再び、ビーチャム |  ヒマジンノ国

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WHOのコロナウィルス対応はひどいですね。もしかしたら日本国内はそんなに広がらないかもしれませんが、中国の様子を見る限り、限りなくパンデミックに近いように見えます。

 

疫病のことは、分からないことも多いので、一旦様子を見たいと思います。

 

 

サー・トーマス・ビーチャムによる、グリーグの「ペール・ギュント」(1957)。ASD258。

 

 

ビーチャム卿の演奏する「ペール・ギュント」の名演。一般に演奏されている「ペール・ギュント組曲」とは違う内容です。

 

本来の組曲よりも、もっと多彩で、ビーチャム独自の考えが反映されています。ビーチャム自身が創設したロイヤル・フィルを用いて、歌のソリストあり、合唱ありの楽しい演奏です。

 

彼が子供の時から好きだったという曲なだけに、思い入れが感じられて濃厚なメルヘンに仕上がっていると思います。立体的な音質も最高。

 

これを聴いているとストコフスキーを思い出しますね。「音楽の楽しみ」ということにおいて、ストコフスキーは聴衆に向けて、あるいはビーチャムは演奏することそのものにおいて、決して忘れていないんですね。

 

音楽は本来「楽しみ」なんだ、ということです。

 

 

ビーチャム・オペラ・カンパニーで演奏していた、ジョン・バルビローリ、他には指揮者では、エイドリアン・ボールトなど、ビーチャムを快く思わなかった人も多かったそうです。

 

イギリス楽壇を牛耳っていた、ともいわれるような人でしたから、あくどいこともしたんでしょう。お金の使い過ぎで破産もしたそうです。

 

「サー・トーマス・ビーチャムはエキセントリックで好事家という、イギリスの大ブルジョワの典型であった。三回結婚し、最後の妻は秘書をしていた女性であった。最初の妻と離婚する前から交際を始めて以来、三三年間にわたり恋人だったレディ・キュナードを含めると、四人の伴侶がいたことになる。」(「偉大なる指揮者たち」、クリスチャン・メルラン著、神奈川夏子訳)

 


(↑、モード・キュナード。ビーチャムの恋人だった婦人。音楽を愛好する女性だったようで、芸術家などを支援していたようです。1911年にビーチャムと知り合ってからは、彼の音楽活動の資金調達などをしていたといいます。)

 

ビーチャム卿の、そこにある音楽愛は本物です。とにかく興味深い人には間違いないですね。ペール・ギュントも、本来の組曲しか知らない人には一聴の価値ありかと思います。

 

しかし、ビーチャム卿、実際の人物を知らない後世の我々にしてみると、「あなたは最高だ」といいたくなります。

 

破産したとはいえ、後世に残るオーケストラの創設と、音源を作り出したということは、とても価値のあることです。ブルジョワが、お金を一体何に使うかということを考えさせられる事例でしょう。

 

国家の財政を傾かせたかもしれませんが、バイエルンのルードヴィヒ2世の作った、ノイシュヴァンシュタイン城が現在でも重要な観光地になっていることを思いだしました。

 

 

ビーチャムの演奏するベルリオーズ「幻想交響曲」(1959)。ASD399。

 

 

音は最高です。繊細で緻密なステレオ。みずみずしいビーチャムの指揮ぶりが明瞭にとらえられていますね。第1楽章の鈴が鳴るようなヴァイオリンの合奏、弾力のある低弦の音色など、涼しげでしゃっきりしています。

 

フィナーレも凝っていて、おどろおどろしい雰囲気を作り上げています。ペール・ギュント然りですが、物語の要素などがあり、想像力を働かせる音楽でのビーチャムの指揮ぶりは魅力ですね。何か仕掛けがあります。

 

 

最後に1枚。ヘンデルの「忠実なる羊飼い」(多分ビーチャムの編曲)とハイドンの交響曲93番の組み合わせ(1950)。ML54374。

 

 

SPの復刻かな。こちらのほうがビーチャム卿の素の資質が出ている演奏だと思います。ヘンデルの美しい曲と、明快なハイドンの曲のように、短いフレージングで、力む必要のない演奏のほうが、彼は曲の魅力を引き出しやすいようです。

 

オペラからの編曲でしょうか、ヘンデルの「忠実なる羊飼い」組曲なども涼しげでクリーミーな味わいがあり、ヘンデル特有の聖なる感じも合わさって、とても素晴らしいです