エリザベート・シュワルツコップによる「4つの最後の歌」(1953)。伴奏はオットー・アッカーマンでフィルハーモニアとの演奏。
33CX1107。
モノラルで、38歳当時のエリザベート・シュワルツコップによる録音です。ジョージ・セルとの新盤(1965)よりも声が若々しく、硬直も少ないです。65年盤は伴奏がセルということもあってか、シュワルツコップもきっちりしすぎる気もしていた録音でした。
↑、ステレオ盤。1965年録音。LP。
モノラル盤ではシュワルツコップによる、優しさにあふれる、柔らかい歌が聴かれます。新盤と何という差でしょう。表面的な美しさというよりも、人間感情としての美しさです。
R・シュトラウスによる「4つの最後の歌」は、この作曲家による最晩年の作品で、ヘルマン・ヘッセによるものと、ヨーゼフ・フォン・アイヒェンドルフによる詩に、曲がつけられています。全部で名前の通り4曲あり、シュトラウスはこの曲を自分の死後に演奏するように命じて他界。この世への決別を、限りない、美しい陶酔的な歌で締めくくっています。
↑、「春」、「9月」、「眠りにつこうとして」、「夕映えの中に」の4曲で構成されています。「春」、「9月」、「眠りにつこうとして」はヘルマン・ヘッセの詩からです。これは「眠りにつこうとして」からの切り取りです。
「Und die Seele unbewacht
そして魂は なにものにも束縛されず
will in freien Flügen schweben,
自由に飛翔し 漂わんとする
um im Zauberkreis der Nacht
夜の神秘の円環の中で
tief und tausendfach zu leben.
深く 千変万化に生きるために」
深い安息が感じられる曲です。
↑、「夕映えの中に」の前奏です。アッカーマンの指揮にも力みが感じられません。歌に比べると管弦楽は少し弱めに入っているようです。
↑、「夕映えの中に」のみ、アイヒェンドルフの詩を使っています。「死」を甘容しようとするシュトラウスの歌。
元々好きな曲ではありますが、このアルバムを聴いてからこの曲が耳から離れなくなりました。演奏がうるさくなくて、理屈っぽさが皆無です。