オーストリアのモーツァルト |  ヒマジンノ国

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ヨーゼフ・クリップスの演奏する、モーツアルト交響曲集(1971-1973)。交響曲21番から41番まで。
 
6599 702-6599 709。フィリップスのLP。
 
 
ウィーン生まれで、生粋のエレガントなスタイルを持った名指揮者、ヨーゼフ・クリップス(1902-1974)による演奏で、モーツアルトの主要交響曲を集めたボックスセットです。オーケストラは旧アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団(現、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団)。
 
 
21番から順に41番まで収められています(37番は欠番なので無し)。内容の充実度からいえば、カール・ベームがDGに入れた全集と充分に比較しうるレベルにあると断言できます。
 
ベームの演奏もドイツの伝統を感じさせるものでしたが、クリップスも同様にオーストリアの伝統を引き継いだ演奏です。
 
クリップスの演奏はやや遅めのテンポで、曲の立体的な構築性を重要視し、思いのほか立派な演奏に仕上げていきます。安定したその構築性を生かした上で、格段のモーツアルトの美しいフレーズを魅力的に歌わせていきます。構造性はしっかりしていますが、各楽器の歌わせ方などは柔らかく、芯があります。おかげで淡く煌めくメローディーが、しっとりと重なっていく様子が手に取るように分かるのが、素晴らしいです。
 
この歌わせ方、メロディーの角をとって、おっとりした雰囲気を醸し出すやり方が、ウィーン風の香りをふりまいていきます。加えて、丁度良い程度の残響が、音楽の壮麗さを際立たせ、オランダのコンセルトヘボウから、ウィーンの貴族のような感触を引き出すことに成功しているわけです。聴き手はこの美しい雰囲気に、身を浸す喜びを感じることができます。
 
モーツアルトの、完全に蒸留された喜びというは、中々他の作曲家からは聴けぬ、特別なものがあります。
 
後期ロマン派のマーラーやブルックナーの作品は別として、本来交響曲は人間感情を司るものであったと思います。ベートーヴェンの第5交響曲からは人間の克己心を読み取ることができるし、ブラームスの第4交響曲からは万感の諦念を感じ取ることができます。
 
しかしこのモーツアルトの音楽ほど、「生の喜び」を表現した音楽は少ないように思います。特に交響曲38番「プラハ」に煌めく感情は、まさに「喜び」そのものを表していて、これと同じものを他の作曲家から聴くことは難しいと思います。ハイドンやベートーヴェンにも似たような音楽はありますが、ハイドンは素朴、ベートーヴェンはどこか理屈っぽいので、モーツアルトの描く「喜び」は、理屈抜きに、人間が生まれた時から持つ、「歓喜の情」そのもの、といえるのではないでしょうか。
 
 
 
↑、モーツアルトの交響曲27番。20分程度の曲で、中期の交響曲の中では平均的なスケールでしょうか。有名な29番、25番の陰に隠れた存在です。しかしこうやって聴くと、名曲だと思います。
 
自分が他に所有している27番の音源はベームとレヴァインだけですが、これはクリップスが1番素晴らしいと思います。溢れ出る「喜び」の感情が切迫した迫力で表現されていきます。他の曲の演奏が意外と遅いテンポでしたので、クリップスとしてもこれは意外です。こういうスタイルがモーツアルト演奏の1つの理想かと思います(旧スタイルとして)。
 
音楽の充実感と切迫感を持った表現です。このスタイルではやはりブルーノ・ワルターが素晴らしかったですが、ここでのクリップスの演奏はそれに迫る勢いです。ベームの演奏は立派ですが、ゆっくりしているのでやや魅力に欠き、レヴァインは颯爽としていますが充実度不足でしたので、クリップスは丁度それらの良いところをとったような感じです。
 
自分は名演と断定します。
 
 
ベルンハルト・パウムガルトナーによる「モーツアルトの夕べ」(1961)。
 
SLPM138695B。DGのLP。
 
 
モーツアルトに関する著作などがあり、その道の権威といわれたベルンハルト・パウムガルトナー(1887-1971)による「モーツアルト・マチネ」と呼ばれるコンサートの録音です。
 
彼もまた、オーストリア人でザルツブルグを中心に活躍しました。モーツアルトを演奏するためにカメラータ・アカデミカを設立、この録音でも登場しています。ここに収められているのは 交響曲第26番、30番、《牧人の王》よりアミンタのアリア、レチタティーヴォとアリア KV 294、ディヴェルティメント KV 136。アリアをリタ・シュトライヒが歌っています。
 
演奏は格調高く品が良いです。
 
 
↑、モーツアルトが16歳の時に書いたといわれる、ディヴェルティメントからです。瑞々しい華やかな感情が、爽やかに流れ出る名曲です。春にふさわしい曲ですね。しかし、この音楽の流麗さ・・・本当に16歳で書ける曲なんでしょうか(^^;。