フランツ・カフカの「変身」。高橋義孝、訳。新潮文庫。
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学生時代、カフカの「変身」を読んだ時、妙な内容だと思った反面、こんな表現もあるんだ・・・という感慨に襲われた事がある。純文学とは言うけれど、ちょっとマンガっぽいなあ・・・という印象。
カフカの作品の解説には、第一次大戦後のドイツの抱えていた不安が、どうのこうの・・・とものしてあるものが多いが、彼の小説の内容を知ったとしても、学生時代の僕には中々そこまでは理解できなかった。
確かにナチズムが政権を獲得しよう、という不安定な時代のドイツで、チェコ系のユダヤ人であるフランツ・カフカにしてみれば、その後に訪れる「ユダヤ人の悲劇」を漠然と感じずにはいられなかったのかも知れないが・・・。
とにかく、彼の小説は心理的なエッセンスを抽出するために、現実的具体性をやや歪めて書いている。
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「変身」はカフカの代表作で、シュールでちょっと変わった話だ。
何やらホラー映画みたいな展開・・・?から伝わってくるのは、理不尽、不安、焦燥、諦め・・・と言った精神の不安定さと動揺。
日本人にはあまり考え付かない展開で、不安を表現しているにも関わらず、楽しくもある。
ここにある「変身」のように、単純に言葉ではなく、目に見えるような形で表現する方法は、日本的な小説とは違いヨーロッパ的だと思う。
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「将来に対するぼんやりとした不安」 と言って自殺したのは日本の文豪、芥川龍之介だが、同じ文豪だとしても、もしカフカが芥川龍之介と同じ精神状態だったなら、カフカは一体何度自殺しなければならないのか・・・?
とにかく、カフカの描く不安定な心はいつも曖昧で漠然としている。
フランツ・カフカ作「審判」。中野孝次、訳。新潮文庫。
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こちらは「変身」よりずっと長い小説だが、不合理や不安がつきまとう小説の内容は内容は、やはり「変身」と良く似ている。
何かとシステムや決め事が発達した現代、確かにそこには我々一人一人の個人が一人で努力しても越えられない壁がある。
それは本来、自分達のためシステムを作り出したはずの人間が、逆にシステムに支配されてしまう、と言う不条理を感じさせる。それが人間の本質を破壊してしまう組織やシステムから来るのなら、余計その不条理は大きい。
確かにそういった不安は「カフカ」ならずとも我々人間一般が感じるものなのだろう。
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カフカの描く原因の分からない不安・・・きっとそれは複雑化した現代社会に通じる精神の病なのだと思う。

