昨日はサントリーホールで、チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団を鑑賞。曲目はブルックナー交響曲4番と、ベートーヴェン・ピアノ協奏曲3番。指揮者はパーヴォ・ヤルヴィ、ソリストは反田恭平。
ブルックナー4番を実演で聴くのが今回が3回目。1回目はエリアフ・インバルの指揮でしたが初稿の演奏と知らずにチケットをゲット。演奏自体は良かったですが、初稿故、不完全燃焼でした。2回目はヴェンツァーゴの演奏でした。これは通常の4番でしたが、ヴェンツァーゴは強音部で速度を速め、意図的に壮大さを削る演奏で、これはこれで面白かったですが、本来の、迫力のあるフィナーレなどは聴けず、これも不完全燃焼でした。
今回は3回目の正直で、非常に良い演奏で満足しました。
外国のオーケストラに関していえば、去年の後半からチェコフィル、年始のウクライナオペラと、割と、東欧の土臭いオーケストラの演奏ばかり聴いてきたのですが、昨日のチューリッヒ・トーンハレは泥臭さのない、品の良い響きで美しかったです。聴いていると、あんまり特徴のない音のような気がしますが、複数の楽器が混じりあい出すと、日本のオーケストラでは出ないような、まろやかで上品な響きとなります。チェロの響きの味わいとか、日本のオーケストラの持つインターナショナルな響きとは一線を画し、伝統に根差した美しい響きで、本場ものだという気がしました。
前半のベートーヴェンはピアニストが反田恭平氏で、自分は初めて聴きます。自分はコンクールとかに全く興味がなく、反田さんは名前とか顔は認識していましたが、演奏を聴くこと自体今回が初です。
どんな感じなんだろうと思っていましたが、構えの大きいグランドマナーな演奏という印象。結構面白いなと思いました。今回1回聴いただけなので、良く分かりませんが、クラウディオ・アラウとかルービンシュタインみたいな、ゆとりを持ったスタイルを目指しているように見えました。
結末まで時間をかけたピアノ協奏曲3番でした。まだ若いのであれですが、ああいったスタイルはもっと円熟してからが本番かなという感じを持っていますが、これはこれで名演かと思います。
後半はブルックナーの交響曲4番。
正直、現代のコンサートに出向いて、ブルックナーならそれこそギュンター・ヴァントのような完璧な名演を求めているのかといわれればそうではないし、あり得ないだろうとも思っています。ある程度の範囲内で、ブルックナーに限らずですが、満足できる演奏であればうれしいかなと思って聴いています。
今回のヤルヴィの演奏は個人的に充分満足いく出来栄えで、素晴らしかったと思います。原因の1つはオーケストラにあると思いました。どこかメカニックで、乾いた印象のある日本のオーケストラによるブルックナーが多い中、チューリッヒ・トーンハレは滑らかで美しい響きがあり、節回しも日本それとは異なります。
多分ヤルヴィなら日本のオーケストラでもほとんど同じような響きは出せるのでしょうが、音響の細部における、細かい節回しや、音のシルキーな繋がりなど、これは日本のオーケストラがどんなに頑張っても出せない、欧州の味わいだと思いました。
こういった日本では聴かないような響きの中、ヤルヴィは推進力のある、表情の良く出た解釈を披露、素晴らしかったです。音量も無駄に大きすぎず、バランス感覚に優れたヤルヴィらしい響きです。
個人的にはやはり第4楽章。1番スケールが大きい楽章ですが、インバルの時は第1稿、ヴェンツァーゴの時はスケール小さめで肩透かしを食らっていました。
今回は第1主題の咆哮から、濃厚な表情があり、最高でした。牧歌的な第2主題を経て、第1主題にも劣らぬ巨大さを持つ第3主題の、大きな音響が眼前に現れると、自分は心の中で「キター!」と叫んでいました。
やっぱりブルックナーはこうじゃないと駄目だなと思って聴き入った瞬間です。
展開部はこの楽章の導入楽句によって始まります。地平線に没する太陽の如く、第2主題が展開され、寂寥感と静けさが混じりあったのち、第1主題と第3主題が巨大な音響体として重ね合わされ、大自然の偉大さと神の造形への畏怖の念が、これ以上ないヒロイックな感情を伴って表現されていきます。まさに第4交響曲の白眉ですが、ここもちゃんと出ていました。最高やな~と思います。
やはりヨーロッパのオーケストラは違うな、と思いました。非常に満足しました。
終演後、隣に座っていた夫婦は「ブルックナーは分からん」といっていましたが、もうちょっと勉強してから来いよ、とさすがに思います。ブルックナーを聴きに行くと良くあるんですよね、「分からなかった」という声。インバルの時は2人組の若い女子が「繰り返しが多すぎる」とかのたまっておられました。聞こえてるんですよ。
人は自由なので別に構わないですが、それにしても、もうちょっと予習してこないか?と思います。今回なんか、それなりの値段がするチケットだし、ああゆう御仁は理解できないですね。
別にブルックナーの音楽が分からなくても何も問題ないと思いますが、楽しみで来ている人も身にもなってよとは思います。文句はあっていいけど、ホール出てからにしてくれないですかね。
というブルヲタの苦言を呈して今回は終わりにします。


