に伝えること。基本発声はマシと呼ばれるもの。マシという呪文によって己のラーメンはより一層己が思い描く理想の一杯へと近づく。そのマシ、増やせるものは、ニンニク、ヤサイ、アブラ、カラメの四つが基本となる。ニンニクはそのままにんにく、ヤサイは主にもやしやキャベツ、アブラは背アブラ、カラメはしょう油タレだ。(スペースの関係上、詳しくは知り合いのラーメン好きへどうぞ)

マシはマシマシまで対応してくれたりするのだが、それは店主に依存する。できるところとできないところがある。今回はできる店だ。できるという事はその分こちらも細心の注意を払ってオーダーするのがこちらの礼儀でもある。


さて、あと何人ぐらいで入店できるのかという気持ちと、店内ではどういう風に振舞えばいいのだろうという気持ちが並列してぐるぐるしている。この店に来るのは初めてなのだ。インターネットにて食指が動き、いろいろと調べた。開店にともなうエピソードや、店内でのマナー、果ては系列店がどのような意味をもって分散配置されているのかという仮説を立てたほどだ。食欲から知的探究心を掻き立てられる。やはりこういうものを教育に取り入れていくのがこれからの日本を支える柱となる人物を育てるに必要な項目だと思索する。そんな気持ちも腹が減っていては苛立ちが入り混じってしまい、煩悶とし、ただ呆然と目の前に広がる様々な形の頭を数えてみたりしてしまう。人々はおしなべて腹をすかせているようで、せわしなく肩を揺らせている。けだし自分もその一人であろうと考えるに、怖くて後ろは振り返られない。前の人々も同じ心情なのかもしれない。面持ちこそ見えずとも、みな控え室でウォーミングアップをはかる格闘家のように、そのリングインを今か今かと待っているのかもしれない。テーマ曲はいつ鳴るのか。そして戦いの鐘はいつ。各々が異様な圧力を放つ。静かな行列はひっそりと熱を帯びているのかもしれない。





つづく

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ラーメンがまだ出てきてません。明日も出るかわかりません。この殺伐とした感じが好きなので。

