ピアノ・ライフ1 |  ヒマジンノ国

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ヴラド・ペルルミュテール録音集。14枚組。韓国ニンバス。

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初めて彼の演奏を聴いたとき、ピアノの音色が美しいと思いました。


録音の加減もあります。何故か妙に奥行きがあり、立体的に響くその音色は、色彩感豊かで、透明度も高いからなのですが・・・。


ヴラド・ペルルミュテール(1904-2002)はリトアニアのピアニストで、人は彼をラヴェル弾きといいます。実際生前のラヴェルに会った彼は作曲家本人からアドヴァイスをもらい、ラヴェルの楽譜に書かれた注釈を保存していたそうです。


若いころにパリに移住し、モシュコフスキーやコルトーに師事しました。僕には、そんなペルルミュテールの演奏はどこか、師の一人である、アルフレッド・コルトーを思わせるものがありました。特にショパン。



ここに聴くラヴェルの作品集(1973)は美しいですが、ミスタッチも多く、名演だとしても、やや傷がつくのかもしれません。技術的な問題を気にする人はダメかもと思います。


テンポをやや落とし、豊かな輝くような色彩感はまさにフランス印象派にふさわしい音です。スケールも大きく、ラヴェルの音楽を偉大な作品のごとく弾きあげます。「夜のガスパール」におけるスカルボは壮麗な迫力を出していきます。




かつてアルゲリッチは「夜のガスパール」を白熱するテンペラメントでもって、リアルな筆致で描き切りました(1974)。それはまるで、「夜のガスパール」の幻想の世界が、繊細で眼前に広がるドキュメンタリーの映像のようにさえ思わせるものです。


それに比べればペルルミュテールの演奏は、この作品の幻想をそのまま描いたように響き、華麗なピアノの音響世界を体験させてくれます。

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・・・このところ、自分の話で恐縮ですが、ピアノ音楽ばかり聴いています。アラン・ロンペッシュの本を読んでからですが・・・。色々問題のある本だとは思いますが、おかげで楽しみが増えたのは事実です。


しかし、アルゲリッチやポリーニのような、現代的、あるいは国際的な演奏家は普段の生活の中でもすぐに目につきますが、ローカル色の強い演奏家は探すのが大変です。その魅力を伝える人がほとんどいないからでしょうが、これは残念なことなのかもしれません。


確かに、国際的なスターの演奏が素晴らしいのは事実で、多分、これらだけを聴いていても人は十分満足しうるのでしょう。


現代の代表的なピアニストの雄、ポリーニのショパンを聴けば多くの人々がその演奏を、これこそ「現代人の求める完璧なショパン像」・・・と、思うのは必至のことですから。




マウリツォ・ポリーニ、ショパン・プレリュード集(1975)。グラモフォン。

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技術的な完璧さがあるから、詩情を排していまい、メカニックすぎる・・・かと思えば、そうでもない・・・。


完全な、音楽の記号の読み切りから引き出される、流麗なテクニックは、音楽の表面に温かみのある丸みを加え、それは淡いふくよかささえ感じさせます。その優しい柔和な表情は、まさにショパンそのものなのかもしれません。


ポリーニは連続する24曲をほとんど一息で弾き切ってしまい、この24曲が一編の音楽作品のように思わせます。各曲ごとの描き分けは的確で、極めて高い知性と技術の融合が、どういう効果を生むかを知らしめます。




それに比べると、ずっとローカルな印象のあるペルルミュテールのショパンはやや前時代的な演奏でしょうか。




何枚かこのボックスにはショパンが収められていますが、どの演奏もゆったりとしたテンポで、音楽に浸りきるかのような演奏です。ポリー二に比べると知性が劣るように聴こえるのは仕方ないところです。


しかし、彼には輝く音彩と、豊かな詩情とがあります。


しばしばみせる、連なった、甘いキャンディーがキラキラするような輝き。幻想が幻想として表現される喜び。演奏家の愛情が、満天の夜空のような、物思いにふけるショパンの心を映し出すのでした。





フランス・クリダ、リスト作品集。14枚組。デッカ。

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フランス・クリダ(1932-2012)もまた、国際派とはいいがたいピアニストなのかもしれません。


フランスのピアニストで、リストのスペシャリストであった彼女は「マダム・リスト」と呼ばれていたそうです。


ショパンとリストの二大流派からいえば、フランスは多くの場合、ショパンの流派に属するのだそうで、彼女自身もフランス楽派に属するということを述べています。しかし、彼女の得意とするのはリストの音楽であり、冴えるようなテクニック、信じられないような細かな指の動きが演奏からは感じられます。


早速、「巡礼の年」から聴きましょう。


華麗な表現が素晴らしく、明晰な表現です。ですが、決して音質はきつくなく、ペルルミュテールほではないにしても、音彩があり、しっとりとして豊かです。


そこには豊かな詩情があるのです。この辺り、彼女自身が自分を「フランス楽派」だといっている所以なのかもしれません。テクニックだけでなく、濁りのない、「ぺトラルカのソネット123番」の静かな詩情なども素晴らしいです。


他にも、リストのカラフルで鮮明な色彩感が人の感性をときめかします。


きめの細かいタッチ、あるいは華麗でゴージャスなテクニック、そして詩的な豊かさなどを一体にした彼女の演奏は、リストのピアノ作品の美しさを表現してあまりありません。