ハイペリオン |  ヒマジンノ国

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長谷磨憲くんち


ダン・シモンズの「ハイペリオン」シリーズ。


上梓された順序は「ハイペリオン」、「ハイペリオンの没落」、「エンディミオン」、「エンディミオンの覚醒」となっている。さらに日本の文庫版は各巻が上下巻に分かれており、日本語訳は酒井昭伸。出版はハヤカワ文庫。

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たくましい想像力で描かれた、アメリカの作家、ダン・シモンズによる長編SF小説。とても長く、全編を通すと四千ページほど読まねばならない。しかしその内容は非常に面白く、常人の想像力をはるかに超えた内容で、驚きの連続になることはうけあいだ。


銀河系に進出した28世紀の人類におこる、想像もできない新たな物語。物語のはじめである「ハイペリオン」で語られるのは、完全にオムニバスではないが、ややオムニバス風に登場する七人のキャラクター達の物語。それらは惑星ハイペリオンにおける「時間の墓標」をめぐる物語ばかりなのだが、読み始めたときにはその真実は決して分からない。


従来のSFにも過去のみならず、未来が物語のテーマになる作品はあった。しかしこの物語ほど綿密に過去と未来が交錯する作品はなかっただろう。


物語の過去ではなく未来が、各登場人物の動機付けになるというアイデアが、単にアイデア的な発想だけに終わるということがない、というのは特筆されるべきだろう。まさに未来がこの物語の重要な一部をなしている。


また、この物語はそういった構成上のアイデアばかりではなく、人間の愛情を描くことにも心血を注いでおり、深い感動に誘ってくれる。「ハイペリオン」における、父親ソルと若きレイチェルの物語は切なく、人間の愛情の根源を見るようだ。物語の第二部というべき、「エンディミオン」から登場する、アイネイアーとロールの関係は是非この物語を最後まで読んで確かめる価値があるだろう。

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しかし、SFという作品のジャンルは難しく、必ず何かしらの欠点はある。その一例として、この作品の後半に描かれる「人類の形」が果してどれぐらい読者に受け入れられるかは疑問符がつくと思う。そういう点を考えれば、やはりこうした物語は夢物語でしかないだろう。だが、作者はそうした自由な創作を逆に利用して、人間の愛情の本質に迫ろうとしていることは確かで、そこには深い感動がある。


今回この作品を読んでいて思い出したのは手塚治虫の漫画、「火の鳥」だ。未来と過去を往復し、そこに人間の愛を描こうとする様子、あるいは、無限とも思える深い想像力は「火の鳥」とこの「ハイペリオン」、両方の作品に共通するものだと思う。

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余談だが、神秘主義者達はこの世界にはこの世の全ての情報を記録している「アカシック・レコード」がある、といってきた。創造をする人間はそこにアクセスし作品のための情報やアイデアを得るのだと。


もし未来を覗き、その無限の可能性のある未来を正確に描き出せるなら、その膨大な情報を処理すべく、その人物には大変強力な想像力が必要となるだろう。それはおそらく「天才」という人物の仕事であると思う。実際、天才だったレオナルド・ダ・ヴィンチは戦車やヘリコプター、自転車がない時代にそれらのおそろしいほど正確なスケッチを残している。


未来を知る者は正確で壮大な想像力を働かせるものではなくてはならない。手塚治虫もダ・ヴィンチも、そしてこのダン・シモンズもそうした壮大な想像力の持ち主なのだろう。


そしてこの小説の中で、感動的なアイネイアーが人類に広げた虚空界こそは、その「アカシック・レコード」に違いないのである。