気になっている。
先ほどから、先刻から、一寸前から。
何がと言えば、前に並んでるやつの整髪料である。なんじゃこりゃ。なんでラーメン食うのに整髪料つけてるのけ?モテたいならこんなとこで男汁だしまくりなラーメンを食らおうとするなよ。何だよ。お前みたいなのがにんにくを増すこともなく、むしろにんにく抜きで注文するような弱輩なんではないのけ?けけけ?
俺はな、このラーメンを食べるために涙がちょちょ切れるほどの犠牲をしいてきたんだ。医者にメタボと診断され、女からは見向きもされず、店主のにんにく入れますかに瞬時に対応できる洞察力と瞬発力を養うためバッティングセンターに通い、ACのCMを何度も見てはどのキャラが一番ユルイのか比較検討してみたり、黒ウーロン茶を片時も離さず、家を出る前ににんにく対策に牛乳を飲んでみたり、そのせいでお腹がユルクなったり。このユルは前のキャラがユルいとかかっていることに注目していただきたいわけで。
それほどまでに色々と考えてきたわけで、女にモテたいなんてことは一度も思ってみたりなんかすることもなく、むしろ寄ってきた女はすべからく追い返してきたわけで、そんなお前みたいなツンツンとした髪型にしてみたいとなんかこれっぽっちも毛の先ほども足の小指の爪先ほども考えたことなんかないんだからねっ!
前に並んでいるヤツ、以降面倒なので「ヤツ」とだけ表記することにするが、そヤツは先ほどから携帯をずっと弄繰り回している。漢字変換にしてみるとこうなったが、ひらがなにすると、いじくりまわしているのである。なんやアンタ、やっぱりコレか。コレにメールでも挿入してやろうという腹積もりかこの野郎。己の腹には大豚をぶっこんで、己のコレにはアレをぶっこむつもりか。ふざけんな。コノヤロウ。マジでふざけんじゃねえよ。mjfzknzny。
こっちはなあ、身も心も財布も寒い中、こうやって唯一の希望として、暖かさを感じるために、ここに並んでいるんだよ。お前みたいな、狭い了見でのうのうと人生を楽しんでいるメリーゴーランド人生野郎は同じところをぐるぐるぐるぐるずっと回っていればいいんだよ。ここのラーメンを食う権利はなし!よって今すぐこの列から立ち去られい!と念じてみる。宝くじの3等が当たらないかなという気持ちで念じてみる。
「もし。あ、俺。実はさ、」んだよ、次は電話かよ。もう駄目だこりゃ。あたしゃもう駄目だ。限界だ。こんなヤツと同じ空気を吸いたくないし、こんなヤツと一緒の湯で茹でられた麺を食べたくない。
こりゃもうこいつが列から出ないとなると俺が出るしかないじゃない。だってしょうがないじゃない。和田さんもビックリだよ。驚嘆だよ。唖然だよ。寂寞しかないよ。
モテやさ男が、こんな、体臭がにんにくそのものに、なるような、店に、くるんじゃ、ね。
「さっき彼女にフラれたんだよね。」
五月の風は思いのほか優しくて、ざまあみろという気持ちにはなれなかった。
それは綺麗に整っていた彼の髪が少し乱れたせいもあるけれど、それ以上に俺の固く閉ざした引き出しの中の一張羅を引っ張り出されるような感覚に襲われたからだ。
誰だって自暴自棄になって、自分に暴力的になることはある。
先輩に怒られたり、やるべき事がうまくいかなかったり、思い通りにならないことがあったり、誰かに気分を害されたりする。
そんな時、すべての感情を腹の中にぐっと押し込むために、こうやって暴力的なラーメンを食べるのかもしれない。
実際、俺にとってはそういう儀式的な要素がある。今日だって、締め切り間近でどうしようもなくなって気晴らしに来ているのだ。世の中の不条理をただ黙ってぐっと腹の中に収める儀礼。食べるという所作は何かを取り込むことで活力を得るという行為そのものだ。医食同源という言葉もある。
その根源的な活動を虚飾で誤魔化したりするのは許せないことだ。食材となってくれた命への敬意が軽んじられるから、人が死んでしまうようなずさんな管理体制になってしまうのだ。
世の中は何も変わらないけれど、店主の真摯さをぐっと胃の中へ流し込んで、また自分の人生を歩き出す。そうやって生きてきた。んだと思う。たぶん。自信はないけど。
こヤツの背中は俺の背中そのものかもしれない。そんな風に感じられてしまった。一度そう思ってしまったらもう何も思うことはない。ただ、列が店の中へ消えていく様をじっと待つのみだ。あとどれくらいで店に入れるのだろうか。
ああ、店主よ、この凍える者たちに暖かさを与えたまえ。
「・・・なんだよね。でさ、今度いつ合コンできる?」
お前は帰れ!
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えー、読者がいるのかどうか定かではないですが、自分の中で面白くなってきているのでとりあえず今日も書けました。明日書けるかはわかりかねますけれども。
しかしながら、ラーメンに辿りつくまであと何日必要なんだかわかりません。
この「待つ」という行為自体が苦痛であるが故に生み出すイマジナリーの数々がカタチになっているという事実が待つという行為を昇華させられているんではないかと思うわけです。まあたった今の思いつきで適当ですけど。
ちなみに推敲せず、思いつくまま書いてますんで、完結した暁にはまた1から加筆修正をして推敲しようと思っています。いわばこれは原案というか、思いつきをそのまま出しているわけで、パンでいうところの生地であったり、ラーメンでいうところの仕込みであったりする部分です。なので、完成したらアメンバー限定で完成版を披露したいと考えていますので、どしどし登録お願いします。とか自分にプレッシャーをかけてみる。サボり癖がありますゆえに。どうぞ、発破をかけていただけますよう。