明日以降も頑張ります。よろしくお願いします。

ガラスの靴が小さくて、そっと爪を噛んでいたシンデレラ。

おとぎ話の世界では誰もが幸せになれるんだろう。

鏡の中の自分に、嘘をつかれ泣いてたシンデレラ。

所詮現実はどうなんだい、愛想笑い繰り返していくんだろう。

想定内の魔法使いに躊躇なんか少しもするもんか。

辛酸を舐めて待っていたんだ、しがみついてでも掴んでやる。


毒林檎が苦くて、一口で吐き出した白雪姫。

辛く苦しいことの後には誰もが幸せになれるんだろう。

注文の多い小人に、辟易していた白雪姫。

お話の画面外じゃ罵倒され、主役であることを忘れそう。

想定内の王子様に躊躇なんか少しもするもんか。

描かれないページの日々だって、奥歯を噛みしめ踏ん張った。


誰もが主役になりたくて。

主役になれない奴がいる。

「主役になんかなりたくない。」

そう思うまで傷つける。


革命的な救世主に気付かないままのジャンヌダルク。

自分の信じた道を進めば誰もが幸せになれるんだろう。

炎に焼かれるまで旗を持ち続けてたジャンヌダルク。

用が済んだらサヨナラされる、今も昔も同じこと。

想定内の天使の声に躊躇なんか少しもするもんか。

死人に口なし、偽物が現れても名誉は傷つけられたくない。


椅子とりゲームのように。

誰かの席を奪っている。

「そこは私の場所だって。」

気が狂うまで喚いている。

陽の当たらない窓辺にいた。


朝も昼もなく、ずっと陽が当たらなかった。


めだかの水槽は白く濁っていた。


廊下では笑い声が聞こえてきているが、それはきっとカセットテープによるものだ。


教壇のしおれた花の名前を僕は知らない。


ただ一人でいる。


だから。


言葉は必要ない。


誰かの影がカーテンに揺れる。


それは夏の日の残滓。


陽は当たらないのだ。


陽炎の揺らめき。


天井も壁もその境界を失い、空間という意義を崩壊させている。


血に染まれば、めだかは蘭鋳になるだろうか。


めだかは夢を見ているのか。溺れているのか。


白く濁った、太く鈍った、泡弾けた。




ここはぼくの世界。


誰もいない世界。


ぼくが望む。


だから世界が存在する。


ならば。


彼女の。


彼女のリコーダー。


今一番ほしいもの。


彼女のリコーダー。


ペロペロリコーダーをペロペロする為だけのペロペロ世界を。


リコーダーを。


ああ、リコーダーを。


ペロペロしたい。


ペロペロペロリンしたい。


リコーダーは吹かなければ音がしない。


しかし、漏れた吐息は唄口を抜ける。


静寂を打ち破り。



禁断の扉を開く。


太陽が目覚める。


幾筋もの光が地面を突き刺す。


とめどない涙。


四季が急速に彩を増す。


音速340メートルでリコーダーが世界を駆け巡る。


突き崩す。


構築される。


もしペロペロが言語ならばバベルは天に届いただろう。


石の代わりに煉瓦を。


漆喰の代わりにアスファルトを。


武器の代わりにリコーダーを。


世界が一つになる。


ぼくは空を飛ぶ。


それが夢なのか現実なのかはわからない。


ただリコーダーを手にしたままぼくは空高く舞い上がる。


太陽がぼくを焦がす。


陽の当たらない場所にいたぼくにはあまりに眩しすぎた。


蝋の翼は太陽に焼かれる。


墜落の刹那までぼくはリコーダーをペロペロし続けるだろう。


この世界が壊れても。


リコーダーが幻だとしても。


ペロペロすることだけが唯一の救いなのだから。

世界で一番高いものが観覧車だった頃


世界はこんなに広くなかった


僕が好きな本を読んでるとき


世界は止まったままだった


あの日芽生えた疑問は


今の世界と酷似している

水玉模様のパーカーを羽織って彼女はいつもの喫茶店で待っていた。


少し遅れた僕のことをじっと見つめると「今日もゴチです。」とそっぽを向く。大きく時間が遅れたときは遅れた方のおごりになる。今日も、と彼女が言った。そう、今日もなのだ。


アッサムのミルクティーと生クリームたっぷりのロールケーキが彼女の前に置かれ、僕はそれを見ながらコーヒーを飲む。そんな何気ない風景の中に小さな幸せを感じていた。


「四月が少し遅れているみたい。」


「生理が遅れているみたい。」そんな口調で彼女はミルクティーをスプーンでかき回す。小さな渦の中心は宇宙みたいで求心力が僕の意識を吸い込んでいく。

まだ寒いこの街で僕らはくだらない話をしながら雑多な足音とオシャレなBGMに包まれている。本当に何気ない幸せの理想型。その中心はミルクティーなのかもしれないし、そうじゃないかもしれない。


それでね、と彼女はバッグから旅行パンフレットを数冊取り出した。行き先は主に国内のものが多い。僕はなるべくなら温泉街がいいと思う。腰痛が最近ひどいからだ。彼女はそんな僕をおっさん呼ばわりして笑う。彼女からしてみれば、おっさんに違いはない。実は今日遅れてきた原因も腰痛がひどくてうまく立ち上がれなかったからだ。ゆっくりとうつ伏せに移行し、四つんばいの状況へ持っていければなんとか立ち上がれる。そこまでいけない場合はひたすら腰を中心に捻ってごまかすしかない。とにかくゆっくりとした所作でなければ、救急車も視野に入れなければならなくなる。


車のバッテリーも寒気においてはそのスペックをフルにいかしきれない。アイドリングで暖めてから走らなければ、磨耗してエンジンがかかりづらくなってしまい、やがてオシャカになる。僕の腰だって似たようなもので、やがてはオシャカになるだろうけど、バッテリーみたいに一万円で取り替えることは出来ない。だからごまかす為には色々試してみるほかない。


彼女は取り込んだケーキと同じぐらいの甘い声でパンフレットを僕に見せてくる。横浜、兵庫、福岡、沖縄。次々と畳み掛ける様はこれからの僕らの力関係を暗示しているかのようだったけど、僕はそれでいいと思った。これだけパワフルな部分があれば僕が先にダメになってしまっても大丈夫だろう。僕は笑って箱根、湯布院、登別のパンフレットとすりかえる。容赦ない蹴りが見えない所で炸裂した。


旅行の日取りはゴールデンウィークだ。四月に入って早々で気が早いかもしれないと思われるが、予約するには早い方が特典なんかもあっていい。それに直前になって焦るのは二人とも好きじゃない。彼女はA型で僕はO型で、相性は比較的よくて、なんでもまとめてくれるから楽だ。ちなみに僕はそれほど血液型相性診断なんてものを信じていなかったけど、彼女と付き合うようになってから信じるようになった。


「お待たせ。」


四月がやってきた。


「遅いよ四月。」彼女は四月のみぞおちに思いっきり力を込めたパンチを繰り出す。

「いや、ごめんごめん。道にテナガエビが落ちててさ、うっかり踏んじゃったんだよ。そしたらそのテナガエビの所有者にあたるおっさんがエライ剣幕で怒鳴ってきてさ。そのおっさんもうっかり踏んじゃった。」と、はにかむ四月。四月は体長20メートルほどである。ちなみに彼女が先ほどみぞおちにパンチを繰り出すために、四月の膝からするすると彼のジャケットのポケットまで登ったのは言うまでもない。

