アン・マキャフリィのSF小説、「パーンの竜騎士」シリーズ。外伝を除けば、邦訳されてるのは全十冊。邦題は一巻から順に、「竜の戦士」、「竜の探査」、「白い竜」、「竜の歌」、「竜の歌い手」、「竜の太鼓」、「竜の反逆者」、「竜の挑戦」上下、「竜とイルカたち」、「竜と竪琴師」。一巻のみ邦訳は船戸牧子。他は小尾芙佐。ハヤカワ文庫。
_________________________
アメリカ生まれの女流作家、アン・マキャフリィによるSF長編小説、「パーンの竜騎士」シリーズ。1968年に第一巻が出版されてから、実に40年もの長きにわたって書き続けられた人気作。
それは遠い未来、人類が入植したルクバト星系第三惑星パーンで起こる壮大な物語。・・・惑星パーンを定期的にめぐる衛星、赤ノ星。しかしかの星は恐ろしい厄災を人類にもたらす「糸胞」とよばれる未知の存在を、空から降らせていた。糸胞は地上に到達すると、有機生物を食い荒らし、地上を荒廃させてしまうのだ。入植者達は危機に追い込まれてゆく。
しかし最早惑星パーンを離れるわけにも行かない人類はその糸胞を焼き払うべく、ある特殊な生物を人工的に作り出す。それこそが天かける爬虫類型の生物だった。人類は空飛び炎を吐く竜を自分達で操り、その危機に立ち向かっていく。
_________________________
_________________________
読む前は、タイトルからファンタジー小説かと思って手に取った思い出がある。しかし一応この作品はSF小説という体裁になっている。読み始めの頃はファンタジー小説にありがちな、「竜騎士」が出てくるということもあり、SFだということに抵抗があった。しかし、作家的には内容的にSFであれファンタジーであれ、どうでも良いということなのだろう。SFならやはり精密な機械やロボットなんかが、もっと出てきてもいいと思うものだが、この作品はそういったものはあまり出てこない。精密機械は出てこなくもないのだが、基本は美しい自然とヨーロッパ中世を思わせる世界観が中心で、内容的にはほとんどファンタジーだと思う。
物語も単純で、娯楽的要素が強い。楽しみで読むべき長編作品だ。
いくつか印象的な場面があった。「竜の挑戦」で描かれる、巨大な宇宙空間に浮かぶ赤ノ星が竜騎士達に間近に迫った瞬間の壮大さ、あるいはアダルト版の「竜の反逆者」とジュブナイル版の「竜の歌」、「竜の歌い手」、「竜の太鼓」を経由した後の、反逆者セラとの戦い。このセラとの戦いにいたる過程は、同じ場面が別角度で描かれた、小説版対位法ともいえる印象的なシーンだ。・・・それでもやはり一巻の「竜の戦士」がスタンダードな内容で、この作品のことがよく分かる名作だろう。
アン・マキャフリィは2011年11月に85歳で亡くなった。40年にもわたって同じ作品を書くというのはどういう気持ちなのだろう・・・?この作品は女流作家らしい愛情に溢れた場面が多く、読みながらその愛情を強く感じたものだ。ただその分、戦記のような戦いがメインの内容を望むと、やや肩透かしを食うかもしれない。
個人的に一番好きなのは「竜とイルカたち」だ。南国風の陽気で楽しい世界に竜やイルカという子供達が喜びそうなキャラクターが出てきて、印象に残った。
ただこのシリーズ、現在ほとんど絶版になっており、古本でしか入手できないのが心残りである。