「おい四月、あんまり人様の迷惑になるようなことするんじゃないぞ。ただでさえ大きくて目立ってるんだから。すぐに騒ぎになる。」僕は四月の頭をこつんと叩いた。ちなみに、僕が四月の頭を叩くために四月の膝から背中を通り肩口のあたりで足を滑らせそうになりながらも首に足をロックして叩いたのは説明する必要がある。だって足を滑らせたとき物凄く怖かったから。

「痛っ。わかってるって。もう心配性なんだから。」


「アッハッハッハ。」


それで例の計画なんだけど、と四月がすっと僕らの間に割って入った。僕と彼女の目が仕事仕様に変わる。これは国家機密の一つで重要であり重大な作戦なのだ。

「まずこの桜前線がこのあたりで停滞している。現状、こちらの指示待ちだが、いつ梅雨前線とドンパチしはじめるかわかったものじゃない。それに最前線はすでに北上を開始し始めた。現在は中国地方まで差し迫っているという報告がある。問題は後任の五月へとどうやって異常なく引き継げるかということだ。歴代の四月はつつがなく任務を遂行したが、近年は環境破壊、地球温暖化、さらには地球外未確認飛行物体によるアタックも何件か確認されている。これは私四月だけの問題ではなく、四季の同志、そして地球そのものとの提携が必要となる。そしてこの読者にも。」

「おい、メタ発言はやめておけ。ややこしくなるだけだ。」僕は四月の言葉を遮った。

「わかった。それはさておき、君たちの具体的な戦略についてはこの『春風作戦』という冊子の中に記載されている通りだ。例年にも増して今年は不安材料が山積みだ。」僕と彼女はざっと冊子に目を通す。

「一ついいだろうか、このドミノ甲子園春の陣は非常に厄介じゃないのか。この時期にまさか屋外までコースが延びているじゃないか。」僕は四月中旬、ドミノ甲子園春の陣関東大会の部分を指差した。「ああ、上層部も屋内で何とかして欲しいと要請しているらしいのだが、如何せん相手はマスメディア。桜散る中で学生達が抱き合う姿を撮りたいとの一点張りで話し合いは平行状態らしい。」中腰の姿勢を保ったままドミノを並べる学生。その姿を思い浮かべるだけで僕の腰は鈍く痛んだように思えた。「もうしばらく時間をくれ。もしかしたら低気圧を利用して断続的な雨を使えるかもしれない。そうすれば屋内を使わざるを得なくなるだろう。」

だといいがな、と僕はページを繰る。

「この屋外レジャー施設でのアイドル総選挙ってあるけれど、これどうして屋外なの。」と彼女が指差す。参考資料の女性アイドルはテレビで僕も見たことがある。

「ああ、どうやら観客収容人数がドームでもおさまらないらしい。主催者に言わせると、昨今様々なロックフェスティバルが流行していることに目をつけ、国内のアイドルを一堂に会して選挙してしまおうという魂胆だ。」

「そもそも、ロックフェスティバルは夏の乱痴気騒ぎに乗じるイベントじゃない。こんな春先に開催したら、たくさんのお客さんが風邪を引いてしまうわ。」

「かもな。」四月は声を低くした。「でもな、俺にはわかるんだ。ファンの気持ちが。常に偶像だと知りつつも応援している。それがファン心理なんだよ。現実が困難だからこそ、虚像に陶酔する。だからどんな困難が現実にあっても彼らは屈しない。それが、ヲタなんだ。」ふうんと鼻を鳴らして彼女は黙った。納得したのか呆れたのかはわからないが、再びミルクティーをかき混ぜている。

「他に何もなければ、以上で終わりにする。」僕と彼女は黙ってうなずいた。


きっと彼女は考え込んでいたんだろう。現実と虚像の境目はどこなんだろうって。こんな風に文章の中の自分に人格を与えられたのは虚像の世界だからだ。現実にはただの文字の羅列に過ぎない。読者に対してどんな作用を与えているかと言えば活字に対する希求力と、くだらない時間を過ごしているなと思う自嘲作用と、作者が何を考えているのだろうという探究心だろう。それ以上でもそれ以下でもない。

そして今この世界が虚像だとすれば、自分は誰の手のひらの上で踊らされているんだろうか。

人間をメタ視点で見るならば、きっと履歴書に集約された内容にすぎないのかもしれない。だからもっと深く誰かや何かと付き合いたいと思うし、自分だけは知っているというアピールを相手にするのだろう。その逆もそうだけれど。

だから僕の作戦は国家からの重要なものであったとしても、国家の人間は誰一人知らない。


「まるで履歴書しか見ないあんたらと、履歴書しかない僕らみたいな関係だ。」

彼女が言ったのか僕が言ったのかよくわからなかったが、その言葉は喫茶店の中で響いた。


「まあそう深く考えるなよ。人生は案外長いんだぜ。」四月は颯爽と去った。


まるで春風のように。